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16/11/04 いっかいやすんで やすんでられない仕事を片付けます。

 ■ここのところずっと、年明け1月18日から始まる即売会「第33回 銀座 古書の市」の目録作成作業にかかりきりです。元来ひまな店ですから、ただもうコツコツコツコツ入力していれば目録原稿などすぐに済みそうなものなのですが、今回、目録に載せようというものがいよいよ「本」から遠ざかり、かつまた切り売りするわけにいかない「かたまり」的なものが増えたこともあって、もたもたと時間ばかりがかかっているところにもってきて、当初の予定からページ数を増やさなければならない事態が出来。
追加分の撮影とデータの作成だけでなく、全体の構成やページ割りから考え直す必要に迫られております。しかも、こういう時に限って、小店当番幹事。噫。
来週半ば以降、できたところから素材を渡していく予定となっていて、いやはや全く作業が追いついておりません。
今週は新着品の更新はお休みさせていただいて、これからまた目録の作業に戻ります。
あ。画像はその目録掲載品のひとつ。グラフィック集団・北代省三による袖珍写真集の第3巻。限定1,000部、1960年の発行です。
11月に入り、ますます夜が長くなってきました。小店の夜もまた。

 

 

16/10/29 アメリカとドイツから 1920年代の前衛芸術誌 『THE LITTLE REVIEW』とご存知『DER STURM』

 
■ここ一週間で、その日のうちに帰宅できたのはわずかに2日。残り5日の内、4日は深夜2時過ぎ・3時過ぎてやっと夕食にありつくという滅茶苦茶が続いております。ひとりブラック企業の面目活如と云うべきこの状況、早くも来年1月の「銀座 古書の市」の目録作成作業に入ったのに加え、ありがちなこととはいえ、こういう時に限って案件が三つ四つ……と重なりまして、要は小店店主の事務処理 能力の不足によるもの。自業自得とはいえ、目録締め切り間に合うのだろうか…。
がしかし、それでも休んでいるわけにいかないのが市場であり、開けてるだけじゃあ意味のないのが店と云うもの。今週も商品新顔をご用意してご来店をお待ち申し上げるべく、正真正銘駆け足での新着品の紹介とさせていただきます。2点とも久しぶりに “格好良い系”です。

ふいに出くわすものに教えられる。未だ知らないものと隣り合わせで日常を送る。古本屋と云うのは、思えばとても恵まれた仕事だと思います。市場で初めて見 た『THE LITTLE REVIEW』も、この1冊を通して初めてその存在を知り、落札した後には、これまで知らないでいた同誌の果たした大きな役割を教えられることになりまし た。
1914年、まだ20代だったマーガレット・アンダーソンと云う女性が立ち上げたアメリカの雑誌『リトル・レビュー』は、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」を連載したことで知られるそうで、そうなると知らなかったのが恥ずかしいレベルの有名雑誌なのでした。
市場では、とりあえず、1910~60年代頃までに発行された洋モノで、初見のものにはできるだけ目を通すようにしているので、これもまた最初は何気なく手をとったのものだったのですが、先ず表紙をめくって出てくる見開きの版組を一目見て吃驚。縦横にスペースを仕切る太い罫線と大小活字を組み合わせた面構えは、アヴァンギャルドの気合十分ではないかと。 慌てて中を見ていくと、別丁図版にザッキンだとかマン・レイだとかの作品があるかと思うと機械美を伝える写真があり、テキストにテオ・ファン・ドースブルフの名前が出てくるかと思えば、ドースブルフの筆名だと落札後に知ることになった「I.K.ボンセット」による一連の視覚詩作品まで掲載されていて…といった調子で只者でないことは明らか。ロシア現代美術の広告が配された裏表紙がとどめを刺す格好です。

英語版のウィキから当誌の果たした役割を簡単にまとめると、ジャン・アルプとエズラ・パウンドの協力により欧米のモダニストたちの活動と文学・美術作品を幅広く取り上げ、シュルレアリスムとダダイズムのごく初期における紹介誌となった――といったところでしょうか。
こんな雑誌を可能にしたマーガレット・アンダーソンについては、「YOMIURI ONLINE」のページで簡単に紹介している文章がありますので、ご興味をお持ちの方は下記のアドレスから是非。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/wol/research/kyoso_081111.html
最低でも1度は毎週市場に行く。こういうものとの出会いがある限り、こればかりはやめるわけにはいかない所以です。

■『THE LITTLE REVIEW』と同時代のドイツから、こちらは日本でも、とくに大正期前衛芸術運動に関心をお持ちの方にはよく知られた雑誌『DER STURM (デア・シュトゥルム) 』。小店店主なんぞの説明もどきをお読みいただくより、余程しっかりしたところでご確認いただいくに如くはなく、例えば下記のサイトなどをお訪ね下さい。
artscape
徳島県立美術館 美術用語詳細情報
尚、今回、小店に入荷したのは1922年4月、5月、6月発行の3冊。3冊ともカラープレートはラリオノフの舞台美術・衣裳をとりあげたもの。イヴァン・ ゴル、クルト・シュビッタース、ルイ・アラゴン、ゴンチャロワなどの名前の並ぶ目次には、そろそろこのあたりはスルーしてもいいかなんて思ったのも一瞬、 いまだに眩惑を覚えて、ついつい手を出してしまった次第です。

今週はこの他、パリ・ベルリン他戦前欧州都市観光写真帖、1950年代前後外国地図、戦前旦那衆のおあそびの痕跡と思われる「来訪帖」等4冊などが明日、店に到着の予定です。
さて。今晩もこれから少なくともひとつは案件を片付けないとまずいのでありまして、ああ、夜が、よ、よるが長すぎる…。

 

16/10/22 マヴォ同人・牧壽雄のモダンな木版刷図案集『新希臘派模様』と西陣・井筒屋 伊達家の明治期初出資料一群ほか 新着品、入荷しています。

 ■今週初めに更新しますというお約束を反故にしたまま、あっと云う間の一週間。 「隠す/隠れる」の続きは後にして、先ずは今週の新着品から。
小店ではお馴染みの木版刷りの図案集ですが、これは初めての入荷。牧壽雄の著書で、京都の内田美術書肆が昭和2年=1927年11月に発行した『新希臘派模様』です。
B5サイズの経本仕立て、25面・38図。題箋を貼っただけの布装上製表紙を開くとすぐに、こちらの方が表紙らしく見える3色刷りの扉が現れ、続いて著書の短い序文が現れます (テキストは序文のみ)。1927年9月付の序文によると、「新希臘派」なる名称は、バウハウスでお馴染みのグロピウスが、同年6月、ベルリンで開かれ、 「衣裳設計家の間に新しい反動を惹き起こし」たイワノフ夫人の図案展対して与えた「批評的賛辞」であり、牧壽雄による当作品集は「グロピユース氏の所謂新 希臘派の主張といふものに根拠を置いた最も日本的なデイヴアイス」だと云います。
この場合は、趣向とか技巧といった意味で使われたものだと思われますが、1927年にまさかの「デヴァイス」。こんな言葉を巻頭序文に織り交ぜて見せるモダーンな御仁・牧壽雄とは何者ゾ。いまやマイナーメジャーの代表的存在となりつつある戦前日本のダダイスト集団・マヴォ。牧壽雄はその同人で、当書に 先駆けること半年、1927年2月には、タイトルからしてそのものずばり『MAVO染織図案集』を出したりもしております。その数年前には神戸で展覧会を開催するなど、関西を舞台とした活動が知られている人。
生没年や出生地など経歴詳細不明なれど、マヴォイストとして名前を残した牧による『新希臘派模様』は、数多ある同時代の木版刷図案集の中でも突出してモダンかつクール。かつて数回市場で目にしただけですが、『MAVO染織図案集』に比べても-希少性の点ではかないませんが-作品としては一段と、と云うより一足飛びに洗練された印象があります。
それにしても、1927年6月のベルリンで開催された展覧会の情報を、牧は一体、どこから・誰から・どのようにして-おそらくは詳細に - 知ったのか。実はこの点が一番気になるところですが、一夜漬けでは到底回答にはたどり着けないのでした。ああ、そんなのばっかり。反省…。


 こちらも京都から。少し前に落札していたのを、やっと少し詳しく見ることができました。入札用の封筒に「初出し資料」と書かれていた京都・西陣の名匠、美術織物で知られた井筒屋・伊達家の旧蔵品の一括です。
いくつかの資料に「伊達弥助」「京都西陣本伊達」等の記載があること、明治20年代の日付が比較的目につくこと、内蔵寮の封筒・宮内省の便箋で、領収証を送るようにと指示する書簡が「帝室技芸員 伊達弥助殿」宛てとなっているなどから、主に5代目の伊達弥助が作成・蒐集したものと見られます。「明治以降,西陣織物業界は技術革新を積極的に追及する ことで新時代を乗りきろうとした。四世・五世の伊達弥助はその象徴ともいうべき人物」であり、北野天満宮北門前には5代目を称える石碑「西陣名技碑」が 建っているとのこと。全て落札後に分かったことですが、なかなかの資料を手に入れてしまったようです。
資料はみかん箱ひとつに収まるかどうかというくらいの量。「今般新色手本」等染色見本帖(絹布サンプル多し)、「新形小紋帳」等小紋柄見本「紋本帳」等 図案控え(肉筆本含む 着色多し)など和綴じの控えや見本帖を中心に、下絵、切り絵、模写、手習い帖、そして書簡から成るもの。最も重要と思われるのが「仮裂本帳」と書かれた2冊。伊達弥助を名匠に押し上げた友禅染を施したビロードや伊達錆織と目される織物の断片、府立図書館に納品したとの書き込みの残る絹織物各種 (いずれも比較的大きなサイズ)など、明治~大正期に織られ染められた裂、或いは手本として集められたさらに古い時代の裂の現物が多数収められています。中には、裂と台帳とに割り印を押したものなどもあり、 厳重に管理されていたことが伺えます。能書きなど別にして、繊細で表情豊かな裂は見ているだけで唸る素晴らしいラインナップ。2点目の画像は2冊の「仮裂本帳」より。下の横長の方は19×71cmと実際大きなものです。
また、一緒にまとめられていた書簡には、内蔵寮から伊達弥助宛てのものの他、伊達虎一宅気付・山中治郎と云う人に宛て、間部時雄から送られた書簡があり、 こちらはもっぱら集金 (金額明細入り) に関する連絡ながら、間部が浅井忠の助手だったとすれば当時の画塾の月謝や画材経費などが伺えて面白い内容です。また、伊達家一門と思われる虎一は1900年パリ万博視察の体験を『欧羅巴視察日記』と云う私家版に残しているようです。ちなみに伊達弥助は日本政府により技術伝習生としてウィーン万博に派遣され、 オーストリア式ジャガードを導入しています。
この井筒屋・伊達家資料、来月18日には締め切りがやってくる合同目録に掲載する予定。何をポイントに、いくら付けるか … 古本屋の仕事のキモに照らす時間がまだまだ続くことになりそうです。


■今週はこの他、手札サイズの写真1袋、古い切り抜き帖2冊、バレエ・リュス展覧会図録、シュルレアリスム、ジョン・ケージ関係洋書5冊、そしてレコードと箱欠が残念ですが、マルセル・デュシャンとジョン・ケージの『REUNION』が再入荷となりました。

さて、「隠す/隠れる」のおはなし。これが書き始めると実に長くなる。困った。来週以降、何度かに分けて書いていこうかと思います。以下、今回はその前段。
- モノのありか。モノゴトのありよう。意味。価値。値段 etc. 情報革命というものが、こうしたことのすべてをあからさまにする時代です。
どこにいても何時でも買い物ができる・楽しめるようになりました。すべてがあからさまにされた時代には、しかもそれを安心して行えます。
新刊書店、古本屋、カフェ、ギャラリー、雑貨屋…そうした店の区別ももはやナンセンスです。お客様の側だけでなく 経営する側の意識もまた、区別を必要としていないようです。
本を読むと云う行為が 極私的な行為であると云うより ある人との/仲間との/世間との 共通体験として求められるようになってきました。
大量にでまわった情報が、ものごとの優位性を決定づけるなかで私たちは仕事をしています。
……… さてさて。
こうした状況から逃れる術はないのか!
この一年半ほど、考え続けていたのはそのことでした。一度営業を休んで、店のことをもう一度考えよう。そちらの方へとかつてない強さで私の背中を押してくれたのは、ドクターペッパー片手に飲みながら店に入ってきた爽やかなイケメンくん二人でありました。(つづく。予定。)

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