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16/07/23 本日更新の要諦は HPと8月のこと。新着品は「和」の2点です。

 ■先ずはお知らせです。当HPについて、アクセスしようとすると「どっか行っちゃったよ」といった感じの英文が出て表示されなかったり、トップページが開くまで時間がかかるなど、ここのところ大変不安定な状態が続いています。専門の方の調査により、外部からの侵入の痕跡などなく、すぐに閉鎖しなければならないようなリスクは考えられないものの、トップページに何らかの原因箇所あるのではないか - データベースから情報を読み込む段階で負荷が大きくなっているなど - という指摘を受けました。
現在、HPのリニューアルに向け、具体的な打合せに入っておりますが、移行までにはまだまだ時間がかかります。今後しばらくは状況を注視しつつ、その原因等に合わせて適切な対応をとっていく所存です。尚、HPの閲覧が難しい場合など、是非、Facebookの「古書 日月堂」のページをご覧下さい。必要な情報については随時更新いたします。また、メールをいただければこちらからご返信申し上げます。
ご不便をおかけいたしまして誠に恐縮に存じますが、引き続きお付き合いのほど、何卒よろしくお願いいたします。

大切なお知らせがもうひとつ。来週は、火・木・土曜日の各日12時より20時で営業いたしますが、8月は1日より31日まで1ヶ月間、店の営業をお休み させていただきます。と云っても店主骨休めどころかバックヤードの整理と在庫の見直し、商品の入れ替え等で、普段以上に店に居ることになりそうです。
1996年の開業以来20年、ここらで一度垢を落とし、在庫を見極め、今後の進むべき方向について改めて考えてみようと思います。9月の営業再開時には、 しばらく動いていなかったものなど一掃したいと思っていますので、買い忘れていたもの、後回しになっていたものなどはお早目に。開業20年にして初の長期 店舗休業。これまたご不便をおかけいたしますが、ご海容を賜りますようお願い申し上げます。
おっともひとつ。当HPは、長期休暇突入直前の来週も更新を予定いたしております。

河原崎晃洞。大正から昭和初期に発行された木版刷図案集の著者としてお馴染みの名前ですが、日本画家としても活躍したという経歴がむしろ仇となったの か、どうも説明的で、具象に傾きがちの意匠の甘さが気になるのが常なのですが、この『四季応用 図案百選』では他の多くの晃洞作品と異なる大胆な省略と洗練された構図、コントラストが鮮やかな色使いに目を見張ることになりました。晃洞の図案集の版元として、こちらもお馴染みの内田美術書肆から、昭和7~8(1932~1933)年にかけて発行された3冊組が入荷いたしました。

 3冊の内容と内訳は『春』『夏』『秋冬』の3冊でそれぞれの季節に相応しい花や吉祥をモチーフとした25図ずつ、全75図を所収したもの。「百選」と云う 100との齟齬が少々気になりますが、実は当書にはもうひとつ、春夏秋冬各1冊・全4冊の別ヴァージョンがあり、そちらの現物にあたってみる必要はありま すが、4冊の方は各25図の計100図を収めている可能性大。と、なると、いま現在自分の手元にない25図というのがどんなものか? 何だかとても損している気がしてきていけません。
それはさておき。図版にとった図案は、右端から時計回りで、黒と僅かな金色使いが現代的な「さざんか」、背景色が利いている「あやめ」、蛍の光を控えめな 銀円で表わした「すすき」、抽象絵画を思わせる「うめ」、個人的に小店店主が唸ったと云う「雪輪に南天」。かなり渋めのラインナップとなりましたが、華や かな図版も多数。詳細は店頭でご確認いただければ幸いです。

続く新着品は縞帳2冊。表紙の劣化で判読が難しいものの、佇まいからして明治と云うより江戸の、『志満手本』(と読めます)。画像上段は外形 27×16cm・30丁(60P)、下段は外形21×16cm・22丁(44P)と少々サイズは違いますが、貼り込まれた布の数といったら、それぞれ …… と云ってカウントしたいのはやまやまですが、深夜3時の作業としては厳しいものがありあっさりパス。ですが、画像でご覧の通り、ほどよい余白を残してきれ いに貼られたページとタ縦横無尽に貼り込みが櫛比するページとが混在し、数え出すととんでもない点数であることだけは請け合います。
表紙と三方、表紙・裏表紙から数葉の経年劣化は免れませんが(それがまた、時代をへた風格のようになっているわけですが)、中央に近づくにつれ、まるで蒐集されたのが昨日のことのように状態の良いページが現れて驚きました。
表紙の手跡から見て、収集・収蔵は同一の人物または工房のものと思われ、150年以上をともにしてきた2冊、ここでバラはてしまうのは忍びなく、2冊での販売を考えています。

■今週はこの他、欧州に航行した『軍艦八雲練習記念写真帳』他軍隊関係写真アルバム3冊、『タタカフ ヘイタイ』等戦中の絵本4冊、海外の花の図案集を完全にパクった日本のデザイン図案プレート、戦前戦中の『写真時代』8冊、杉浦非水が表紙絵を手掛けた 『三越タイムス』9冊日本郵船『Travel Bulletin』他冊子類11冊建築写真類聚等戦前建築写真集関係2本口…等々、土曜日には店に届きます。このうち何点かは、来週以降のこのページで ご紹介いたします。

今週のななめ読みから。我ながらこんなことも知らなかったかというお話しと、なるほどねと云うお話しと。
http://www.k2.dion.ne.jp/~kenpouhg/topics/inouehisashi_kouen.html
https://gamayauber1001.wordpress.com/2014/02/12/japan-2/
あとひとつ。ザイ●クとかコ●フクとか、下のツ●ルカイとかと関係の深い人を首都の首長にするのはものすごくまずいと思う次第です。
http://www.tsukurukai.com/News/index.html#280719news

 

16/07/16 『FRONT』フィリピン号と大倉商事大連出張所主任・堀洋三旧蔵写真帖

■久しぶりの更新です。先週金曜日から日曜日まで続いた市場は我ながら まずまず。とも云えるような、ダメだった。とも云い得るような、要する非常にハンパな結果に終わりました。現在私のもとに残っているのは、なかなか抜けない疲労 並びに  シビアな金額のお支払い のふたつであります。やれやれ。後者については請求書の到着を待ってどうするか考えるとして、とりあえず新着品のご紹介です。
第二次世界大戦下の日本を代表する対外広報誌『FRONT』が七夕の市場から店にやってまいりました。お目にかかることの少ない、号数二桁台の3冊です。
この内、『FRONT 10-11 鉄号』『FRONT 12-13 華北建設号』の2冊は「あっ。」と云う間もなく小店からお客様のもとに旅立ちますが、『FRONT 14 フィリピン号』は小店自前の落札品。何しろ現物を見るのはこれが初めてということもあって、長逗留となるのも覚悟の上での入札ではありました。 『FRONT』についてはあともう1冊、『5-6 満州国建設号』の中国語ヴァージョンも近々入荷する予定です。『満州国建設号』は日本語版がたまに出てくるのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、中国語版は日本語版とは異装 …… といった『満州国建設号』については入荷後に改めてご案内することにして、何はともあれ日本語版以外の『FRONT』が2冊揃うというのは小店初のことかも知れません(このあたり、実は記憶があいまいです…)。
Wikiをご参照いただければたちまち明らかになることですが、念のため記しておきますと、『鉄号』は英語と中国語の併記、『華北建設号』は中国語と日本語の併記、『フィリピン号』は英語と中国語の併記となっています。
これまたご存知の通り、陸軍参謀本部の発案で、当時のソヴィエト連邦の対外宣伝誌『USSR in conctruction』を手本とし、陸軍を後ろ盾に発行された『FRONT』は、林達夫、原弘、高橋錦吉、木村伊兵衛、渡辺義雄、濱谷宏など優れたス タッフのもと、潤沢な資金と資源を投入して制作されたのが『FRONT』です。大がかりな写真撮影、フォトモンタージュやエアブラシによる修正など、スタッフが納得のいくまで 何度も手を加えただけあって、全編にわたって漲る緊張感は、発行回数を重ねた今回入荷の号あたりに至るも並ではありません。
『フィリピン号』のテーマは英米列強からの解放と大東亜共栄圏建設完成のための戦争勝利。日中戦争から太平洋戦争を通じ、日本と日本が食指を伸ばした先の国々で盛んに喧伝された美辞麗句がいかに欺瞞に満ちたものだったか。『FRONT』とは、国家的欺瞞を覆い隠すために必要とされた完全なる偽装の姿そのものであり、その誌面が洗練されればされるほど、そして、そこで見せる他国の人たちの笑顔が美しければ美しいほど、暗澹たる気分にさせられます。2016年 7月。参議院選挙後。いま最も 「一見の価値ある」雑誌だと思います。
表紙に一か所、僅かな傷があるのが惜しまれますが、あとは全編通して傷みもシミもないほぼ完ぺきな状態です。


こちらは七夕の延長戦上に開催された特選プレミア市からの到来品。これまた久しぶりの、個人所有のちょっと面白い写真アルバム。
今回の布装写真帖は大倉商事大連出張所主任だった堀洋三の旧蔵品。明治末、明治学院を経て早稲田大学で学んでいた当時の写真から、結婚後妻子ある家庭風景まで、およそ10年前後にわたる記録となっています。
堀洋三本人は洒落たスーツで決めた写真が多く、なかなかダンディな若き紳士です。中流以上の生活ぶりがうかがえる堀家の家庭内スナップや堀の親族の肖像写 真と並び、大倉商事大連出張所の同僚とその家族の写真(氏名、撮影年記載)多数。なかでも目をひくのが大連での大倉商事運動会風景や大連の芸妓の写真、そ して大倉喜七郎が注力したと云われる「本溪湖煤鉄公司全景」のパノラマ写真と炭鉱関係の数葉です。また、その喜七郎夫妻を大連に迎えての歓迎会の写真も。
他にもロシア語が印刷された芸妓の集合写真絵葉書に日本語で源氏名が書き込まれたものなど、全体に、当時の大連大倉商事と大連の日本人社会に関する資料的写真多数。名前と年度が比較的まめに書かれているのも手柄と云えるでしょう。
さて、堀洋三と云う人ですが、調べてみると、わずかながら資料があることが分かりました。「堀洋三」「大倉」の2文字でgoogle先生に問い合わせてみ ると、「国立国会図書館デジタルコレクション」の「大倉対川崎銑鉄訴訟事件之追憶 [53]」と云うのにつながります。詳細についてはまだインターネット公開されていないため分かりませんが、この事件の梗概によれば、大倉と川崎との銑鉄 取引をめぐる訴訟合戦のなかで、どうやら堀洋三は大倉の内部文書を川崎に渡し、大倉の有利に運んでいた訴訟を妨害しようとした人物 ―― 当然、大倉にとっては裏切り者 ―― として登場します。時は大正14年。この写真帖の時代とはほんど開きがありません。事件の後、堀とその家族、そして親族は一体どのような行く末が待ち受け ていたのか … おそらくは堀夫人の手で書かれたと思われる「郷里の墓」の文字が添えられた写真1枚が貼られたページに、あの当時は当然とされていたのであろう家人として の覚悟といったものがうかがえて胸に迫ります。

■今週はこの他、江戸時代中期~末期と見られる縞帳2冊、近衛文麿・堀内敬三・弘田龍太郎他戦時下音楽家の自筆書簡コレクション、昭和8年当時の西陣染織 研究会がまとめた海外製品生地サンプル集『玲瓏譜』『四季応用図案百選』3冊揃、戦前資生堂のノベルティ2点などを落札。店への入荷は来週木曜日となり ますので、『図案百選』と『縞帳』は来週の更新でご紹介する予定。しばらくお待ち下さい。

今週のななめ読みから。それにしても、あの党を信任できると云う人は、あと何度くらい愚弄されたら気がつくんだろう。いや、大切なものが失われつつあると云うこと自体、認識されていないとすると…? 問題の根の深さを考えさせられる2つの記事。
http://blogos.com/article/183312/
http://hibi.hatenadiary.jp/entry/2016/07/12/011239

 

16/07/02 来週は「七夕古書大入札会」 / エリック・ギルの「ギル・サン」を収めた1930年イギリスのタイポグラフィの本

 ■2016年ももう半分が過ぎ、今年もはや「明治古典会 七夕古書大入札会」の季節となりました。
このタナバタの関係で、来週、店は火曜・木曜の両日のみ、12時より20時までの営業となります。当HPの更新も一回お休みさせていただきます。
ところで、「明治古典会 七夕古書大入札会」とは何ぞや? と疑問をおもちのみなさま、是非、下記のアドレスから専用サイトをご覧下さい。
http://meijikotenkai.com/2016/
平たく云えば、年に一度開催される古書のオークションでありまして、今年は7月8日(金)10時~18時、7月9日(土)10時~16時の二日間、一般のお客様に商品をご高覧・吟味していただいた上で、古書業者がお客様に代わって入札する、と云うものです。
最低入札価格が10万円からと敷居さが間口の狭さになりそうですが、入場は無料、その上、漱石の自筆反故原稿や芥川龍之介の手紙、あの『死刑宣告』やフジ タの版画、芳年の浮世絵等々、出品商品はどれでも・どなたでも手にとってご覧いただくことができます。とてもじゃないけど買えないよと云う商品であろう が、やがて文学館や美術館に入っちゃうかも知れないものだろうか、とりあえず、あなたの指紋をつけておくことができるのです!
「だから何。」と云う声が聞こえてきそうなので馬鹿話しはこれくらいにして、小店、代理入札に関しましては基本的にこれまでお取引のあったお客様に限らせていただいておりますが、これはと思ったお品物がありましたら、お声をおかけ下さい。
会場は地下鉄神保町駅または新お茶の水駅、JRお茶の水駅から徒歩圏、駿河台下近くの「東京古書会館」。日月堂は金曜は閉場直前まで、土曜日は昼過ぎからほぼ終日会場に居る予定です。
今年は昨年より「七夕」と併催されるようになった業者だけの「プレミア特選市」が土曜日16時にスタート、「七夕」の最終入札と改札並びに「プレミア」の 入札・改札とセリとが日曜日に行われる上に、金曜夕方から土曜日昼まで五反田で開催される南部支部の入札会が重なって、多分、こう書いただけでは何がどう なってるのかわけ分からんと思われましょうが、正直、私にももうどうなっちゃうんだか分からない市場地獄の3日間。しかし一番の問題は、現在までに告知さ れている市場の事前情報のどこをとって何を見ても、「これは」と思うものがひとつもないこと。そうでなくともスランプが続いている云うのに どうする? どうなる!日月堂の72時間 …… なのであります (嘆息) 


■タナバタを目前に思い切った買い物をするというのは手持ちに限りのある古本屋では土台無理なお話しで、今週の新入荷分はわずかです。いずれもタイポグラ フィ関係の洋書が7冊、土曜日に入荷。
画像はそのうちの1点、『ARS TYPOGRAPHICA - The type book of BALDING AND MANSELL』。 1930年4月発行の初版。イギリスの印刷会社「BALDING AND MANSELL」の製品である活字と組版サンプルを1冊の上製本にまとめたもので、とくに当時出来上がったばかりだったはずのエリック・ギルの代表作「ギ ル・サン」のファミリー7書体を収めているのが当書の手柄。
他に「ギャラモン」などオールド・スタイルから「ブロードウェイ」といったモード系の書体まで、活字約30種を収める他、文頭を飾るイニシャル・レター7P、罫線及び飾り罫7P、その他装飾7Pなどが含まれています。
1930年当時、当然のことではありますが112P全て活版印刷の直刷、自社PRのためとあって刷り上がりも実に見事。
あくまで活字関係の商品とそれを使って作ることのできる組版のみ、つまり、ほぼ活字によって構成された単純な本なわけですが、この上なく美しく、何度見ても見飽きること がないように思われます。
文字デザインと組版デザインとがいかなる力をもつものなのか。改めてその力の大きさを思い知らされる1冊です。

■と云うわけで、7月10日(日)には精根尽き果てているはずの私は期日前投票に行く予定。
ハンナ・アレントの『暗い時代の人々』の序文をひいたブログを見つけました。
http://d.hatena.ne.jp/ima-inat/20130828/1377655411
今週は、ここからの引用。まるで日本のいまとこれからを予言しているような、つまり、「暗い時代」を繰り返しつつあるという指摘にも等しいアレン トの言葉です。
「カタストロフがすべてのもの、すべてのひとを襲ったまさにその瞬間に至るまで、それはリアリティによってではなく、ほぼすべての公的な代表者ら の非常に効果的なおしゃべりと曖昧な物言いで覆い隠されていたのだ。彼らは遮られることなく様々に技巧を凝らして、不愉快な事実を言い繕い、もの ごとを正当化した。暗い時代について、そしてそこで生き行動した人らについて考えるなら、「エスタブリッシュメント」――すなわち「システム」と 呼ばれるところのもの――から発せられ広められる、このカモフラージュを考慮に入れなければならない。」
ブログで取り上げられているブレヒトの詩については、野村修訳のこちらで読むのをお勧めします。
http://blog.goo.ne.jp/momonga2004/e/796c3e482b2f4763743ef1900b883314


 

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