■2014年は本当に365日もあったんだろーか。ホントは200日ちょっとくらいしかなかったんじゃなかろーか。もしかして何かの陰謀!? と、さっきから頭の中を胡乱な考えがグルグルグルグルしている2014年の年の瀬の日月堂です。表参道のケヤキ並木のイルミネーションは、慌ただしい師走にあって、いっとき人の足を止めさせています。
この12月は、資料会の大市から始まって明治古典会クリスマス大市、洋書会歳末市など、これでもかと云う市場通いの内に過ごしたにも関わらず、売値を忘れてでも買わねばと思えたのはわずか数点、落札点数もわずかなものに留まりました。ちょっとしたスランプと云ってよい状態です。
しかも。例によって1月21日(水)から始まる「第31回 銀座 古書の市」の準備が間に合っておらず、年末年始の吉例となりつつある連日の残業で、ヨレヨレの小店店主。
と、まあそうした経緯で今週の画像1点目は表参道ケヤキ並木のイルミネーションをお届けいしたます。年の瀬の光の一服でお茶を濁そうという浅薄な魂胆。来年もろくなもんじゃぁなさそうな小店であります。
■今週木曜日に入荷したのが展覧会の図録2本口(残念ながら特筆すべきものなし)と、「フランス・アカデミー文学論集」と封筒に記されていたフランス18世紀(1700年代)の洋書33冊。「フランス・アカデミー文学論集」は、未だ詳細確認できていないものの、おそらくは優れた学術的研究成果を年鑑のようにしてまとめたもののようで、18世紀の洋古書特有の目の粗い本文紙と小口側と地の側に余白を多くとった組版の特徴はもちろん、不思議な機械やら幾何学的な図解、古い時代のカリグラフィー文書や古地図の複写などが挿入されており、視覚的な面白さに充ちています。1冊毎に内容が異なるため、33冊の中から「これだっ!」と云うのを絞り込むその過程自体を楽しんでいただけかと思います。小店店主も詳しく見ていくのが楽しみなのだそうで。そんな時間があるかどうかはさて措き。
本日店に入荷するのは1960~70年代市民運動系のビジュアル冊子類6冊、レビュー小屋パンフや洋書の1本口、戦前図案関係資料3点など。
そんな中から選んだのが、『1886 PRINTEMPS』『COLLECTION J.CLAUDE FRERES』
と背に記された19世紀末フランスの生地の見本帖です。
堅牢に造られたファイルのサイズが縦53cm横35cmという大判で布を貼り込んだ台紙もほぼ同じ大きさ。厚さは11cm、貼り込まれた生地の点数は約470点に上ります。
生地は大部分が絹織物で、チェックやストライプを中心に、同色で文様を織り出したもの、ベルベットと絹平織りの混合、網状に仕立てた生地や、文様の上にビーズをふんだんに糸留めしたものなど、非常に手の込んだものが多いのが特徴。
これまで、フランスの生地見本では、綿織物では本格的な見本帖を10冊弱、ゴブラン織のプレートを数十点扱った経験はありますが、絹織物主体というのはほぼ初めて。しなやかさや光沢、発色などの点で、綿織物との格の違いは否めません。さすがは絹織物、なのであります。
ですがそれにも増して げにおそろしきは見本帖。何回見ても、いつまで見ていても飽きることがないばかりか見る度に発見があって、これほど雄弁な出版物は他にないと実感させられます。
今年1年、厳しい日々が続きましたが、こうした出会いがある限り、やはり簡単には辞めるられないなと思うのでした。
あ。この1冊、かなりの重量がありまして、今晩荷造りしてみてこれはちょっと持てない重さであると判断した場合、店頭でのご紹介は来年からとさせていただくやも知れません。こちらの商品をご覧になりたい場合は、お出掛け前に店までお電話でお問い合わせ下さい。番号は03-3400-3027。お手数をおかけいたしますが何卒よろしくお願いいたします。
■年内は本日12月27日(土)で仕事納め、新年初売りは1月5日(火)とさせていただきます。
今年も多くのお客様に支えられ、お教えいただいて、何とか越年できそうです。
この1年のご愛顧に、心より感謝申し上げます。本当に有難うございました。
自宅の窓の外から夜回りの人たちの拍子木の音と「火の用心」の声が聞こえます。寒さが厳しく感じられる2014年の年の瀬となりました。
みなさまどうかくれぐれもご自愛の上、よいお年をお迎え下さい!
■ついこの間、迎えたはずの2014年を、旬日を経て見送る今日となりました。
小店、2014年年内の営業日も数えるばかり。確実なところは本日20日(土)、25日(木)、27日(土)の3日間。これらの日はいずれも12時から20時で営業いたします。
23日(火)は洋書会歳末市のため、市場が終わり次第、店を開ける予定でおりますが、当日になってみないと時間の目処が立ちません。このため、大変申し訳ございませんが、この日にご来店下さる場合は、お出掛け前に必ず店までお電話の上、在席をご確認下さい。 03-3400-0327 で留守番電話に切り替わるうちはまだ不在、開店時間のご確認は23日(火)の当日、東京古書会館までお電話の上、日月堂をお呼び出し下さい。こちらの番号は03-3293-0161となっております。
毎度毎度ご不便をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。
■新年のご挨拶を目前に控えながら、信徒でもない人々までもがこぞってキリストの誕生を祝う国というのは、日本以外にどのくらいあるんだろう? と、そんなことに今まで疑問を持たなかった方がどうかしているというお話ですが、いま急に頭の中で疑問が渦を巻き始めました。思えば鵺のような文化や習俗に事欠かないのが日本という国なのかも知れません。
閑話休題。
小店店主もかくなる日本的顰に倣い、今週の1点目にはクリスマスにお似合いの小冊子を選びました。1850年にイタリア北部で設立されたワイナリー「GANCIA(=ガンチア)」が発行した英文の会社案内。1934年刊行のクレジットが記載されています。
発行当時、イタリアは云うまでもなくムッソリーニによるファシズムに支配されていたわけですが、同時代・他の全体主義諸国で政治的指導の元に行われた芸術文化の分野における方向転換-ロシアの社会主義リアリズムへの転換だとかナチスによる退廃美術だとか - がイタリアだけはほとんど省みられことなく、未来派やダダといった前衛から、アール・デコ等モードまで、一時も足踏みさせられたり後退させられることのないまま前進し続けたという希有な歴史をもつ国らしく、この15cm角程度の冊子も、シックで優雅で洗練された意匠をまとっています。
オフセット印刷をベースとしながらも、ほとんどのページで金色銀色をはじめとする特色印刷が重ねられており、とくにブドウの実と弦を意匠化し本文ページに配した装飾が利いています。圧巻はカーテンを引くかのように観音開きのページを開くと現れる見開き4ページ分のスペース。画像上段の右が観音開きを閉じた状態、下段見開きが開いた状態なのですが、図版として紹介される商品はわずか9点、中央見開きはただただイメージに訴えるという実に贅沢な紙面の使い方です。なるほど、余白を恐れていては高級に見えない!
がしかし、とするとですよ。余白のない当HP。問題大あり。
■フランス・マゼレール。単にこの言葉を「グ」の検索窓に入力すると、出てくるのはほとんど小店のサイト。柳瀬正夢をはじめ、戦前日本のイラストレーションに影響を与えたことが指摘されていながら、日本では一向に知名度回復がなされないフランス・マゼレールですが、そのマゼレールの『DU NOIR AU BLANC』が今週の2点目。タイトルには単に黒から白という意味だけではなく、夜から朝、悪から正義、資本家から労働者など、さまざまな含意を表すものと見えます。
マゼレールの本では珍しくA4より少し大きい上製本で、マゼレール自身による序文はフランス語とドイツ語の併記。本文にあたるページはマゼレール本らしく言語を全く伴わない木版画だけで展開されるもので、当書の場合は57図(全て片面刷)。
不思議な生き物が棲む豊な森。そこに目をつけた資本家が、大勢の労働者を動かして森を切り開き、都市を建設し、工場を建てる。都市化と過酷な労働の中で労働者は疲弊し、資本家ばかりが富む。資本家と労働者が敵対し、闘争が起こり、踏みにじられた弱者の中から自然へと回帰するものが現れる……といった感じで、見たところありがちな展開ではありますが、マゼレールの木版画は一見粗野でありながら幾重にも重なる摩天楼や労働者の群れ、機械の構造や資本家の表情など、表現力はかなりのもので、そのストーリーとともに日本で早くから受容されていたのも充分頷けます。
これまで不思議と足が早く小店から旅立ったマゼレールの著作なのですが、今回も是非、日月堂でくすぶらずに、よりよい場を得られますように祈るばかりでいる年末の日月堂あるじ でございます。
尚、当ページの更新も年内はあともう1回、来週末がラスト。来週木曜日の定期運送便で入荷予定の新着品については、次回までしばらくお待ち下さい。
■今週週末を待たずに更新します! と書いておきながら、結局週末になってしまいました。どうかお赦し下さい。早速ですが、久しぶりとなってしまった新着品のご紹介です。
資料会の大市は念のため2日間を予定していたものの、これはどうしても落札したいと思うようなものを見つけることができず、結局下見日だけで済みました。翌日は店のPCから落札状況を確認していたのですが、早い段階で落札品が1点確認できて以降、一向にデータが更新されず。最終的に落札品は1点だけで終わりました。情けない。
落札できたのは『ロンシャン』など、ル・コルビュジエに関する洋書と冊子10冊ほどを縛った1本口ですが、肝心なのはそこに混じっていたこの『10 рабочих клубов москвы』と云う薄い本。フランス語はもとより英語でさえあやしいところにロシア語です。云うまでもなくさっぱり読めません。完全にお手上げ。表紙に1932と発行年らしきものが記され、戦前のものであることは紙質やデザインから見ても間違いないものの、がしかしその年号の頃と云えばロシア・アヴァンギャルドから社会主義リアリズムへと転換する過渡期にあたり、二束三文に終わることも半分くらいは覚悟しつつ、がしかし化けちゃうかも知れないぞ、という可能性に賭けての入札でした。
ロシア語のアルファベットを自動翻訳のサイトにコピペしては検索した結果、タイトルは『モスクワの労働者クラブ10選』といった意味。このタイトルが示す通り、1920年代後半、革命後ソビエトの新体制プロパガンダのひとつとして建設が推進された「労働者クラブ」- 労働者組織毎に新たに建設された事務所兼文化施設(集会施設、図書館、劇場本娯楽施設等)、つまり、当時としては最新であり、かつ、国家が理想とした建築物についてまとめられた冊子様の書籍であり、なかでも、施設が集中していた首都・モスクワに実際に建築された労働者クラブから、特筆すべき10件を選んで解説したものだということが判明しました。発行は1931年8月、発行元はIzogiziとあり、確かなこととは云えませんが当時の体制に組み込まれていたIzoイゾー= 「教育人民委員会美術部局」の関連組織のひとつではないかと推測しています。
17cm角・180Pの冊子には、いかにもロシア・アヴァンギャルドらしいオレンジ色と黒とでデザインされたカバーが施され、扉と目次のページも同じ2色が使われています。本文はすべてスミ1色ですが、写真図版のレイアウトや黒い棒状のベタの使い方などにより、バウハウス叢書等と同様、1920~30年代らしい表現であると同時に、洗練された印象を与える仕上がりとなっています。
収録されている10の物件の内、5件はルサコフ労働者クラブ、プレヴェストニック・クラブなどコンスタンチン・メーリニコフによるもの。メーリニコフはロシア・アヴァンギャルド時代の建築家として筆頭に挙げられるひとりで、1925年のパリ万博ソ連館の設計で世界的にも注目された人ですが、当書所収のルサコフは、そんなメーリニコフのそのまた代表作と云われる建築物。この他、イリヤ・ゴーロソフのズーエフ労働クラブ、オルガ・ロザノーヴァのテキスタイル・クラブ、V.A.ヴェスニンなどの名前も見られ、取り上げられたテーマはどうやら粒揃いで物件別に詳細にテキスト有。このあたり、読む方が読めば面白い内容を含んでいそうな気もするのですが、断言は避けます。
この時代、ロシアの前衛的建築に対して関心を寄せる人たちが日本にも居て、チェルニホフの『建築ファンタジア』が邦訳冊子を付して売り出されたことをご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、今回入荷のこの1冊にも実は表紙の中側にその『建築ファンタジア』に邦訳をつけて販売したのと同じ「ソヴエト 書籍・新聞・雑誌 日本総取次 ナウカ書房」の水貼シールがあるあたりも面白いところ。このシール、貴重です。
さて、冒頭に記した「一か八かの博打」の結果ですが、どうやらこれ、「当たり」だったようで、市場にはそれでも出掛ける意味があると、またしても背中を押されてしまったようであります。
■うってかわって日本の明治の絵画の教科書。図版は全て木版刷りで、絵を描いているのは日本画壇の重鎮・橋本雅邦。明治30年代当時、図画で使う道具は筆と墨で、絵は完全に日本画のタッチ。松屋銀座での1月の即売会用に用意しているものですが、バラバラになっていたのをよくよく整理してみると1巻から8巻までが揃っていました。
筆でもって横に直線を1本描く。「きほんのき」以外の何ものでもない1ページ目に始まるこの教科書。当然、1から8に向かってどんどん複雑かつ詳細な絵へと変化し、つまり絵画的技法の難度としてはステップアップしていくわけですが、しかしこれ、巻数が若いはじめの頃のものの方が、より高度な絵に見えてくるのが面白いところです。何気なく描いた線のうまさ!それだけで見られる作品に仕上げてしまえる力量!画像にある雪だるまなんて、ちょっと描けないと思いませんか?
■今週はこの他『現代ユウモア全集』23冊、1950~1960年代の雑誌『時事世界』『アサヒグラフ』『主婦の友』などがまとまって明日には店に入荷いたします。
■この週末、また厳しい寒波の到来が予想されていますが、日曜日は選挙。1票の格差は一向に是正されることなく、さらに高松市では不正開票なんて云う民主主義に依って立つ先進国での出来事とはおよそかけ離れた事件まで露見して、しらけた気分にもなることは否定しませんが、しかしそれでも尚、平民にも、女性にも、等しく選挙権をと奮闘した過去の人たちのことを思えば、投票には行かなければならないと思います。この間、さまざまな考え方に接してきましたが、「ポリタス」というサイトで公開されている記事の多くには一読の価値がありました。とくに、
岩本沙弓『敢えて消費税という切り口で考える総選挙』
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は消費税に関する知見、圧勝が予想されている政党の体質、いま日本を覆っている空気について、多くの示唆を与えてくれました。リンクは張っていませんが検索ですぐに出てきますので、未読の方には投票に出掛ける前に是非。