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17/07/29 ポスター! ポスター!! ポスター!!!

 ■あっという間に一週間が過ぎ、今週の更新は先週からの続き、件のポスターのご紹介です。
新規入荷は13点。いずれもかなりの大きさがあって店内での撮影を断念、頼もしい先輩のような後輩お二人の手までお借りして、ようやく撮影することができました。夜鶴堂さん、公文堂さん、有難うございました。この御恩はいつかきっとどこかでお返しします。お返しできればな。と思っております。
それはさておき。
「このサイズのポスターを飾れる壁面のあるお宅が、果たして日本にどれくらいあるのだろーか」と甚だ不安ではありますが、しかし1900年代ひとけた台から1930年代というポスターの黄金時代に、その中心都市のひとつであったパリ=フランスでつくられたオリジナルのポスターが、日本でこれだけまとまって出てくることなど相当に珍しいことであり、こうなると懐具合など気にしてなどいられないのがこの商売なのでありました。
ゆとりあるお客さま向けの商品を扱う業者にゆとりなし。やれやれ。
と、さんなことも さておいて。
1点目の写真は古書会館での撮影中の風景。このHPも随分ながく続けてきましたが、この種の写真を使うのはこれが初めてではないかと思います。
ちなみに、この時撮影していたのと同じプジョーのポスターは下記のアドレスでもご覧いただけるかと。但し、小店のはオリジナル。
https://www.pinterest.jp/pin/597782550510965286/

 
さて、モンタイのポスター13枚ですが、ひときわ目をひいたのが画像でご覧いただく「CITROEN」のポスターと、カッサンドルが描いた 「GRANDES FETES DE PARIS」、日本語で「大パリ祭」とか「大パリ観光週間」などと訳されるパリ市のイヴェント週間のポスターでした。
迂闊なことにサイズを計ってくるのをすっかり失念していたのですが、2点ともに短い辺でも私の首ほどまでありそうな丈、長い辺は確実に私の背丈を超えてお ります。でかい。ともかくでかいのです。しかも13点内12点はほぼこれに近いサイズ。全てキャンバス生地で裏打ちされていることもあって、丸めてひとつ にまとめると重量もなかなかのもの、土管でも持っているような具合になります。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが。そうなんです。相当厄介なもの を仕入れてしまったのであります。またですか。ええ。またまた。

■先ずはカッサンドルによる「GRANDES FETES DE PARIS」
天地左右のセンター周辺に4ケ所ほど、マージン部分に2ケ所ほどの補修があります。画面内の4ケ所の補修は、欠落していた部分をポスターの紙質に近い白い 洋紙で裏側から貼り込んだもの。馬を描き出している部分が複雑なデザインの一部であったことから、幸い、目立たずに済んでいます。
ノール・エクスプレスやノルマンディ号など、おなじみカッサンドルの代表作に比べると、彼の持ち味が薄く感じられるかも知れませんが、フランスで発行され た図録『A.M.CASSANDRE OEVRES GRAPHIQUES MODERNES 1923-1939』(P.102  No.86)、東京都庭園美術館の図録『ポスター英雄時代の巨匠-カッサンドル』(P.70)などでは当作1点が1Pで紹介されるなど、「知る人ぞ知る」 カッサンドルの作品です。
それにしても、まさか自分の手でカッサンドルのオリジナルのポスターを扱うことになろうとは。金輪際あり得ないと思っていただけにこれにはびっくり。


 ■ポスター画像2点目は一旦カッサンドルを離れて「CITROEN」のポスター。文句なしの1920年代アール・デコ様式。
作家はPierre Louysと云う人で、あのピエール・ルイスとは異なり、長らくプジョー社の宣伝に関わっていた人のようで、同作家による異種のプジョーのポスターが、イ ンターネット上でも色々見られます。但し、どこに出しても恥ずかしくないアール・デコという点では、この作品に軍配があがるものと見ます。
作家と作品に関して分かったのは、いまのところここまで。また、画像ではほとんど分からないと思いますが、ポスター下方、黒い罫枠内のモノクロ文字部分に欠損の穴埋め・作字・上塗りなどの補修があります。黒という扱いやすい色で、他に色合わせの必要がなかったことも幸いした上に、これまたとても上手な補修によってほとんど違和感のない補修となっているのは幸いでした。

■13点のポスターには、この他、プジョー等自動車、オートバイ、自転車のポスターなども。アール・デコ関係については他に白っぽい本も入っています。こ の他、明日には、ワインラベルのファイル4冊、資生堂の戦時中の瓶詰商品等小さな箱1つ分、日本郵船関係印刷物約0点、木版絵封筒(明治~大正初め頃 か?)430余点(ファイル2冊)、図案関係書籍3冊などが入荷いたします。











17/07/22 明治の木版刷図案集『図案服紗』と左翼的ビジュアルを多用した戦中演劇団体関係書

■作業をしていると5分おきくらいのペースで更新プログラムのために再起動せよと云ってくるのがあまりに鬱陶しくて、ついつい「今すぐ再起動」をクリックしたところ、およそ2時間にわって作業を中断されてしまいました。
今日はともかく思い切り早足でまいります。
先ずは、『図案服紗合』(上下巻揃)
明治27(1894)年、東京は日本橋にあった大倉書店から発行された木版刷りの図案集で、久保田米僊が編集。上下とも折帖仕立て、和紙に多色木版刷りの図案を2冊合計で36図収めています。今回、2冊とも、筒上の袋付き。袋付きは稀。
服紗のための図案と銘打ってはいますが、染めや塗りなど工芸品にも十分応用可能で、実際にはデザインソースとして、さまざまな分野のニーズを勘案して企画・編集されたものではないかと思います。
全体に、いまだ図案化の度合いが浅く、具象画が多い印象ですが、画像にとった「蕨」のような作品が散見され、美術とデザインとが分かれていこうかという、ちょうどその過渡期を思わせる図案集です。

 もう1点は、『移動演劇図誌』。昭和18(1943)年、日本移動演劇連盟を著書とし、芸術学院出版部が発行
すでに紙質も劣悪化しつつあった時代の本ですが、何といっても『犯罪科学』掲載の「グラフモンタージュ」とテイストがそっくりの巻頭58ページにわたって続くグラフィック表現(椀飯振舞!!!)が目を惹きます。写真は植木康次、編集構成は大町糺。
大町糺は、久保田万太郎を担ぎだして戦後すぐに発行した俳句誌『春燈』の発行人にすわったかと思えば絵画で個展を開き、カレー屋を始めたかと思うと『カ リー伯爵の憂鬱』という著書をものするといった調子で、ちょっととらえどころのない人。植木については、これまでのところ、どのような人だったのか不明。

「移動演劇」は大戦下日本の国策団体である「移動演劇連盟」による事業でした。広島で原爆にあった「桜隊」でご存知の方も多いかと思いますが、東宝、松 竹、吉本から、左翼演劇運動までをも糾合した団体です。イデオロギーとしては息の根を止められていた左翼思想の一部が、体制と一体化した団体のメディアの中で生き延びているという皮肉。たいへん興味深く、また珍しい1冊です。
ちなみに、画像中、一番左のページは、開くと横4P分一連で舞台が姿を現す仕掛け。発行時期を考えると随分贅沢な誌面構成でもあり(そう云えばちょっと『FRONT』っぽい)、要はいまもむかしも、権力とむずびついたところにお金は落ちると云うことですかねえ。

■明日土曜日、1910~1930年代の大型ポスターが十数点入荷いたします。すべてリトグラフで、内、1点はカッサンドルのポスター。もちろんオリジナル。明日はお客様からのご蔵書も入荷の予定で、また店内、大変なことになりそうで。
ますます暑い、暑いのに、何故だか汗だけは冷たい夏であります。
末筆ながら、暑中お見舞い申し上げます。みなさまどうかご自愛くださいますように!


 

17/07/15 久しぶりにカッサンドルのオリジナル・リト刷り3点入荷! 吉田五十八旧蔵の芳名帳も!

 ■一週間前の「明治古典会七夕古書大入札会」と「明治古典会プレミアム特選市」および「南部支部入札会」、今週になって「資料会」「明治古典会通 常市」と、暑さの中、市場をひとり右往左往しながら、しかしもうそれほど買いたくはないのだけれどと思っているような時に限って、これがそこそこ落札してしまうという結果となっており、こうした事態に最も肝心なのは売る算段を考えることであったなあと、いまさらながらに思い出して心持ち慌て気味の、いや、もっと慌てていないといけない日月堂、2週間ぶり の更新であります。気が付けば7月も半ばだとは噫。

落札したものを列挙すれば、職人仕事の図案自筆手控え「服紗下絵」1袋、明治の木版図案集『服紗図案合』上下2冊揃い、明治期の手彫りの染めの型紙(伊勢型紙他)1箱、ヘタウマと云うよりはっきりとヘタクソと云える絵で鳥や魚のさばき方を図解した巻子仕立ての『四条流料理伝書』1巻、スタンラン画とされる点に多少の疑念はあるものの20世紀初頭に刷られたのは間違いないジャポニスムの絵が奇妙な具合のリトグラフのポスター1面満洲・ 奉天等の病院に勤務していた日本人の医師旧蔵の海外からの来信(絵葉書)ファイル3冊、20世紀初頭のクラシック・カーを描いたプレート集、エア ラインのラゲッジラベルやマッチラベル・各種商標など小さな箱一つ分、なかなか気が利いている(と思う)デザインのパイプ6個、1950~60年代アメリカの時計コレクターの同人誌の一括、フォトモンタージュを駆使してのプロパガンダ表現に見所のある『移動演劇図誌』、これは珍しい昭和8年の『伊勢丹 接客用語(集)』1910~20年代の欧州優秀ポスターの図案を複写した写真ファイル3冊、そして、西脇順三郎、吉岡実、吉増剛造などの自筆による署名と絵や識語などを収めた飯田善国旧蔵の芳名帳など。
このうちのできれば半分くらいは、追って随時、ここでご紹介していく予定ですが、今日のところは下記の2点と左上の1点を。


■その①は久しぶりのカッサンドルです。3点入荷の内、2点を画像に採りました。
北方急行=ノール・エクスプレスのポスターデザインを流用して表に使い、裏側に宣伝文句と運行ルート・所要時間などを印刷した宣伝用のカードです。
いずれも図案部分はリトグラフで刷られたもの。画像向かって左側が1927年、ポスターと同じ印刷会社「アシャール社」のクレジットが、向かって 右は1929年のもので、やはりこの時のポスター印刷を担当した「リーヴァン・ダネル社」のクレジットが認められます。
残る1点は1930年の「ドクトル・シャルビー」で、こちらはB5=小型ポスター程度のサイズで、やはりポスターと同じ印刷会社「広告美術社」の 記載があります。
3点ともに、額の裏側嵌殺しで入札時は発行当時のオリジナルか後世のリプリントか(リトグラフの複製品が1980年代頃まであるのがフランス で)、3割くらいのリスクを残しての入札となりましたが、お陰様でこれは「当たり」。自分の目と経験とで何をどう踏むか。オークションの落札相場 はじめ世にあふれる情報だけでは判断がつかないこうしたものを落札できているうちは、自分もまだ少しは大丈夫だと思いたい。
あ。もうひとつ。画像中左の図案は、本邦陸軍軍人にして戦記もので作家としても名を残す桜井忠温の著書『土の上 水の上』の本体装丁におもしろいくらいそのまま採られております。是非一度、ケンサクしてご確認下さい。

その②。芳名帳好き、というのも小店の品揃えの特徴の一つかと思いますが、こちらもまた久しぶりとなっておりました。『吉田先生芸術院会員拝命祝賀会』 記念の芳名帳です。
吉田先生とはそも何者ぞ、と云うところから勘を働かせないといけないわけですが、芳名帳に並ぶ氏名の中に、水谷武彦山脇巌と云う戦前のバウハウス留学者で後、建築家として活躍した2氏に加え、清家清吉村順三とくれば、ああ、吉田五十八に違いあるまいと見込んだ次第。
落札したのを手に改めて確認すれば、吉田五十八の名前はどこにもないものの、祝賀会の日付が「昭和28年12月2日」とあります。吉田が芸術院会員に就任したのが昭和29(1954)年1月であること、また、白木屋の設計に関わった建築家で祝賀会出席者の木下唯親描く肖像画の風貌から見ても、吉田先生=吉田五十八と云って間違いありません。
祝賀会出席者には、大阪松竹座や東京劇場を設計した木村得三郎、樺太庁技師から出発した栄米治、坂倉建築事務所出身で東急会館などを手掛けた北村脩一などの名前があり、調べれば建築家だらけということになりそうです。
この人はまあ当然だけれど実はこの人は吉田に批判的だったとか後年袂を分かつだとか、そういった関係まで読み解ける方が現れて初めて商品になるのだろうという性格の商品だと思うのですが、それにしてもなぜそこまで予想しながら「これが好きなもので」という安易な理由で、こうも七面倒くさい商材ばかり買ってしまうのか。七面倒くさい自分とその商売に、正直もうほとほと嫌気がさしております。
そんなことを云いながら、来週には、飯田善国旧蔵芳名帳なんかひっぱり出したりして。
ともあれ続きはまた来週。の予定。嗚呼。

 

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