■今週はつべこべ云わずに新着品のご紹介にまいります。
すでに落手はお知らせしておりましたが、詳細不明で棚上げにしてきた「朝香宮鳩彦宛 絵葉書63枚」について、ようやく目鼻がつきました。
絵葉書は明治末頃のものを中心に、最も新しいもので1933年5月25日付のパリからの葉書。全て切手・消印のない状態で、何も書かれていない数葉を除き比較的短いメッセージと宛名、差出人名(但し略称)が書き込まれています。
朝香宮の東京の邸宅は、現在「東京都庭園美術館」となっていることはご存知の通り。いまの目黒駅を挟んで反対側には「元競馬場」なる地名が残っていますが、残された葉書には「競馬場に来たついでに御機嫌伺い…」といった内容の数葉があることから、投函されたのではなく留守と聞いて伝言を届けたものか、パリからの葉書にも切手・消印のないことから皇室関係者には葉書の場合でも封書が必定とされていたのか、ここまで揃っていると何らかの理由があってしかるべきもの考えてはおりますが理由は確定できず。
宛名は「朝香宮様」「鳩彦様」「鳩様」と明らかに朝香宮鳩彦その人に宛てている他に、「鶴様」「靏様」と書かれたものが多く、これはさて、朝香宮鳩彦に宛てたものかというのが一番の疑問でした。鳩ではなく鶴もしくは靏とはこれ如何に?
よく見ると、同一差出人が「朝香宮」と書いたり「靏様」と書いていることから後者も朝香宮宛てで間違いないように思われますが、いま少し論拠となりそうなことはいまのところたったひとつ。
鍋島直泰に降嫁した朝香宮鳩彦の長女持参のひな人形について記したサイトがそれ。
http://www.nabeshima.or.jp/main/156.html
「背面の紙縒より、男雛は紀久子(花印)、女雛は紀久子の父朝香宮鳩彦王(鶴印)所用のため、現在は一対として伝わるが」云々。念のため申し添えておくと 「云々」はでんでん ではなく うんぬん。それはさておき、ここで朝香宮と「鶴印」が初めて結ばれました。
差出人はというと、「杉より」「杉印」「桐」「桐印」などと書く人もいて、こちらもまたやんごとなき方々かと思われますが、最も面白いのが先にも挙げた パリからの1通。鳩彦王のフランス滞在が長期化し、夫人が渡仏。夫婦ともにパリ万博に通った挙句、アール・デコ様式の本格的な洋館を日本で建てることになるきっかけとなったのがフランスでの交通事故。これはよく知られたことですが、この葉書には事故の際に救護と看護にあたった人たちの近況とサイン、担当医師の近況などが書かれています。差出人の「齋藤眞」なる人の素性は詳らかにできませんでしたが、朝香宮宛とするにこれ以上はない内容と云えましょう。価格はこれから検討します。
■松屋銀座での即売会はここ数年、砥部焼とアンティーク・ウォッチの三つ巴での開催で、時計の業者さんたちから資料はないかと尋ねられるのが吉例となって います。がしかし。これが案外むつかしい。なのに。その催事が終わったばかりのこのタイミングで市場に出てきたのを落札。時計関係のカタログ・パンフレッ ト等冊子9冊。明治30年代か大正10年頃までのものと見られます。
『時計定価一覧表』は国産懐中時計の量産に成功した日本橋区本銀町・田中時計本舗の明治22年の商品一覧(図版入)。
見開きの図版頁は池之端仲町通の大正11年の『吉田時計店定価表』。タバン、プランケン、チソット、オリスター等輸入時計商。
下段右から3点は大阪の時計商のパンフレット。高級感と云う点では、今回入手した東京の小店のものに優り、『ISHIHARA SHOHO』の女性飛行機乗りの腕に時計を描いている表紙などにはモードへの目配りも見られます。
下段左端、『大勝堂商品案内』は銀座通尾張町にあた大勝堂時計商会のカタログで、「欧米各国直輸入 銀時計美術商品」を図入りで紹介しています。
腕時計についてはまだまだデザインも単調ですが、商品ラインナップや価格帯等、資料として見るには面白そうです。
■ここ最近の斜め読みから。武器購入「米国の雇用にも貢献」安倍首相が答弁 <トランプ大統領>会見で独演会一貫性欠く持論まくし立て 種子法廃止食料主権に逆行の危険 サソリ型自走式ロボ16日初投入福島第1原発2号機の調査 マイナンバー1992人分流出制度開始以来最大規模 「愛国心」と「天皇国日本」が教育理念 「9割引」で国有地を買った小学校、名誉校長はあの人 安倍晋三小学校 総統閣下は大統領への貢物に年金を持っていくつもりです 安倍晋三首相「私は朝日新聞に勝った」 トランプ大統領「俺も勝った!」 ゴルフ会談で日米同盟はより強固になるか?… 斜め読みしたうちのごく一部ですがタイトル並べただけでええそれはもうはい ………。
■2017年もはやひと月が過ぎながら、年明けて以来、きちんとした新着品のご紹介はこれが初回とは。深夜から早朝に及ぶこの作業、相当に負荷を 感じるようになってきているのですが、しかし、これがあるから店が如何に売れなかろうが市場に通い、ざっと見るにおもしろそうなものがないように思える時でも市場の隅をつついて買うべきものと見つけようと努力してきたわけでありまして、気が付くと、このページがある種の「つっかえ棒」の役割を果たしているのでした。そう簡単にはずしてしまうわけにはいくまい。と云うわけで、新着品ご案内も再開と相成りました。
依然、文字化けの問題を抱え、直接入力に頼るため、お見苦しい部分などもあろうかと存じますが、ご容赦下さい。
…と云って2月6日更新をお約束したのを反故にして、ようやくの更新となりました。再三の延期でご心配下さった方もいらっしゃって、恐縮の至りです。大変申し訳ございませんでした。少なくとも店主は元気でおりますので、どうかご心配ご無用に!
■古い紙モノを扱っていて、いつも答えに窮するのが印刷技術に関する質問です。ほぼ間違いなく分かるのは木版くらい、石版とシルクスクリーンについては概ね判別できるがけれども少々あやしくなり、現在最も一般的に用いられているオフセット印刷以外の印刷技法となると全然覚束ない …… これが実情でありまして、誠にもって情けない次第。とりわけ古い印刷物のなかには、平気で複数の印刷技法を組み合わせてつくられているものなどもあり、手元に常備している戦前の印刷技術の書籍に綴じ込まれているサンプルと比較して見てもお手上げというケースも珍しくありません。これも偏に小店店主の勉強不足ゆえ。とはいえそれにしても、印刷技術については複雑怪奇の感があります。
市場で『Half-tone』と題された、この小さな冊子を見て思ったのは、「これで印刷技術のかなりの部分が分かるかも」と云うことでした。
約12cm角・24Pの冊子は、いまも印刷屋さんが集まる東五軒町(牛込区→新宿区)にあった「平和写真製版所」が発行した自社製品に関するパンフレット。網目の粗密を横並びにして解説を付すなど、同社が製作する印刷物に関して必ず図版と技術解説とのセットで紹介したもので、実に懇切丁寧。
で。一読氷解かと云うと、どのような化学反応を応用したものかなど、ひとつひとつの工程に至るまであまりに詳し過ぎ、まわりくどいテキストが、むしろ理解を妨げることになり、結果、やっぱりよく分からない。
ですが、写真製版で得られる凸版の種類、同一技術を用いながら精度の幅がどの程度あるのかなど、アタマを整理し、或いは印刷物と比較検討するのにはかなりの情報量をもつのは確か。昭和11年の当パンフレット発行当時の先端印刷技術を知る上での貴重な材料になるかと思います。
もう1冊、『白蘭社サーキュラー』は同社の高度なリトカラー印刷を写真印刷4図で伝えようとしたもので、宣伝文句のみでテキストはありませんが、精度の高い図版を小さいながらも端正な冊子にまとめた佳作。
2冊とも、そのデザイン含め、とても好ましい印刷物です。
■珍品および好ましい印刷物が続きます。いずれも発行は昭和10年前後とみられます。
『ラ・ルーナ美爪液 色ノ選ビ方 及ビ 其色見本』はマニキュアの色見本帖。全10色のサンプルを貼り込み、主な用途・相応しいシーンを紹介。随分長く紙モノを扱ってきましたが、マニキュアの色見本は小店初めてです。
『1936 A SPRING SAMPLE』は銀座の紳士服店マツムラのワイシャツの柄見本帖。20点の生地現物が貼られています。価格記載有。
『mannequins Shimazu-Kyoto』は島津マネキンの商品カタログ。A4・8Pに洋服用、和服用、帽子用、靴台などのマネキン写真と特徴を記載。価格表付き。
『IMPERIAL HOTEL』はライト館当時の帝国ホテル英文パンフレット。わずか4面ながら館内写真3点他を掲載。表紙の図版も見事です。
久しぶりに粒の揃った紙モノたち。本日店のキャビネットに並べてご覧に入れる予定。
■彼の地のインフラ整備と雇用促進のために何故か自国の年金を手土産に亜米利加へと渡った人が、豪華リゾート地でゴルフとは。批判精神まで失ってしまった日には世も末。
その彼の地では、こんな抵抗の仕方もあったかと、その鮮やかなやり口に感心するばかりです。→ ニューヨーク・タイムズ 2月3日付。
■ただいま深夜1時をまわったところ。本日の更新は1回お休みとさせていただきます。
「第33回 銀座 古書の市」は無事打ち上げることができました。ご来場くださいましたお客様、目録でご注文くださいました方々に心より御礼申し上げます。有難うございました。
会期終了後も続いていた関連会議や諸連絡、そして商品の発送、ごく大雑把ではありますが店の復旧も金曜日までに終えることができ、本日1月28日(土)より店の営業を再開いたします。来週から当面は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。
久しぶりの店では のんびり…といきたいところですが、青色申告や当HPのリニューアル等と目先の仕事だけは色々あり、店主、例によってそわそわ落ち着きのないこと鬱陶しいばかりかとは存じますが、みなさまのご来店を心よりお待ちいたしております。何卒よろしくお願い申し上げます。
新着品のご紹介は来週から復活の予定。唯一無二モノ陸続入荷。しばしお待ちを!
■画像はイタリア建築図集の編集に使われた古い書籍をバラしたもの。今回の「古書の市」の会場用商品のなかで小店出品分としては一番人気だった商品。実はこれがまだ店に数着枚あったりするのであります…。