■2012~13年初頭にかけてニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された現代美術展「東京 1955-1970」をひとつの契機として、日本の戦後アヴァンギャルド芸術に対する再評価の機運が高まっているのは周知の通りですが、小店では2006年の9月に特集目録「机上のK.K.氏」をウェブサイト上で公開、2009年には「事件を起こせ! 1950~1970s 戦後日本・前衛美術の青春時代」と題した特集目録を発行。実験工房、ネオ・ダダ、内科画廊、、ハイレッド・センター、グループ・音楽、日本のフルクサス、草月アートセンター、南画廊などにまつわる印刷物を積極的に扱ってきました。戦前の美術・デザイン関係が主力の小店ですが、実はこのあたりもまだまだ充実させていきたい分野のひとつとなっています。
今週の新着品2点は、こちら側の路線で久々の入荷となった2点。
表紙に1956 (昭和31) 年、電子音楽「7つのヴァリエーション」を共同作曲した黛敏郎と諸井誠によるグループ名『ars nova』が記された音楽会のプログラム。『ars nova』がこの音楽会のタイトルかと思うとさにあらず。「ars nova 前衛音楽の夕」と「電子音楽とミュージック・コンクレートの会」と二つのタイトルが併記されており、必然的に武満徹が参加、また、美術に北代省三、照明に今井直次が参加していて、俄然、実験工房色が濃くなってきます。
早速、昨年から今年にかけて開催された展覧会の図録『実験工房展 戦後芸術を切り拓く』での記載を確認しようと開いてみると、1957年5月、大阪の「ガスビル講演場」で開催されたこの音楽会については言及が見当たりません。この前後を確認すると、その代わり1956年に東京・山葉ホールで実験工房の主催により開催された「ミュージック・コンクレート 電子音楽 オーディション」、1957年3月に第一生命ホールで開催された黛・諸井による「第一回現代音楽の夕 アルス・ノヴァ」が出てきて、それぞれの内容、参加メンバーなどを当パンフレット比較してみると、「ars nova 前衛音楽の夕 電子音楽とミュージック・コンクレートの会」というその奇妙なタイトルの通り、東京でそれぞれ別々に開催された二つのコンサートを合体するようにして実施されたものだったことがうっすらと浮きあがってきます。
パンフレットに挟み込まれていたチラシの内の1枚は、“日本の現代作品をLPに→ミュージック・コンクレート 電子音楽を予約販売”とあって、武満の3作、黛&諸井の「7つのヴァリエーション」を録音したレコードの発売を謳ったもので、大阪でのこの音楽会、もしかしたらLP発売のプロモーションの一環だったのかもしれませんが、しかしそれにしても、北代の実験映画に関する解説と海外作品上映、黛・諸井・武満・北代・今井の揃い踏みによる質疑応答まで用意されていたこの音楽会、何とまあ贅沢なことであったかと感嘆するばかりであります。
■実験工房のメンバーが、総合的な空間を創出する“実験”のための格好の場としたのが大阪万博でした。今週2点目は1970年・大阪万博「鉄鋼館」で行われた「スペース・シアター」の英文パンフレット。この「鉄鋼館」は、武満徹が音楽監督を、宇佐美圭司が照明・レーザー光線による演出を担当した「スペース・シアター」を主体とする施設であり、二つ折のパンフレットに挟み込まれたペラ1枚に、スペシャル・ライブを含む上演演目がまとめられています。他に、鉄鋼館ジェネラル・マネージャーを務めた前川国男の挨拶、劇場やコントロールルーム、最新機器などの写真と紹介文等が掲載されています。
それにしても…「机上のK.K.氏」や「事件を起こせ! 1950~1970s 戦後日本・前衛美術の青春時代」。いま思うとちょっと早過ぎたかなと思わぬでもなし。ま、古本屋にはありがちなことではあるのだけれど。
■先ずはお知らせです。3月1日(土)は、開店時間がずれこむかも知れません。明朝はじめてお邪魔させていただくお客様のご都合とお引き受けするお品物の状況次第で、案外あっさり12時には開店している可能性もある一方で、大幅に遅れる可能性もないとはいえません。
このため、明日の土曜日は、電話 03-3400-0327 で在席をご確認していただいてからお出掛けいただければと存じます。またしてもご不便をおかけいたしまして本当に申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
■というわけで明日の朝に備えて今日は早く眠りたい。って、最近やたらに眠いのは春が近い証拠ということでお許し下さい。ともかく今週も駆け足で。
縦50cm横30cmほどの比較的小型のポスターが4点。この表現は1960年代のものに違いないものの、マークととも共通して記されている「OSPAAAL」とは何ゾヤ?とさっぱりその正体が分からないまま、チェ・ゲバラとカストロの顔が使われている部分があるのを手掛りに、おそらく左翼系プロパガンダであろうとの目測のみで落札。帰宅して調べるれば半世紀前くらいのことならたちどころに分かるのが21世紀のすごいところでありまして、OSPAAALとは即ち「アジア・アフリカ・ラテンアメリカ人民連帯機構」、スペイン語でOrganizacion de Solidaridad con los pueblos de Asia Africa y America Latino、英語ではOrganization of Solidarity with People of Asia,Africa and Latin Americaという長い正式名称をもつキューバの政治団体のこと。1966(昭和41)年に「第三世界における反グローバリゼーション、反帝国主義、反ネオリベラリズム闘争の支援と人権の防衛を目的」に設立された組織で、第三世界の闘争をテーマにしたポスターを大量に発行していたというお話がwikiに出てきます。
明らかに使用された痕跡の残るこの4点、画像右から2点目を除く他の3点は、OSPAAALが発行したポスター324点の画像をアップしているイメージアーカイヴ→「こちら」でも紹介されていて、画像左より、銃を構えた兵士のポスター(パレスチナ解放機構)と押しつぶされたような星条旗を描いたポスター(ヴェトナム)との2点は1968年、一番右側のベネゼイラのポスターが1967年に制作されたもので、OSPAAALのポスターの内でもごく初期のもの。右から2番目、チェ・ゲバラとカストロの写真を使ったポスターは、この4点中唯一、OSPAAALが発行していた機関誌『Tricontinental』のマークが入ったもので、発行年度の調べはつかなったのですが、ほぼ間違いなく同時期のものと思われます。
右に向かって大旋回中のただいま現在のNipponで、果たして買おうという人がいるのかどうかあやしいばかりですが、となると尚のこと、このテのものは意地でも買い続けなければと思いを深くするのでありました。
あ。明日は持ち歩けないので、店に入るのは来週となります。
■消費税増税前の動きなのか、もうずっとドタバタが続いているので、楽に商品にできるものをと思って落札した「水貼りシール」のファイル1冊。ほぼ全点、札幌の商店・企業のもので、ロバパンとか電波塔とか道博とか牛乳石鹸とか、可愛かったり珍しかったりするもの多数!と喜んだのもつかの間。ファイルの台紙にしっかりビシッと貼りついてしまっているのが過半。うう。こうなると、ファィルを分解してページ毎に水に漬けこんで数日、浮いてきたのを新聞に挟んで重しをして一週間…ととんでもなく手間ヒマがかかることが判明いたしました。この忙しい時に仕事を増やしたファィル一冊・約300枚。こちらは店頭入荷まで数週間から数カ月といういやな予感でいまいっぱい…。
■今週はこの他、雑誌『主婦の友』昭和20~30年代発行の約40冊、美術関係資料6本、明治末~大正・昭和初期の美術・工芸関係の教科書約40冊、古典文様の木版図案集2冊などを落札。但し、店には来週木曜以降の入荷と、しばしお待たせいたします。悪しからずよろしくお願い申し上げます!
■各地で被害が相次いだ先週末の大雪、みなさま無事にお過ごしになられましたでしょうか。
身近なところからも、駐車場の屋根が落ちたとかフェンスが壊れたといったお話も聞こえてきております。被害にあわれた方々には心よりお見舞い申し上げます。
2月も下旬に入って来週には気温の上昇も予測されているようです。春は確実に近づいてきています。
■本日、どうにも眠たくって仕事になりません。新着品は書誌データにあたるものだけをざっくりと。1点目は『新形 手拭包見本』。明治40(1907)年、東京にあった「西村永寿堂」オリジナル・デザインの手拭包(=上掛け紙兼袋のような印刷物)の見本帖。小店のお客さまにはご存知の縦長のデザインを中心にした全162点=162図案の現物を綴ったものです。
おそらくは贈答品にかける「のし袋」に準じるといった儀礼的な縛りがあるはずですが、いまから100年以上前のデザインは想像以上に自由闊達。具象から抽象、ベタから洒脱、端整からキッチュまで見事なまでに多種多様。また、全点フルカラーとなっている印刷手法は何度眺めても何だか判然としないのですが、一見木版刷りのようでいて色ののり方はむしろ石版刷に近いような仕上がりです。
和のデザインに興味をお持ちの方には必見!
日本のうつくしきしきたりをたしなみとしたい方にも格好!!! のお品物なんですがね、こうした品物を好んでお求め下さるのはもっぱら外国のしかもご同業の方たちでありまして、あいこくあいこくゆうようなわが国の方々の視界にこーゆーものは一向に入っていかないもののようで。
■2点目は『泰西訓蒙図解』。明治4(1871)年に文部省が発行したもので、本来なら下巻と併せて2巻ものですが、今回入手叶ったのはあいにく上巻のみ。稀覯本ゆえにデジタルデータを公開しているとこもあるようですが、木版刷りに彩色した挿画の温かみなど、現物のみが持ち得る味わいを充分備えています。
もっと詳しく、さらに深くお知りになりたい方は、当書をもって「欧米文化を果敢に摂取する明治日本人のエネルギーを伝えるものだ」とする玉川大学教育博物館のサイトを是非ご参照下さい。→玉川大学教育博物館
欧米文化の学ぶべき点から近隣諸国との関係まで、もはや ほとんど頓着しなくなってしまったいまの日本では売れるアテのないこういうものをもーれつにあつめてどんどんがいこくに売り払ってしまいたい気持ちでいっぱいですいまのわたくし。
■4月1日に消費税の税率がアップするのにともない、小店も消費税を5%から8%に引き上げさせていただきます。
近いうちにご案内させていただきますが、現在、店頭商品価格の表示方法検討いたしております。ここからは内幕の話ではありますが、店主が悩んでいる理由など あいすみませんがちょいとひとくさり。
店内商品については本体価格表示としたいところだけれど、委託販売先やインターネット検索サイト「日本の古本屋」は内税。従って全て内税に統一するのが当然ベスト。
がしかし来年10月、消費税率10%になったらまた同じことをやらねばならないとなると、正直ここは本体価格表示にしておきたい。
ここでまた、「がしかし」の登場で、いずれにしても、委託販売先の価格表示とネットアップ分は内税にする必要は残る …… 2段階での今回の消費税アップ、これって実は小売店には本当に泣きたくなるようなムダがいっぱいです。
何しろですよ、小店に限らず小売販売では、基本、商品1点ごとに価格を書き直さねばならないのです。
計算式=現在の表示価格÷1.05×1.08で本当に100円単位のものから価格を変更するのか! などなど、決めていかねばならないことがいっぱいで、あ。めまいが。お。頭痛まで…といった調子。
円単位までお預かりする場合には、今度は釣銭の両替にかかる時間 - 何しろ表参道近辺の銀行では両替に30分並ぶのも稀ではなく - などまで考え始めると憂鬱の種は尽きません。
ここ数日は絵ハガキなど、厚さにすると1m分くらいだとしても、数からするともぉ~のすごい数になる細かい紙モノが、視覚に入ってくる度にガックリ肩を落としております。
なんてやってた今週、「消費税導入に伴う家賃の値上げ」の通告が。う。忘れていて欲しかった。あり得ないけど。
諸々ただいま熟考中、とはいえ今客様から消費税分、お預かりさせていただくことに変わりはございません。それもまた目先のことだけにじゃぶじゃぶ使われてしまうことを考えると残念でなりませんが。
というわけで、お取り置き商品のお引き取りは3月中がお勧めです……なんて消費税のことを考え始めたら、今度は途端に眠けがふっとんでしまいました。ただいまTVではショートトラック男子5000m決勝LIVE放映中…も、終わっちゃた午前4時。