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17/07/22 明治の木版刷図案集『図案服紗』と左翼的ビジュアルを多用した戦中演劇団体関係書

■作業をしていると5分おきくらいのペースで更新プログラムのために再起動せよと云ってくるのがあまりに鬱陶しくて、ついつい「今すぐ再起動」をクリックしたところ、およそ2時間にわって作業を中断されてしまいました。
今日はともかく思い切り早足でまいります。
先ずは、『図案服紗合』(上下巻揃)
明治27(1894)年、東京は日本橋にあった大倉書店から発行された木版刷りの図案集で、久保田米僊が編集。上下とも折帖仕立て、和紙に多色木版刷りの図案を2冊合計で36図収めています。今回、2冊とも、筒上の袋付き。袋付きは稀。
服紗のための図案と銘打ってはいますが、染めや塗りなど工芸品にも十分応用可能で、実際にはデザインソースとして、さまざまな分野のニーズを勘案して企画・編集されたものではないかと思います。
全体に、いまだ図案化の度合いが浅く、具象画が多い印象ですが、画像にとった「蕨」のような作品が散見され、美術とデザインとが分かれていこうかという、ちょうどその過渡期を思わせる図案集です。

 もう1点は、『移動演劇図誌』。昭和18(1943)年、日本移動演劇連盟を著書とし、芸術学院出版部が発行
すでに紙質も劣悪化しつつあった時代の本ですが、何といっても『犯罪科学』掲載の「グラフモンタージュ」とテイストがそっくりの巻頭58ページにわたって続くグラフィック表現(椀飯振舞!!!)が目を惹きます。写真は植木康次、編集構成は大町糺。
大町糺は、久保田万太郎を担ぎだして戦後すぐに発行した俳句誌『春燈』の発行人にすわったかと思えば絵画で個展を開き、カレー屋を始めたかと思うと『カ リー伯爵の憂鬱』という著書をものするといった調子で、ちょっととらえどころのない人。植木については、これまでのところ、どのような人だったのか不明。

「移動演劇」は大戦下日本の国策団体である「移動演劇連盟」による事業でした。広島で原爆にあった「桜隊」でご存知の方も多いかと思いますが、東宝、松 竹、吉本から、左翼演劇運動までをも糾合した団体です。イデオロギーとしては息の根を止められていた左翼思想の一部が、体制と一体化した団体のメディアの中で生き延びているという皮肉。たいへん興味深く、また珍しい1冊です。
ちなみに、画像中、一番左のページは、開くと横4P分一連で舞台が姿を現す仕掛け。発行時期を考えると随分贅沢な誌面構成でもあり(そう云えばちょっと『FRONT』っぽい)、要はいまもむかしも、権力とむずびついたところにお金は落ちると云うことですかねえ。

■明日土曜日、1910~1930年代の大型ポスターが十数点入荷いたします。すべてリトグラフで、内、1点はカッサンドルのポスター。もちろんオリジナル。明日はお客様からのご蔵書も入荷の予定で、また店内、大変なことになりそうで。
ますます暑い、暑いのに、何故だか汗だけは冷たい夏であります。
末筆ながら、暑中お見舞い申し上げます。みなさまどうかご自愛くださいますように!


 

17/07/15 久しぶりにカッサンドルのオリジナル・リト刷り3点入荷! 吉田五十八旧蔵の芳名帳も!

 ■一週間前の「明治古典会七夕古書大入札会」と「明治古典会プレミアム特選市」および「南部支部入札会」、今週になって「資料会」「明治古典会通 常市」と、暑さの中、市場をひとり右往左往しながら、しかしもうそれほど買いたくはないのだけれどと思っているような時に限って、これがそこそこ落札してしまうという結果となっており、こうした事態に最も肝心なのは売る算段を考えることであったなあと、いまさらながらに思い出して心持ち慌て気味の、いや、もっと慌てていないといけない日月堂、2週間ぶり の更新であります。気が付けば7月も半ばだとは噫。

落札したものを列挙すれば、職人仕事の図案自筆手控え「服紗下絵」1袋、明治の木版図案集『服紗図案合』上下2冊揃い、明治期の手彫りの染めの型紙(伊勢型紙他)1箱、ヘタウマと云うよりはっきりとヘタクソと云える絵で鳥や魚のさばき方を図解した巻子仕立ての『四条流料理伝書』1巻、スタンラン画とされる点に多少の疑念はあるものの20世紀初頭に刷られたのは間違いないジャポニスムの絵が奇妙な具合のリトグラフのポスター1面満洲・ 奉天等の病院に勤務していた日本人の医師旧蔵の海外からの来信(絵葉書)ファイル3冊、20世紀初頭のクラシック・カーを描いたプレート集、エア ラインのラゲッジラベルやマッチラベル・各種商標など小さな箱一つ分、なかなか気が利いている(と思う)デザインのパイプ6個、1950~60年代アメリカの時計コレクターの同人誌の一括、フォトモンタージュを駆使してのプロパガンダ表現に見所のある『移動演劇図誌』、これは珍しい昭和8年の『伊勢丹 接客用語(集)』1910~20年代の欧州優秀ポスターの図案を複写した写真ファイル3冊、そして、西脇順三郎、吉岡実、吉増剛造などの自筆による署名と絵や識語などを収めた飯田善国旧蔵の芳名帳など。
このうちのできれば半分くらいは、追って随時、ここでご紹介していく予定ですが、今日のところは下記の2点と左上の1点を。


■その①は久しぶりのカッサンドルです。3点入荷の内、2点を画像に採りました。
北方急行=ノール・エクスプレスのポスターデザインを流用して表に使い、裏側に宣伝文句と運行ルート・所要時間などを印刷した宣伝用のカードです。
いずれも図案部分はリトグラフで刷られたもの。画像向かって左側が1927年、ポスターと同じ印刷会社「アシャール社」のクレジットが、向かって 右は1929年のもので、やはりこの時のポスター印刷を担当した「リーヴァン・ダネル社」のクレジットが認められます。
残る1点は1930年の「ドクトル・シャルビー」で、こちらはB5=小型ポスター程度のサイズで、やはりポスターと同じ印刷会社「広告美術社」の 記載があります。
3点ともに、額の裏側嵌殺しで入札時は発行当時のオリジナルか後世のリプリントか(リトグラフの複製品が1980年代頃まであるのがフランス で)、3割くらいのリスクを残しての入札となりましたが、お陰様でこれは「当たり」。自分の目と経験とで何をどう踏むか。オークションの落札相場 はじめ世にあふれる情報だけでは判断がつかないこうしたものを落札できているうちは、自分もまだ少しは大丈夫だと思いたい。
あ。もうひとつ。画像中左の図案は、本邦陸軍軍人にして戦記もので作家としても名を残す桜井忠温の著書『土の上 水の上』の本体装丁におもしろいくらいそのまま採られております。是非一度、ケンサクしてご確認下さい。

その②。芳名帳好き、というのも小店の品揃えの特徴の一つかと思いますが、こちらもまた久しぶりとなっておりました。『吉田先生芸術院会員拝命祝賀会』 記念の芳名帳です。
吉田先生とはそも何者ぞ、と云うところから勘を働かせないといけないわけですが、芳名帳に並ぶ氏名の中に、水谷武彦山脇巌と云う戦前のバウハウス留学者で後、建築家として活躍した2氏に加え、清家清吉村順三とくれば、ああ、吉田五十八に違いあるまいと見込んだ次第。
落札したのを手に改めて確認すれば、吉田五十八の名前はどこにもないものの、祝賀会の日付が「昭和28年12月2日」とあります。吉田が芸術院会員に就任したのが昭和29(1954)年1月であること、また、白木屋の設計に関わった建築家で祝賀会出席者の木下唯親描く肖像画の風貌から見ても、吉田先生=吉田五十八と云って間違いありません。
祝賀会出席者には、大阪松竹座や東京劇場を設計した木村得三郎、樺太庁技師から出発した栄米治、坂倉建築事務所出身で東急会館などを手掛けた北村脩一などの名前があり、調べれば建築家だらけということになりそうです。
この人はまあ当然だけれど実はこの人は吉田に批判的だったとか後年袂を分かつだとか、そういった関係まで読み解ける方が現れて初めて商品になるのだろうという性格の商品だと思うのですが、それにしてもなぜそこまで予想しながら「これが好きなもので」という安易な理由で、こうも七面倒くさい商材ばかり買ってしまうのか。七面倒くさい自分とその商売に、正直もうほとほと嫌気がさしております。
そんなことを云いながら、来週には、飯田善国旧蔵芳名帳なんかひっぱり出したりして。
ともあれ続きはまた来週。の予定。嗚呼。

 

17/07/01 一週遅れて新着品は同潤会・満洲国留日学生会館・紐育万博関係! 来週は七夕古書大入札会で土曜日休みです!

■7月1日。2017年も後半戦に入りました。早い。あまりに早い。今年もまた、「七夕古書大入札会」が今週金曜日7月7日(金)から始まります
入札スタート価格が、最も安いもので10万円からと云うハードルの高い入札会ですが、一般下見展観日が設けられていて、いつもは業者しか入れない古書の入札会場に一般の方も入れ、実際に手にとってご覧いただくことができるとあって、国内のみならず海外からも多くの方が足を運ぶ入札会。出品商品全点掲載の目録、下見展観の日時や会場等、詳細については下記のサイトでご覧いただけます。
ご興味のある方は先ずはウェブサイトご高覧の上、会場にも是非、お運び下さい。
http://meijikotenkai.com/2017/

これに伴い、7月7日(金)より10日(月)まで、店の営業並びに在庫商品の通信販売をお休みさせていただきます。また、「七夕」に関係する以外のご連絡については、お返事が11日以降になる可能性がございます。
この間にご連絡が必要な場合、ご存知の方は日月堂・佐藤の携帯電話へ、または「七夕」会場の東京古書会館03-3293-0161までお電話の上、日月堂をお呼び出し下さい
7月11日より通常営業に戻ります。
例によってご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。

 ■そうこうしている間にもそこそこ新着品は入荷しておりまして、今週はその中から3点を選びました。
1点目は、「同潤会アパート」で名高いご存知同潤会関係の印刷物。『同潤会事業概況』はB5・8Pだて、昭和9(1934)年現在の普通住宅・分譲住宅・ アパートメントハウスの一覧表とそれぞれの説明と14点の建物写真、その他の事業や住宅分布地図、役員一覧からなるパンフレットで、写真は外観を中心に室 内のカットを含みます。
江戸川アパートメントについては同じく昭和9年、こちらは竣工当時のリーフレット2種。淡いイエローにブルーで刷られた方には、室内の写真3カットや屋上からの眺望、間取りと家賃、フロア見取り図が。ゴム印で、「7月29日アパートメントを展覧に供します~」という案内2行があり、深読みかも知れませんが、竣工前後、ぎりぎりまで読めないスケジュールにやきもきしていた関係者一同の心中察するものがあります。白地にブルーで印刷された縦長のリーフレットは全フロアの平面図、敷地・規模、戸数、工費、付帯施設といった主にハード面の案内。
画像中、『荻窪分譲住宅 受付開始』と見える大判・1枚ものは、昭和4年に売り出された豊多摩郡杉並町大字天沼654番地に“中産者の住宅問題解決の一助として”建設された住宅の分譲案内ですが、反対側(裏面)には住宅造成地全体の配置図、配置された各住宅のタイプとそれぞれの間取りが詳しく描かれています。18年間毎月の分割払いで、タイプ別の支払い額概算表も。
同潤会と云えば、一般的に、都市生活者のためのモダンなアパートの印象が強いかと思いますが、江戸川アパートメント以降は木造平屋建て中心の分譲住宅の供給に専念しており、荻窪分譲住宅は、その初期の事例のひとつです。
同潤会の分譲住宅事業については、インターネット上にも研究が公開されており、あまりに詳細なのに小店店主はたじろいでおりますが、ご興味ある方は是非ご一読を →
→ http://www.jusoken.or.jp/pdf_paper/2003/0210-0.pdf
何しろ同潤会ですから。そこにはサラリーマン家庭の理想カタチがあったはずで。
何しろ同潤会ものですから。紙もの資料は非常に稀で。市場での人気は高く。売るには苦労がつきまといそうな ……。

 ■こちらも建築関係ですが、植民地政策・対中関係の意味が加味されてしまう「満洲国留日学生会館」関係冊子類。『財団法人満洲国留日学生会館設立計画書』『財団法人満洲国留日学生会館処務規定』の2冊が昭和11(1936)年付け。『財団法人満洲国留日学生会館新築工事概要』が昭和13(1938)年付けで各種坪数、建造物の仕様、収容人数、付随施設、設計・施工者等、施設と工事に関する詳細と、全景、中庭、講堂と竣工当時の写真3点、地下1階・地上4階および屋上の全フロア平面図を収めています。表紙に押されている印は昭和13年付・日本建築士会のもので、鉛筆書きで「原稿用済ニテ御返却申上ゲマス。」とあり、同じく鉛筆で平面図の修正や削除を意味すると思われるバツ印、加筆訂正等が見られます。屋上平面図に書き込まれたバツ印を除けば、書き込みの方が竣工後のより正しい情報となっている可能性を伺わせます。
「満洲国留日学生会館」は、昭和10年(1935)満洲国皇帝溥儀の来日記念事業としてスタートしたもので、「建国ノ精神ヲ堅持シ日満一体ノ観念ヲ把握セ シメ以テ日本留学ノ目的ヲ達成セシムル為ノノ研学修養ノ道場タラシメム」ことを目指していました。要は、満洲=中国からの留学生を日常生活の場からして“教化”しようと目論んだもので、道場と呼んだそのまんま、「大弓道場」が主要施設のひとつとして設けられる分かりやすさ。この辺り、いまもそう変わらない気もします。
ちなみに、同会館が置かれたのは、元陸軍造兵廠東京工廠敷地内で、現在、日中友好会館がある場所なのだそうです。
画像中、他の印刷物は会館に設けられた中華料理店のメニュー2種3点。「支那ソバ」1杯12銭也。果たしてちゃんと故郷を思わせてくれる味だったのかどうかが、気にかかります。

■もう1点。真珠湾攻撃によって始まる太平洋戦争直前の昭和15(1940)年10月、前年にニューヨークで開催された万国博覧会の記念写真集として出版された『明日の世界文化』。画像は当書中の日本館に関する部分からピックアップしました。一見モダンスタイルのようにも見えますが、洗練されているとは云いがたいベタな装飾部分などを見るに、僅か3年前の1937年、パリ万博で優秀建築に選ばれた坂倉準三による日本館の超現代的(!?)スタイルからすると大きく後退していると云わざるを得ない日本館の姿です。
巻頭には、山脇巌の長文を含むテキスト多数。アメリカの物質文化について、科学・技術について、企業のもつ力についてなどなど。ここまで詳細に把握し理解し肌身で感じとっていた人たちが少なからずいたにも関わらず、日本は何故、太平洋戦争に突っ走ることになったのか、残念なことに、2017年現在、少しずつ私にも分かるようになってきました。
ところで、掲載されている写真の一部は、かつてその紙焼きオリジナルのワンセットを小店で扱ったことのある小林湜信氏撮影作品から選ばれたもの。6年も前のことになり ますが、その頃は私にはいまより数倍の熱意とエネルギーがあったようで、詳細についてはそちら(下のアドレス)を誤認いただくのがずっとよろしいようで…。

11/06/18 土 この世に1点。かもしれない 。 - 「1939 紐育万博記録写真集」/ アール・デコ期・照明器具デザイン画

http://www.nichigetu-do.com/navi/info/detail.php?id=567

 

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