■12月も半ばを過ぎ、今年もあと2週間ほどを残すばかりとなりました。年内、店の営業日は19日(土)、24日(木)、26日(土)、29日(火)の各日12時~20時となります。来週22日(火)については市場から戻り次第開店の予定で、おそらく夕方からの営業となろうかと存じます。大変申し訳ございませんが、22日ご来店の際にはお電話で在席をご確認の上でお越しいただければ幸甚に存じます。毎度ご面倒をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
22日は洋書会の歳末大市、25日は今年、その名称と日取りが完全に合致した明治古典会の「クリスマス大市」。例によって市場と金融機関各所とを半ば綱渡りのようにして駈けずりまわる師走です。(-“-)
■さて、今週は真面目に新着品のご案内を。画像2点をアップした今週は、いずれも明治の木版ものです。画像1点目は木版刷りの優れた図案集の版元として夙にその名の知られる芸艸堂の図案専門月刊誌『美術海』。今年7月には小店も扱うことになった『新美術海』の先行誌です。
今回入荷したのは①巻36~巻40 、②巻41~巻45、③巻46~巻50、④巻51~巻55、⑤巻56~巻59という①から⑤の合本5冊。雑誌単体としてみれば36巻から59巻までの24冊分と云うことになります。このうち③と④は各巻表紙も一緒に綴じられていますが、他の3冊は表紙欠け。がしかし、本文にあたる片面刷りの木版図案については全巻全頁揃っています。1冊あたりの図案収録数は20図。24冊なので現在手元で見られるのは480図。
『美術海』はいまから119年前の明治29 (1896)年創刊、65巻を発行した後、明治35年には『新美術海』へとバトンが渡されました。今回入荷した24冊は、ほぼ後半の号になっているわけですが、先に『新美術海』を扱った際の印象からすると、こちらはずっと古典的な趣き。明治時代、どの程度のスピード感で時代が変わっていたのか、実際には全く分からないわけですが、この2つの専門雑誌に現れた意匠の異なりは、5~6年の間に見事に一新されたデザイン感覚を反映した
のではないかと思います。
さて、この『美術海』ですが、こちらのサイト → http://mag.japaaan.com/archives/24248 によれば、「スミソニアン・ライブラリーでとっても嬉しいデータが無料ダウンロードできることを知りました!」と紹介されています。そうです。タダです! ダダでダウンロード可!何も日月堂で買う必要なんざございません。そういえば、小店がかつて扱った『浮世絵文様』も「わぉ刺激的すぎ!江戸時 代の浮世絵に描かれた伝統文様が無料ダウンロード公開!」というタイトルで「アメリカのクラーク美術館(Sterling and Francine Clark Art Institute)が所蔵しているものをアメリカの団体であるインターネット・アーカイブが無償で公開しています」と無料ダウンロードのサイトを紹介し ている方がいらして、こちらにはわざわざ小店のリンクまで貼り付けられております。世はなべてタダの時代。日本人が「うわぁタダだってよいい時代だね え~」なんて喜んでいる間にも『浮世絵文様』も速攻で海の向こうのおそらくはコレクター氏のもとへと買われていきました。美術館・博物館に収蔵されたとい うことは、評価が定まったということ。つまり、評価が上がることはあっても下がることはまずない、ということですね。さて、ここで質問。無料ダウンロードできるのを喜ぶのと、無料ダウンロードの需要があるような商品そのもの(もちろん、デジタル画像と木版刷とでは、マチエールが絶対的に違います)を買うのと、どちらが賢いのでしょうか?さあ、みんなで考えよう!\(^o^)/
*ちなみに。ミュージアム・ピースといったところであくまで複製品、しかも小店で扱える木版図案集クラスであれば、浮世絵初刷りなんかとは比べようもない 低価格、個人で十分買える範囲のお値段です。今年7月に入荷した『新美術海』は翌週にはシカゴとロンドンへと旅立ちました。『松竹座ニュース』と神原泰装 丁本はパリに、『南方戦線戦績視察写真帖』は香港に、草木染関係の書籍は4冊まとめてイタリアへ、『蒼ざめた童貞狂』はドイツへ、長谷川潔の版画が表紙を 飾る雑誌『仮面』はアメリカへ。日本は豊かだとか美しいだとか云うお人は一体何を見て云ってるのかさっぱり分かりしませんなあ。
■2点目も同じく木版もの。薄手の和紙に多色刷した1枚もので、輸出用の日本茶の茶箱に糊付けされて使われた商標と云われるものです。画像中、縦に反復図案が刷られているものは、封緘用ではないかと思います。明治期につくられたもので、浮世絵の職人たちが制作に関わったとも仄聞しますが、あくまで商用の消耗品と云うこともあってか、彫りも刷りも雑駁な印象。ですが、日本と中国を折衷したような図柄や色使い、版ズレの具合など、例えばエピナル版画など、19世紀西欧の大衆版画に通じるところもあって、これはこれで味わい深い、また、興味深い紙モノです。
■オリンピックのエンブレムデザインを巡って、18日、外部有識者会議がその欺瞞の一端を発表しました。以前お知らせした平野敬子氏のブログではその間にも克明な記録を伝えてくれました。更新されたブログを読むたびに、本当に頭が下がります。最新の更新は「022 願い」です。例えば安保法制について、例えば辺野古について、せめて願い続けること、願い続けると伝え続けることを、しなければいけないなと思っています。
■お客様のお宅でご蔵書搬出から始まった今週、明年1月20日にスタートする「銀座 古書の市」の目録色校チェック、同じく「古書の市」会場用商品の準備にお手伝いのお二方と一緒にまる二日、水曜日にはプリンターが壊れ買いに走り、資料を慌てて発送し、週初めのお客さま以外に3人の方々からお預かりしていたご蔵書を仕分けし封筒をつけリストを添付して市場に出品、市場ではその応札状況を確認し ながら小店用の仕入のため入札を並行して進め、久々の大量落札15点也を確認しつつ応札なかった品物を集めて運送手配を済ますと、夕刻、今度は五反田の市場に滑り込み今度はこちらの市場でまた入札 …… と誠に「師走」に相応しいアタフタの一週間でありました。「師」と呼ぶには全く相応しからぬ私もしかし人の子。疲労困憊であります。もうへろへろのてろてろであります。よれよれともいえましょう。来週もまた、 お客様のお宅からスタートであります。よれよれからぼろぼろになりかねません。久しぶりの大量落札の中にはそれはもう一刻も早くご紹介したい品物もいっぱいございます。がしかし、今晩中にこ れ以上働くのはむ、むむ、むりむり。幸い、落札品の店への運送も来週木曜日に遅らせてもらいました。日本人がメモ書きを残している戦前海外レビュー公演のパンフレット類、谷川俊太郎作の放送台本を含む台本類、小林薫の記名含む唐十郎台本3点、ゴードン・クレイグによる木版刷の肖像画集、現物によって構成された 織物関係資料3点、資生堂社内資料、航空機写真帖、タバコに関する博覧会写真帖、茶箱掛絵、松竹座他戦前映画館の週報、美術海(元版合本)などなど、いやはやもう「うわあ。」という落札品のやま。どこから手をつけるべきなんだろーかというところから熟考いたします。どうかしばしのお待ちをお願いいたしま す。がしかし支払は待ったなし。そこのところが大モンダイ。
■羽振りのよかった当時の ほるぷ出版が、全力投球して復刻した絵本シリーズが、クリスマスに向けてぼちぼち動いています。比較的よく見るオズボーン・コレクションより、ちょっと珍 しいベルリン・コレクション、そして、相変わらず人気のマザーグースのシリーズに目を留める方が多いようです。古いヨーロッパの絵葉書から、クリスマスと 新年のグリーティングカードを選んでいく方たちも。ゆっくり品定めしていただけるように土曜日にはもう少し店内を整理しつつ、みなさまのご来店をお待ち申 し上げる所存であります!
そのためにも。今日のところは「おやすみなさい!」
■週明け更新!と云ったお約束を反故にして、定例の更新日を迎えてしまいました。その代り、月曜日はジェオグラフィカさんに納品に行ってまいりました。そんなお話は画面左上の「営業日案内」をご覧ください。
■というわけで、今度こそ新着品のご紹介です。
ご存知、「フランスの生地見本帖」が久しぶりに入荷しました。こちら、「大きい・重たい・買ってどうする」と云う売れない条件を三拍子備えておりまして、実際、売れるのは極まれなこと ―― とこれまで何度も学習してきたはずなのに、市場で目にするとついついムキになって落札してしまう商品の筆頭であります。今回はそれが5冊も!一挙入荷です。何しろ5冊一括での入札だったので、まとめて落札するしかなかったというわけです。
あ~あ。また買っちゃった。商人としての私が、これはいつまで抱えることになるのかねえといささか鬱々たる気分に見舞われる一方で、しかしあくまで個人としての私にとって、見ていてこれほど楽しいものは他にそうありません。だからムキにもなるわけで困ったシトですよ全く。
現在手元に置いて眺めているのは5冊中で最も薄くて軽い1925年版。縞模様の生地をまとめたもので、少し格子柄も混じります。いまからちょうど90年前 のものですが、生地のデザイン・色彩感覚などに古臭いところは一点もなく、むしろいまよりずっと多様で目を見張るばかり。ああ、こんな生地があったなら シャツのひとつも仕立ててみたいと思うもの、一つや二つではございません (と云ってもシャツのオーダーメードだなんて素寒貧の古本屋にとっては夢のまた夢) 。
最も薄いといっても背の厚みは4.5cmあり、貼り込まれている布現物 (ほとんどが8.4×11.5cm) は497点にのぼりますので、厚みから見て、他の見本帖には1冊に軽く700~800点の生地現物が貼り付けられているものと思われます。
5冊にはそれぞれ1910年代半ばから1920年代の半ばまでの年代が記載されており、100年近い時間を経てきたものと見られますが、生地は多少黄ばん でいるものが混じる以外、時間を感じさせない良好な状態。見本帖からはがして洗って乾かしてパッチワークにしたりテディーベアつくったり、クリスマスに向 けて1冊いかがでしょう?-ああ。我ながらお粗末すぎる「売り言葉」。かくしてまた抱えることになる日月堂であった。
■こちらもフランスの産物、パリ万博を記録した書籍です。1925年のいわゆる「アールデコ博」、「近代生活における芸術と技術」をテーマに、モダニスムを色濃く反映しつつ第二次世界大戦に向かう社会を表象した1937年のパリ万博と比べ、小店としてはあまり見てこなかった1900年のパリ万博もの。 wikiによると、グラン・パレとプティ・パレ、そしてアレクサンドル3世橋が新たに建てられ、当時世界最大となる高さ100メートルの観覧車「グラン ド・ルー・ド・パリ」を一般公開、動く歩道が登場し、エッフェル塔にエスカレーターが設置されたのもこの1900年の万博でのこと。また、アール・ヌー ヴォー様式を前面に押し出す契機となったという点でも、本来なら見落としていてはいけない博覧会です。
入荷した『L’EXPOSITION DE PARIS 1900』はおそらくは同名タイトルで発行された3巻本のうちの1巻目。ほぼ1mの長さに紙をつなぎ印刷された会場全体のパノラマ図版や本文随所に挿入さ れる建設中の現場写真、パヴィリオンの細密な完成予定図、ゾーニング、象徴的な景観計画に関連する図版、建設現場の労働者の過酷な仕事を描き出した挿画など、構成要素から見ると1巻目はなかなか魅力的です。
日本についてはわずかに芸妓の写真がある程度で、中国や韓国と比べてその扱いが小さいのは、フランスの領土的野心の現れか、そのあたりについては自分の勉 強不足を痛感します (ちなみに。1866年に仏韓間では丙寅洋擾が起こり、中国では1849年上海にフランス租界が設けられ1900年には小拡張がなされています)。
絢爛とも表現できそうな表紙はリトグラフですが、本文内に挿入される図版はほとんどがスケッチに基づくモノクロの絵画。記録としての弱さは否定できませんが、記録者がどこにより注目していたかという点についてはむしろ見分けやすいと云えるかも知れません。モンダイは……縦37cm・横28cmと大きくて重 いということです。大きくて。重い。こちらは2条件を揃えていると。はは、はははははははは。
■この他、明日には ほるぷ出版の復刻洋書絵本「ベルリンコレクション」、戦前渡航者の記録スクラップブック3冊などが入荷。「フランスの生地見本帖」明日には5冊がドドンとキャビネット上に登場の予定です。
■腹ふくるる思いのすることがあまりに多い昨今。今週はどうしてこうなるのか・どうしてこんなことがゆるされているのか、私のオツムではもう全く理解できなかった話題ふたつ。一番の不思議はそれでも上がったと云う支持率。
http://lite-ra.com/2015/12/post-1746.html
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/170793/1