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17/07/15 久しぶりにカッサンドルのオリジナル・リト刷り3点入荷! 吉田五十八旧蔵の芳名帳も!

 ■一週間前の「明治古典会七夕古書大入札会」と「明治古典会プレミアム特選市」および「南部支部入札会」、今週になって「資料会」「明治古典会通 常市」と、暑さの中、市場をひとり右往左往しながら、しかしもうそれほど買いたくはないのだけれどと思っているような時に限って、これがそこそこ落札してしまうという結果となっており、こうした事態に最も肝心なのは売る算段を考えることであったなあと、いまさらながらに思い出して心持ち慌て気味の、いや、もっと慌てていないといけない日月堂、2週間ぶり の更新であります。気が付けば7月も半ばだとは噫。

落札したものを列挙すれば、職人仕事の図案自筆手控え「服紗下絵」1袋、明治の木版図案集『服紗図案合』上下2冊揃い、明治期の手彫りの染めの型紙(伊勢型紙他)1箱、ヘタウマと云うよりはっきりとヘタクソと云える絵で鳥や魚のさばき方を図解した巻子仕立ての『四条流料理伝書』1巻、スタンラン画とされる点に多少の疑念はあるものの20世紀初頭に刷られたのは間違いないジャポニスムの絵が奇妙な具合のリトグラフのポスター1面満洲・ 奉天等の病院に勤務していた日本人の医師旧蔵の海外からの来信(絵葉書)ファイル3冊、20世紀初頭のクラシック・カーを描いたプレート集、エア ラインのラゲッジラベルやマッチラベル・各種商標など小さな箱一つ分、なかなか気が利いている(と思う)デザインのパイプ6個、1950~60年代アメリカの時計コレクターの同人誌の一括、フォトモンタージュを駆使してのプロパガンダ表現に見所のある『移動演劇図誌』、これは珍しい昭和8年の『伊勢丹 接客用語(集)』1910~20年代の欧州優秀ポスターの図案を複写した写真ファイル3冊、そして、西脇順三郎、吉岡実、吉増剛造などの自筆による署名と絵や識語などを収めた飯田善国旧蔵の芳名帳など。
このうちのできれば半分くらいは、追って随時、ここでご紹介していく予定ですが、今日のところは下記の2点と左上の1点を。


■その①は久しぶりのカッサンドルです。3点入荷の内、2点を画像に採りました。
北方急行=ノール・エクスプレスのポスターデザインを流用して表に使い、裏側に宣伝文句と運行ルート・所要時間などを印刷した宣伝用のカードです。
いずれも図案部分はリトグラフで刷られたもの。画像向かって左側が1927年、ポスターと同じ印刷会社「アシャール社」のクレジットが、向かって 右は1929年のもので、やはりこの時のポスター印刷を担当した「リーヴァン・ダネル社」のクレジットが認められます。
残る1点は1930年の「ドクトル・シャルビー」で、こちらはB5=小型ポスター程度のサイズで、やはりポスターと同じ印刷会社「広告美術社」の 記載があります。
3点ともに、額の裏側嵌殺しで入札時は発行当時のオリジナルか後世のリプリントか(リトグラフの複製品が1980年代頃まであるのがフランス で)、3割くらいのリスクを残しての入札となりましたが、お陰様でこれは「当たり」。自分の目と経験とで何をどう踏むか。オークションの落札相場 はじめ世にあふれる情報だけでは判断がつかないこうしたものを落札できているうちは、自分もまだ少しは大丈夫だと思いたい。
あ。もうひとつ。画像中左の図案は、本邦陸軍軍人にして戦記もので作家としても名を残す桜井忠温の著書『土の上 水の上』の本体装丁におもしろいくらいそのまま採られております。是非一度、ケンサクしてご確認下さい。

その②。芳名帳好き、というのも小店の品揃えの特徴の一つかと思いますが、こちらもまた久しぶりとなっておりました。『吉田先生芸術院会員拝命祝賀会』 記念の芳名帳です。
吉田先生とはそも何者ぞ、と云うところから勘を働かせないといけないわけですが、芳名帳に並ぶ氏名の中に、水谷武彦山脇巌と云う戦前のバウハウス留学者で後、建築家として活躍した2氏に加え、清家清吉村順三とくれば、ああ、吉田五十八に違いあるまいと見込んだ次第。
落札したのを手に改めて確認すれば、吉田五十八の名前はどこにもないものの、祝賀会の日付が「昭和28年12月2日」とあります。吉田が芸術院会員に就任したのが昭和29(1954)年1月であること、また、白木屋の設計に関わった建築家で祝賀会出席者の木下唯親描く肖像画の風貌から見ても、吉田先生=吉田五十八と云って間違いありません。
祝賀会出席者には、大阪松竹座や東京劇場を設計した木村得三郎、樺太庁技師から出発した栄米治、坂倉建築事務所出身で東急会館などを手掛けた北村脩一などの名前があり、調べれば建築家だらけということになりそうです。
この人はまあ当然だけれど実はこの人は吉田に批判的だったとか後年袂を分かつだとか、そういった関係まで読み解ける方が現れて初めて商品になるのだろうという性格の商品だと思うのですが、それにしてもなぜそこまで予想しながら「これが好きなもので」という安易な理由で、こうも七面倒くさい商材ばかり買ってしまうのか。七面倒くさい自分とその商売に、正直もうほとほと嫌気がさしております。
そんなことを云いながら、来週には、飯田善国旧蔵芳名帳なんかひっぱり出したりして。
ともあれ続きはまた来週。の予定。嗚呼。

 

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