■GWも「あ。」という間もなく過ぎてしまいました。小店店主もぼちぼち店の仕事を再開しておりまして、先日来、新たに店に入ってきた古い和紙の染紙のヤマと格闘しております。
濃紺から利休鼠までグラデーションを描くように染められた和紙の中には鈍色に渋く光るものなどもありその色と質感とにほれぼれとし、シボを寄せた和紙は重ねた時に現れるオブジェ感が出色だし、染に入る前のまだ白い和紙が塊となった時に見せる端整な美しさはまた格別、なのだけれど、こうして語ったところでそう簡単に伝えられるはずもなく… あぁ~しまった~ぁ。画像に撮ってくればよかった~ぁ。がっくり~ぃ。というあたりもまだGW明けっぽいね。なんて甘えたことを云ってても仕方ないので新着品にまいります。1点目は連休前からの続き、全連大市からお越しいただいた落札品の内の一番の大モノ。
■こちらの品、「全連で一番の大モノ」というだけでなく、よく考えてみると今年になってから小店が市場で落札した品物の中でも一番の大モノです。ま、当然か。
北澤楽天と云えば『時事漫画』『東京パック』などで明治後期より活躍した日本の風刺漫画界の草分けのひとり。この「風刺漫画」というのが厄介なところで、その漫画が書かれた当時の事件や政治や社会のことが分かっていないと風刺している内容がさっぱり分からないしちっとも面白くない。従って、時代に左右されない普遍的テーマを扱った風刺画家や、相当の腕前の画家以外、時代が経つのと並行して評価が難しくなる…というのが一般的な傾向とされています。それを踏まえた上で、北澤楽天をどう評価するか。大体、北澤楽天と云って、知ってる人の方が少ないし、極一部の人たちであれいまでも人気があるのかどうか、或いは研究してい人がいるのかのかどうかも分からない。とすると、果たしていま売れる要素がどれだけあるというのか甚だ疑問 … 云ってしまえばマイナス要因ばかりが頭のなかをグルグル回っているというのに、見れば見るほど惹かれる何かがあって簡単に見送ることができないという、非常に困った状態に置かれた中での入札でした。多分、この時に考えていたマイナス要因というのは大きく読み誤ってはいないと思われます。やれやれ。
要は、徹頭徹尾、店主の個人的嗜好によって仕入れたものだということでありまして、それ以上何も云うことがない。がしかし、本当に何も云うことがないのかというとそれはまたビミョーなところでして、例えば、描かれている人物のほぼ半数が外国人の風貌であること、出て来る少年給仕の制服がコロニアル風であることなどから、具体的には戦前の上海といった或る特定の時代の、特定の空間の、風俗を描いたものではなかろうか、とか、25点全点ビリヤード - 戦前の日本では「憧球」と呼ばれて人気があったモダンな遊び - である点では当時の都市風俗を活写した画集といって差し支えないだろう、といった辺りまでのことは云わせてやって下さい(とくにいま仮に「上海」といった、このあたりのことはまだ調べが必要な部分です)。
そして、何と云ってもうまい。実によろしい。人の表情、動作、シーン、どれもが全て、見ている人間まで上気嫌にさせてくれて。時代が暗転する直前の一瞬をとらえて描かれたシーンは、平穏でありユーモラスであるほど、胸に迫ってくるものがあります。
画面は25点全て22.5×29.5cmの同一サイズ、全点ウォーターマーク入りの洋紙にグアッシュで描かれた作品で、1点毎に署名とタイトルの書き込みがあるものを、経本仕立てで1冊にまとめている、といったところが基本情報。経本の表紙の題箋部は空白でタイトルはなく、画像中に記した北澤楽天 肉筆画「憧球画集 25連作」は小店での仮称です。
「うまい」という肝心の点については、百聞は一見に如かず、可能であればどうぞ店頭でご覧下さい。
■ここのところ、日本の木版の図案集の入荷が続きましたが、久しぶりに海外の、しかも珍しいことにドイツの図案プレート集が入荷しました。
『Kunstgewerbliche Schmuckformen für die Fläche』= 美術工芸装飾意匠集。無刊期ですが調べてみるとどうやら1910年前後の発行。本品の扉の裏には「昭和5年 丸善ニテ購フ 全30葉」と鉛筆の書き込みがあり、上製のポートフォリオに書き込み通り未綴じ30葉が揃って収められています(各葉プレートナンバーを記した小さなシール貼り込み有)。
彩色は同時代のフランスに見られるのと同様に、ポショワールによるものですが、カラフルなデザインには東欧風ありロシア調ありと、お隣のフランスと比べて違いがあるのも一興です。
それにしても、昭和5年=1930年当時、こうしたデザイン資料を国内で入手することができた日本という国は、極東にあって何と恵まれた歴史を歩んでいたことでしょう。これまた、それに続く歴史と、さらに、現在進みつつある状況とを思うと、何だかなあという気持ちにならざるを得ないのでありました。
それにしても、abeという人は一体何がやりたいのか。とうとうNYタイムズまで安倍政権が進めようとしている憲法解釈についての批判を掲載しています。http://www.nytimes.com/2014/05/09/opinion/japans-pacifist-constitution.html?partner=rssnyt&emc=rss&_r=0
■今週は先にも述べた和紙のヤマの他、欧文タイポグラフィの美の基本を示す1968年発行・限定版署名入り ヘルマン・ツァップ著『Manuale Typographicum』、矢内原伊作旧蔵書、戦前アメリカに移住した日本人・犬養三郎旧蔵の証券・小切手類、薄冊ながら染布の見本帖、古いエンブレム見本9点などが明日には店に入ります。
■今年のゴールデンウィークは、「やっと明日から始まるよ」という方もいらっしゃると思いますが、小店も明日5月3日(土)より7日(水)まで、お休みを頂戴いたします。
この間は、店の営業、インターネットによる通信販売ともに、業務を休止いたします。
またメールでのお問い合わせに関するご返信も、この間は不定期となります。
ご不便をおかけいたしまして誠に恐縮に存じますが、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
■がしかし。先週もお伝えいたしました通り、目黒通りのアンティークショップ・ジェオグラフィカさんで、同店の10周年を記念して開催されている企画「Antique Market」に小店も参加しておりまして、後半戦の少なくとも2日程度は顔を出す予定です。
詳細は右のアドレスをクリック! → http://geographica.jp/
「Antique Market」はテーブルウェアやファブリックなど雑貨を中心とした西洋アンティーク専門店約15店が出店。ジェオグラフィカさんの1Fと2Fに並べられた多彩な商品は、いずれもそれぞれ目利きの選んだ良質な商品ばかりです。この機会に是非、お出掛け下さい!
■今週は、新着品のご紹介も一回お休みさせていただきます。
5月8日(木)には店の営業を再開、大市の続きそのほか当サイトの更新も来週末には再開いたします。みなさまどうかよい休暇をお過ごし下さい!
■お休みの日の並びがいまひとつの感はありつつも、今年も日本列島にGWがやってまいりました。小店も5月2日(金)より7日(水)まで休業させていただきます。この間は店の営業、インターネットによる通信販売ともに業務を休止いたします。またメールでのお問い合わせに関するご返信も、この間は不定期となります。ご不便をおかけいたしますが、ご了解いただけますようお願い申し上げます。
来週4月29日(火)並びに5月1日(木)はいつも通り12時から20時で営業いたします。ご来店のほど、何卒よろしくお願いいたします。
■さて、その間ずーーーっと休んでいるのかといえばなかなかそうはいかないもので。明日4月26日(土)より5月6日(火)まで目黒通りのアンティークショップ・ジェオグラフィカさん → http://geographica.jp/ で同店の10周年を記念して開催される「Antique Market」に小店も参加いたします。4月30日(水)はじめ、会期中2~3回は会場でお客さまをお迎えできればと思います。30日以外はまだはっきりいたしませんが、在席予定が決まったところで随時ジェオグラフィカさんにお伝えいたします。
この「Antique Market」、雑貨中心に西洋アンティークを専門とする業者15店以上が思い思いの商品を持ち寄って軒を連ねるいわば屋内型の蚤の市。お買い上げの方へのプレゼントや特別講座から、館内にあるカフェ&レストランでの記念メニューの提供まで、10周年に相応しくお楽しみも盛りだくさん。この機会に是非、お出掛け下さい。
■もうひとつお知らせ。今年1月、西荻窪で開催され、あまりの盛況のため、ゆっくり見られなかった方も多いソヴィエト・東欧のマッチラベルの閲覧が、5月7日(水)から5月11日(日)の間、予定されています。今回は事前連絡による予約が必要とのこと。ご連絡は「ふくべ書房 カーキンケン」さんまで、メール rarebooksfukube@gmail.com でお願いいたします。今度はゆっくり見られる…かな?
■さて、今週の新着品は全連大市での落札品より、その第一弾です。
恩地孝四郎のモダンなリノカット版画 - 茶と黄色の2色刷 - が表紙を飾る雑誌『風 詩・版画 その他/月刊』第3号。昭和3年龍星閣主人・澤田伊四郎を主宰者とし、藤森静雄、恩地孝四郎などを同人とし、平塚運一、川上澄生、深澤索一、そして藤森、恩地らの木版画オリジナル11点を収めた、いまとなっては何とも贅沢な同人誌。しかも、オリジナル版画の内、実に6点-表紙を含めれば7点-を恩地孝四郎の作品が占めています。恩地の作品を含む詩文掲載ページも天地に太い罫線を配置し、大きめの文字でゆったり組んだ、いかにもこの時代らしいデザイン。
店に入った22日にお客もさまの目に留まり、予定通りいけば29日には小店から再び旅立つこととなっているこの1冊、小店店主、初見での落札で、ほとんどビギナーズラックというべき幸運に恵まれての落札だったと思います。そして、複製品でありながら出現することが珍しく、美術品としての性格を帯び、名前があり、完成度が高い - つまり、売りやすい要素を何重にもまとったこうした商品に限って、再入荷のチャンスはほとんどないということは、この18年の間に痛いほど学んだできたことのひとつではあるのでした。
■『詩と版画』が休刊になり、その後継誌として現れたのが今週2点目となる『港 詩と版画 四の巻』(昭和2年)。最初にご紹介した『風 詩と版画』は、この『港』の1輯から5輯が発行された後に出された後継誌として位置づけられるものです。
こちら『港』に収められたオリジナルの木版画は川上澄生と恩地孝四郎の作品がそれぞれ2点ずつ。恩地の「裸形のなしみ1」「裸形のかなしみ2」は、ともに大正初期の雑誌『月映』のために制作された作品の後刷りですが、『月映』の相場が個人コレクターには厳しいレベルにあることを考えると、こちらはぐっと現実的。川上澄生の作品は、正直を云うと小店店主の好みではないのですが、「器物」と題された画像中の1点はまずまず。装丁に使われている木版は深澤索一によるものです。こちらも初入荷で、こちらはいまのところ行き先未定であります。
■3点目は平安堂蔵版、杉浦非水著、多色刷木版画・金版彫刻画プレート全50葉揃、外箱・スレップケース完備、大正10(1921)年初版『非水一般応用図案集』。この図案集、日本のグラフィックデザイナーの草分けで、この当時からすでに名を馳せていた非水の図案集とあって、よく売れ、かつ、よく使われたせいなのか、プレートが少ない場合でも数枚、抜けていたり、外箱 - 題箋が木版刷りなのであるとないとでは評価が違ってきます -がなかったりと、 完本で残っているケースは案外稀。アール・ヌーヴォー調を主潮としながら、アール・デコの要素も随所に取り入れたデザインがいかにも非水らしい作品集です。
図版50プレートの他、著者による「巻頭の言葉」、木版彫刻、木版手摺、金版彫刻などを担当した職人名をクレジットした二つ折り・4Pの扉付きとなっています。
■全連大市の落札品では、まだ大物が残っておりまして、来週以降にまたご紹介させていただきますが、来週火曜日にはギルバート&ジョージのフリップブック2冊、九五式練習機などが写る戦中写真アルバム2冊、デザイン関係専門書10冊、さらに、戦前もしくは戦中のものと思われる子供の紙細工作品1箱分が入荷、また、人文系を中心とした書籍ダンボール3箱について明日より査定に入ります。
ともあれみなさま、どうか楽しいゴールデンウィークをお過ごし下さい!