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10/05/15 ペリアン再入荷 、アール・ヌーヴォーの先駆けとなったウジェーヌ・グラッセの『LA PLANTE ORNEMENTALES』など今週は大漁です。

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『選襗(選択)・伝統・創造-日本芸術との接触』はシャルロット・ペリアンと坂倉準三の共著として、昭和16(1931)年に発行。日本政府の招聘により来日したペリアンが、日本で接した工芸・民芸に触発されての創造の成果を具体的に形にした、高島屋での展覧会にあわせ発行されたもの。

■先ずは大切なご案内を。来週は火曜日に「洋書会大市」が開催されるため、店の営業日は5月20日(木)と5月22日(土)の各日12時~20時とさせていただきます。19日(水)は店に出る予定でおりますが時間は未定。このため、この日のご来店には先ず、お電話で在席をご確認いただけますようお願い申し上げます。またしても、の不定営業で、ご不便をおかけいたしまして大変申し訳ございません。「国宝燕子花図屏風」の特別展示とあって、眼前の根津美術館はタぁ~イヘンなことになっておりますが、人あたりしちゃったよ、なんて方には息抜きに小店うってつけ - 何しろほんとに静かなのだけが取り柄でありまして。ご来店のほど、お願い申し上げます。また、先週も訂正いたしましたが、ジェオグラフィカさん3Fライブラリースペースを占拠しての小店商品展示販売は5月30日(日)まで会期延長と相成りまして、図々しくも依然、居座らせていただいております。こちらは会期中無休という(…深く頭を垂れて感謝)。そんなこんなでますますわけ分からない小店ではございますが、天候もようやく安定してまいりましたところで、表参道へ、目黒・インテリアストリートへと、お運びいただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
今週の新着品、1点目はこちら。シャルロット・ペリアン、坂倉準三共著、昭和16年・小山書店発行の『選襗(選択)・伝統・創造-日本芸術との接触』(初版)の再入荷です。布装帙にA4・25P解説冊子と未綴じのリーフ53点を収めた完揃いで、リーフと冊子には目立ったシミもなく、帙の表紙側四辺周囲の焼けを除けばコンディションは上々です。当書概要については、丁度1年前、「09/05/09」の新着品ご案内のページをご参照いただくとして、ひとつだけ加えておきますと、解説冊子の表2にあるペリアンの仏文識語署名は直筆ではなく印刷で、当書にはもれなくついてきます。時々「おおお。署名入りだしめしめ」と喜ばれる方がいらっしゃるようなので付言する次第であります。なんてことを云ってる自分が、実は以前、糠喜びしたことのある一人でして、これぞ真の老婆心。

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アール・ヌーヴォーの泰斗、ウジェーヌ・グラッセによる花をモチーフとした図案集『LA PLANTE ORNEMENTALES』。巻1・巻2の2冊で石版刷72図を所収。1896年、パリで発行。表紙周辺に多少の傷みとシミがあるものの、図版は非常によいコンディションが保たれている。

■今週も荷物は少ないんだろうなぁと至ってお気楽に出掛けた市場はしかし、予想をあっさり裏切るウブ口の出品あり。突然のことに前のめりで市場を右往左往することになった原因は、キモノの意匠工房に眠っていたと思われる戦前の図案関係資料のウブ口でした。なかでも「こっ、これだけはぁあ~」と思って入札して、何と下札で落札できたのがこちら『LA  PLANTE  ORNEMENTALES』、著者は「E. GRASSET」。市場が終わると「サトーさん、何か鮮度、落ちてますよ。」なんて指摘されてしまったヘロヘロ状態、大判で重量もなかなかとあって、同タイトルの2冊の内「2」の巻だけを持ち帰りました。書名と著者名、大よその年代のあたりをつけてケンサクしてみると… 1896年にパリで発行、全72図(巻2はPL 37から72まで)を石版刷で所収、2巻で揃い - と出ました。明日、店に落札品が届いたところで巻1とあわせて再度確認いたしますが、まず間違いないはずです。また、同じ著者名で似たようなタイトルの本が1979年に発行されているようですが、こちらは正真正銘の1896年発行の元版です。さて、この装飾図案集、画像でもお分かりいただける通り、植物をモチーフとしたアール・ヌーヴォーのデザイン図案集で、花の種類ごとに先ず写実的な図版が1P置かれた後、同じ花を意匠化した2Pが続く、という構成がとられています。すでにお気付きの方もいらっしゃると思いますが、著者の「E. GRASSET」は、アール・ヌーヴォー様式の先駆者であり、そのデザイン・パターンの基礎を築いたとされるウジェーヌ・グラッセ。スイスに生まれ、ドイツで建築を学び、パリで家具や宝飾などの工芸意匠、さらにポスター・デザインなどの分野でも活躍したグラッセは、日本美術への造詣も深かったとか。

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お菓子屋さんをめぐる紙モノたち。キューピーやウサギの図案は“ブカ焼き”なるものの焼形。ブカ焼きの実体はいまのところ不明。ワッフルはひたすら“滋養”を訴える食べ物だったらしい。松と梅が刷られているのは木版刷の上掛紙。

『日本美術からの影響もみられるグラッセの図案集が、今度は日本に輸入されてキモノに生かされる。人→モノ→人→モノと、時に大きくて・重くて・厚くて・ウザイ(!?)モノを媒介として切りなく続いていたはずの連関は、いま薄っぺらい板状様機器ひとつに収まるデータ - 実体を伴わない軽いもの - へと、悉くとって替わられようとしているというわけですな。つむじ曲がりな古本屋は、今後、重厚長大なもので溢れかえることになりそうな気がします。はっはっはっ。
締めくくりはちょっと気軽なもので。カステラ、人形焼き、ワッフルなどの焼き菓子や、打ち菓子の型、ヨーカン板などの商品図案を並べた大型チラシとお菓子屋さん要に販売されていた包装紙の見本(ここまで画像)に、やはりお菓子屋さん用の木版多色刷・上掛け紙、そして寿屋(=サントリー)PR誌『繁盛』の昭和13年発行・創刊号など、久しぶりの紙モノはお菓子屋さん関係となりました。今週はこの他にも戦前の洋書で石版刷やポショワールのデザイン図案集が約20冊と大量入荷、デザイン雑誌『form』1960年代初頭発行分が約20冊木版扇面図案15葉バーナード・ショー宛の野口米次郎直筆書簡付き英文『北斎 広重、『ディアギレフのバレエ・リュス』他展覧会図録10冊大正期の第1回から昭和初めまでの国勢調査記念絵葉書が木版やエンボス+写真コラージュの奇天烈デザインまで約50枚、などが明日入荷。但し、書籍やリーフについては落丁や切抜き書込など、チェックに多少時間がかかりますので、来週よりぼちぼち、確認ができたものから棚に入れます。また、洋書図案集から、毛色の変わったところを来週改めてご紹介させていただく予定です。あ。先週予告だけしていた安斎重男オリジナル・プリント「ジョン・ケージ」(限定15部・署名入、於・高輪美術館)はこちらをご覧下さいませ→☆

10/05/08 PDFの彼岸へ…? 木版刷千代紙の精華・いせ辰『千代紙百種』/ 戦前モダニズム期の優秀広告集『商業広告図案大集成』  

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大正11年・いせ辰発行『千代紙百種 鶴』は木版千代紙50図を所収。画像左上は「鈴木其一筆 牡丹」、右下は「谷文晁筆 月影」でともに見開きサイズで所収。

■貴重なはずの4連休をただもう無為に怠惰に過ごしてしまった日月堂です。日頃の非礼や、溜まりっ放しの雑務は、いつ片付くのでしょうか。やれやれ。話題のカケラもない私事はさておき、GW中、目黒・ジェオグラフィカさんをお訪ね下さったみなさま、本当に有難うございました。冗談でも何でもなく、店主の監視下を離れた心地よい空間は、雑誌や紙モノとじっくり向き合っていただくのに最適な環境となっているようです。ジェオグラフィカさんのアニヴァーサリー・フェアは5月9日(日)まで引き続き開催中、で、3Fのライブラリースペースの小店占拠もこの日まで。まだご覧になっていないみなさま、詳細はこちらをご参照の上、是非一度お訪ね下さいませ。よろしくお願いいたします。!!! 5/8情報訂正 : 3Fライブラリー・スペースの小店占拠について、ジェオグラフィカさんのご好意で急遽、なっなんと5月30日(日)まで続けさせていただくことになりました! まだまだごゆるりとご高覧いただけますので、まだの方はもとより、すでにお運びのみなさまにも再度のご訪問、何卒よろしくお願いいたします。
GW明けて7日の金曜日には、早速市場2ヶ所のハシゴ。脱力している場合ではございません。この内、五反田の方の落札結果は月曜日以降となりますので来週にして、今週店に入る新着品は神田の市場から。『千代紙百種 鶴』大正11年、廣瀬菊雄の編により伊勢辰商店が発行。“伊勢辰”ですでにお分かりの通り、江戸幕末創業の木版千代紙の老舗「いせ辰」さんが、千代紙50点を選りすぐって出版したもの。ちなみに編者としてクレジットされている廣瀬菊雄さんは、明治31年に辰五郎の名を襲名した「いせ辰」さん三代目ということが、ただいまケンサクにより判明いたしました。さて、お品物はと云いますと、38.5×26cmの経本仕立てで42頁。木版千代紙としては標準的な表紙同寸サイズを中心に、大きいものでは見開き(=倍サイズ)、小さいものですと1Pに3点を収めまして、大から小まで合わせて50図。もちろん全て木版手刷りという「いせ辰」さん精華でございます。「鈴木其一筆」とある「牡丹」の大胆な画面構成と繊細かつ鮮やかな色づかい、雪の結晶の柄を真紅の背景に置いてしまうセンスなど、おおお。ううむ。うわわぁ。と、見れば市場に居ることも忘れてただもう唸るばかり。ともかくも画像を一目ご覧いただければクダクダしい説明など不要というものでしょう。画像をクリックしていただきますとさらに大きなサイズで眺められるという仕掛け、あわせてご利用下さいませ。

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昭和11(1936)年、浩文社発行『商業広告図案大集成』より。上段左が絹装の上からプリントを施した本体表紙。上段右は新興写真による福助とマツダ(ランプ)の広告。下段左は資生堂のロゴと唐草から成る商標の集成。 下段右は章の扉毎に挿入されるカラーページ。

■ボロボロの函から出てきた表紙のデザイン - こんなものが戦前の日本の本の装丁にあったのか?!- に一目で「まいりました。」というのがお次。昭和11(1936)年、浩文社発行『商業広告図案大集成』(辻克己編、初版)。「AD」の文字をあしらった表紙のこのセンスは個人的にツボ。しかも。シブイ色使いながら光沢があるのは何故かと思ってよく見ると … これが絹布装で。この微妙な質感、デジタル画像でお伝しきれないのが非常に残念です。当書発行の同時代にさかんに発行されたデザイン・ソース本の類と混同されそうですが、こちらは実際に使われた広告図案、しかも分野別に各々代表的企業の代表的商品の広告ばかりを集めたもので、結果、当時の優秀広告デザイン集になりおおせたという一冊。ご参考まで、当書に複数頁を割いてその広告が採取された企業・商品名を拾えば - 資生堂、花王、御園、森永、明治、グリコ、カルピス、味の素、サントリー、赤玉ポートワイン、福助などなど。自動車、自転車、百貨店、インキ、万年筆、映画広告は各社入り乱れて採取、また、いまで云う突き出し広告を集めた「三十行と小広告」や、当時尖端の広告表現を集めた「広告写真と欧米広告集」の章も。恥ずかしながら当書で初めて知ったベルベット石鹸、レッキス(蜂ブドー)、トリスソース(瓶のデザインもすごい)、オラガビール(このネーミング、ラガーなのか「おらが」なのか…)のあたりも見落とせない広告多数。元来、欧米の借り物からスタートした広告表現ですが、この時代にはかなり高い完成度に達していたことが分かります。戦前のアヴァンギャルドにしてもモダニズムにしても、日本人というのは借りてきたものを実によく咀嚼・消化して見事に仕立て直したもんだといつも感心させられるわけですが、ここに採られたモダンな広告表現が、どれも単なる模倣や剽窃に留まらず立派に“完成”しているのも、“かつて”の日本人がもっていたデザインに対する潜在能力の高さ - 「いせ辰」さんの千代紙にも共通する -を物語るものではないでしょうか。尚、この本、収録にあたっては広告のサイズなど形態についてもあまり手を加えていないようで、表現だけでなく広告の形態・アイテムに関する資料と見ることもできそうです。
さて。木版の質感、絹装の美しい表紙、どちらもPDFに落としきることのできない“実体”です。“1冊100円のブックスキャン”なる世界とは所在を異にすべく、ますます細い道をゆこうというGW明けの小店、今週はこの他、安斎重男オリジナル・プリント「ジョン・ケージ」(限定15部・署名入、於・高輪美術館  画像は次回更新時にご紹介いたします)、『JAPAN INTERIOR DESIGN』20冊戦前デザイン・ソース書籍3冊なども入荷いたします。来週からはHPの在庫目録にも新たにデータを追加していく予定です。併せてご高覧のほど、お願いいたします。

10/05/01 GWにも市場あり。新着品はムルロー工房の石版と非水の孔版と

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別にニューヨーク版が存在する『THE ORIGINAL POSTERS OF BRAQUE・CHAGALL・DUFY・LEGER・MATISSE・MIRO・PICASSO』のロンドン版。上左のカバーもマチスのポスターから起こされた石版刷。上右はピカソ、下左レジエ、下右マチスのポスターのリサイズ。リサイズも刷りもムルロー工房が担当した102点のプレートが収められている。

■最長で11日連続というケースもあると聞く今年のGW。小店も5月1日(土)の営業を終えると、5月2日(日)~5月5日(水)の期間、連休させていただきます。HPを通じた在庫商品についてのご注文についてもお休みをいただき、この間に頂戴いたしましたご照会・お問い合わせ等については、5月6日(木)より順次ご連絡申し上げます。いつものご不便にさらに輪をかけてのご不便、恐れ入りますが何卒ご海容のほどお願い申し上げます。
今年はしかし、それだけではございません。というご案内。目黒のアンティーク・ショップ、ジェオグラフィカさんのアニヴァーサリー・フェアにちなみ、小店がいつもよりスケールアップして臨時の店開きをさせていただいております。会場は目黒通り・ジエオグラフィカさんのビル3Fのライブラリー・スペース、4月29日(木)にスタートした会期は5月9日(日)までで、こちらは会期中無休。小店もう一軒分に相当するゆったりとしたスペース、しかも小難しいあるじは不在(…ははは) - どうですこの恵まれた環境は! 詳細についてはこちをご参照の上、みなさま是非一度お出掛け下さい。
■といったGW中ではありますが、5月1日(土)も店に新着品、入ります。そんな中から最初はモンテ・カルロのANDRE SAURET編、ロンドンのA.ZWEMMERを版元に、フランスで印刷されたというとてもインターナショナルな英語の書籍『THE ORIGINAL POSTERS OF BRAQUE・CHAGALL・DUFY・LEGER・MATISSE・MIRO・PICASSO』1959年発行のこの本、著者はムルロー工房の二代目・フェルナン・ムルローです。ムルロー工房の名前を世界的評価に高めた石刷師F フェルナン・ムルローが1940年代半ばから1950年代後半までに手掛けたブラック、シャガール、デュフィ、レジェ、マティス、ミロ、ピカソのポスターをリサイズした上で、全てムルロー工房が石版・片面刷(ごく一部はオフセット印刷との複合か)した102点のプレートと、著者によるテキスト並びに各ポスターの刷り部数等データをまとめたもの。

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『LES PEINTRES TEMOINS DE LEUR TEMPS』1968年のポスターに取り上げられたベルナール・ビュッフェ39歳当時の作品。こちらもムルロー工房による石版刷。

データ部分は資料として重要、そして、サイズの点では少し物足りないかも知れませんが、図版と刷りの完成度は当然とはいえ申し分なく、これだけの画家のリトグラフを102点揃えるのはもはや至難の業であることを考えると、この本、やはりとてもよく出来ていると思います。ポスターに比べると書籍の保存はずっとラクですしね。ポスターの保管は本当に厄介で …
なんてことをいってる人間が勢いで。買ってしまいましたまた。ポスター。同じくムルロー工房のクレジットのあるベルナール・ビュッフェの石版刷ポスターです『LES PEINTRES  TEMOINS DE LEUR TEMPS』=「時代の証言展」は戦後の1951年にスタートして1970年代まで続いたシリーズ企画で、タイトルの示す通り、その時代を代表する画家たちを集めた華やかな展覧会だったとか。これは1968年1月よりパリ市立ガリエラ美術館で開催された同展のポスターで、ビュッフェ39歳当時の作品が使われています。パリのちょっと格式ある古書店に勇をふるって踏み入れると、あろうことか私なんぞをつかまえて必ずといってよいほど率先して見せてくれようとするのがビュッフェのリトグラフ入限定版書籍である場合が多く、彼の国ではその程度に日本人=ビュッフェ大好きという図式がしっかり確立しているにも関わらず、正直にいってどうも私にはピンとこないところがあったビュッフェ。何だかなぁ退屈で。と思いこんでいた私ですが、この作品のエキセントリックなところは案外悪くない気がしてくる … のも仕入れてしまった勢いでしょうかねぇ。



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昭和21年8月発行の杉浦翠子主宰・短歌同人誌『不死鳥 第七号』。表紙の孔版図版には「非水絵」の文字も。裏表紙も同じ手によるものと思われる。「日本降伏一年一周年記念号」の当号の巻頭は正田篠枝が原爆をうたった「唉!原子爆弾」の約40首。非水パリ滞在当時、北白川宮急逝時の記事も見落とせない。

■うっわ長いなあ。あと少しだけご辛抱を。これで今週の打ち上げ、となりますのは、歌人であり杉浦非水夫人である杉浦翠子が疎開先の軽井沢で発行した全頁孔版による同人誌『不死鳥 第7号』昭和21年8月に発行された当号は、「日本降伏一周年記念号」と副題が示され、巻頭を翠子による「註」を伴う正田篠枝の短歌「唉!原子爆弾」約40首が飾り、続いて翠子による「敗戦一年」の21首が置かれています。同人による短歌作品、斎藤茂吉、兼常清佐、山路閑古らによる「諸家来信」、「会員来信」、翠子「米に別れるの記(一)」等、どの頁も細かな字でびっしり綴られ、表2・表3まで使いきった2段組み25Pは、“書きたい”“伝えたい”という熱気と迫力に満ちています。さらに巻頭に別紙綴じ込みによる“杉浦非水謹記”「東久邇宮への歌集日の黒点献上に就て」が2頁。こちらは非水の文による翠子の歌集献上と返礼までの経緯を主旨とする内容ながら、大正12年パリ滞在中の非水が、三越の依頼により自動車事故で亡くなった北白川宮への弔意のために吊花を制作した時のこと、その葬儀の様子が詳細に記されているのも見逃せません。そして、表紙、裏表紙、扉など、同誌を飾る図版全てが非水の手になるもの。孔版に版画としての価値が認められつつある現在、これもまた非水の版画作品として見てよいのかも知れません。今週・もとい・明日はこの他、1970年代のSONY関係資料が10点ほど、そして久しぶりに本らしい本・『浮浪者を語る』など黒っぽい本学術系の白っぽい本とが約80冊入荷いたします。で、一週間後にはまたいつも通り市場があり、GW明けにはまた新着品のご案内でお目にかかります。みなさまどうかよいご休暇をお過ごし下さい!

10/04/23 全古書連大市より その2 : 買ったところでどうしたものか-『海軍武官服制』/ 更紗図案集はタイトル不明 / 中川幸雄書額『月』

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明治6(1873)年11月14日改定の『海軍武官服制』、『海兵隊服制』等全5冊を合本にした1冊。図版は全て多色刷木版画で、それぞれ季節や着用する場面、階級毎に異なる意匠を細部にわたって図解したもの。(画像はランダムにスキャンして並べています。)

■先ずはご注目を。←GW中の営業日程については「営業日案内」を。もうひとつ。←GW中も休まず営業の目黒・ジェオグラフィカさんでの販売のご案内を「その他のご案内」。どうかよぉーくご確認のほど、何卒よろしくお願い申し上げます!
先週の予告に従いまして、自業自得でボコボコになった。ヘコんだ。全連大市の続きを今週は。と思っていたのですが。あれだけ情けなく・悔しい思いをしながら … それさえもが一週間ばかりですっかり薄らいでしまったばかりか、まだまだ高い壁があることを痛感するのもむしろこれからにつながるよい経験だったかも~ なんてのんびりしたことを考えているあたりの執着のなさ、これもまた古本屋として断然大成しない要因のひとつであることだけは間違ありませんな。新着品の方は粘り強く(?)引き続き大市より。当日のことを少しだけ振り返れば、この日、最初に改札が行われる古書会館4階にあった洋書の口が小店にとっての主戦場の主戦闘で、値踏みと読みの「超」がつく甘さからこれ全滅・完膚無き敗戦。と分かったのが本番の日の午前11時半。思えばこの日の連戦連敗は早期決着、この時点で決まっていたわけで、次に「コレだコレっ」と思っていた2階の洋書1冊他5点全点札改めたのに何のことはない止め札の前にことごとく落札できず、 残るは地下1階会場のみとなり - このあたりで精神的にはもう恐慌状態であります。「何か買う!何でもいいから買ったる!!」 というヤケッパチでありました。そんな気分で古書会館地下よりひっぱり出しましたのが本日の3点です。

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タイの更紗のテキスタイル・デザインを多色刷り木版画に起こした図案集。経本仕立ての台帖にB5サイズの木版画35点を貼り込んでいる。

■先ずは『海軍武官服制』今回は明治6(1873)年11月14日改定の『海軍武官服制』19丁(38P)『海軍下士官下服制』18丁(36P)『海兵隊服制・上』17丁(34P)『海兵隊服制・下』33丁(66P)『海軍文官服制』12丁(24P、いずれも表1~4含まず)の5冊・各冊元表紙付き合本での入荷となりました。各冊とも、巻頭に数丁の指針書きが置かれる他は、全て木版多色刷りによる制服と帽子、肩章など装飾品に関する図解式のマニュアルとなっています。海軍の服制は明治3(1870)年の徴兵制とともに規定、当合本の海軍服制については、前年の明治5(1872)年に行われた兵部省の廃止、陸軍省・海軍省の新設を受けて改定されたもので、以後マイナー・チェンジや追加、名称変更を経ながらも、海軍武官の正服については僅かな変化があるだけで昭和20(1945)年の敗戦による海軍最後の日まで用いられたといいます。軍服をかわいいなどと評するのは語弊がありますが、軍隊の服制は日本の洋装化における出発点のひとつというのは通説となっており、だとすれば、このマニュアルを見る限り、日本の洋装はずいぶん高いレベルからスタートを切ることができたようにも思われる出来。さてこの1冊、軍事史資料と見るか洋装史資料として見るか、はたまた浮世絵の技術が残る木版画として感嘆するか、デザイン・ソースとして活用しちゃうか、見る人・手にする人によって、さまざまな可能性の開かれている一種の素材とうのが小店好み。とはいえ、一言で「何者」と固定化できる品物の方がよほど売りやすいわけで、資料専門店でもない分際ではヤケでもないと買えませんよこんな立派な完本揃いの合本。というそんな一冊。

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中川幸雄の書「月」を額に収めた1点。イメージ・サイズ29×25cm フレーム・サイズ40×37cm。額には5cmほどの厚さがあり、背景から浮かせるようにして書を収める。

次は全点木版刷りの更紗の図案集昭和5(1930)年、暹羅古代美術聚頒布会事務所編・発行。「暹羅」というのはいまのタイのことで、明治以降一般的に「シャム」と読んでいたとのこと(というのも後知恵)。図案は全て古代更紗のデザインを木版に起こしたもので、経本仕立ての両面にB5サイズの多色刷木版35点が貼り込まれています。このあたりですと小店としてはそう守備範囲からはずれてはいない、と思っているのはおそらく店主くらいで、当HPご高覧の皆様にはあまりそうした感じはないのではと思われるのに加えて、コレ。コレって。『さらさ○栞 全』。読めない。○のところが。タイトルも読めずにどうやって売るつもりか-何しろHPにデータを上げるにも、目録に載せるにもタイトルなしでははじまりませんからねえ-買ってどうする!
瀧口修造との関係で?いえいえとんでもございません。こんなに鮮やかな朱色で、「月」なんて書かれておりますと、これはもう小店のカンバンのように思えてまいりまして。という、愚にもつかない動機から、仕入れ資金の圧迫にしかならないと知りつつ、札を改めてまで買ってしまったのがこちら。中川幸夫の書額『月』。書はもちろんのことですが、29×25cmの書を5cmほどの厚みのある額に少し浮かせるように見せているところもなかなかでして、なんてことをいいながら、しかし、書はこれまで「南無阿弥陀仏」の扁額(面白かたので)しか扱ったことがないというのに買ってしまったこの書額。カンバンにするには店がまだまだでおそれ多いばかり。大市の敗戦記念として当面はこの書額に店の行く末を見守っていただくことにしたいと思います。天候不順甚だしく、お運びいただくにはあまり芳しからぬ日が続いておりますが、GW前半の29日とか5月1日とか、ご来店いただければ幸甚に存じます。何ナニ折角のGWに敗残者のシケた顔など見たくないと。ご尤も。

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