■台風一過の東京は10月とは思えない暑さ。それでも、穏やかさを取り戻した風には、秋の気配が感じられるようになってきました。さて、いつもより2日ほど遅れての新入荷品のご案内、1点目はポップ・アート花盛りの1964年2,000部限定で発行された『ONE CENT LIFE』。サム・フランシスが編者を務め、視覚詩として定着されたウォーラス・ティンの詩と、62点に上る多色刷オリジナルリトグラフから成るアーティスト・ブックです。参加アーティストはサム・フランシス、ピエール・アレシンスキー、カレル・アペル、ロイ・リキテンシュタイン、トム・・ウェッセルマン、クレス・オルデンバーグ、アラン・カプロー、アンディ・ウォーホル、ロバート・ラウシェンバーグ、ジム・ダインなど、綺羅星の如き全28名。奥付ページも作品のような構成で、シリアルナンバーがシルクスクリーンで刷り入れられるなど充分アート。全頁未綴じのリーフで、布装上製スリップケース、カヴァー付き、布装の函入りの完本となっています。尚、ケースの装画はリキテンシュタイン、カヴァーの装画をアレシンスキーが手掛けています。
限定2,000部というのは限定本としてはかなり多い方ですが、書籍のタイトルでケンサクしてみると、当書の作品のバラ売りが目立つことなどから考えて、完全なカタチで残されているもの・今後残っていくものは、大きく数を減らしている・減らして行くのではないかと推測します。小店あくまで古本屋であるという認識が果たしてどこまで届いているのだか怪しいところですが、何分にも本来小店古本!屋でございまして、当然ではありますが、完本として1冊まるごとの販売となります。悪しからず……。
■この溶接工を写した格好いい写真の載ってる印刷物は一体何?と思ったら、中西夏之が26歳当時に いとう画廊 で開催した個展のパンフレット(もしくは少し大き目のDM?)でした。写真はスウェーデンの写真家で、来日中に東野芳明の案内により中西のアトリエを訪問したクリステル・ストロンホルムの作品。赤い紙にスミ1色刷の1枚とモノクロ両面刷の2枚を重ね合わせた体裁のパンフレットには、この辺りのことを記した東野の比較的長い文章も収められています。
この1点に気付いて子細に見始めたOPP1袋は、今年5月19日付の新着品と同じ美術関係者の旧蔵品で、今回もまた興味深い紙モノの一群の入荷となりました。
江原順の構成で赤瀬川原平個人の展覧会としては2回目にあたる1961年サトウ画廊での「現代のヴィジョン展2」の未使用DM、瀧口修造が企画を手掛けたことで知られるタケミヤ画廊のDM2点 - 加納光於を差出人とする1956年「第2回銅版画展」、翌年の「第3回銅版画展」は未使用 - 、この他DMとしては1959年村松画廊「福島秀子 個展」、合田佐和子のデビューとなった銀座・銀芳堂での展覧会「合田佐和子/作品展」(展覧会開催を勧めた瀧口修造の文章を含む)、倉俣史朗・山口勝弘・戸村浩などの名前が並ぶ「明かり オリジナル照明器具展」。1960年、国立近代美術館「ブルーノ・ムナーリ氏のダイレクト・プロジェクション」のチラシ - 音楽・武満徹“静かなデザイン”解説・瀧口修造 - 、瀧口修造のメッセージ入りのリーフレットが1961年「靉光 歿後15年を記念して」、1960年の南画廊「加納光於個展」と南天子画廊「瀧口修造 私の画帖から」、矢内原伊作の長文のある南天子画廊「ジャコメッティの落書」などの他、女流版画家の展覧会関係資料等。物体として捉えてしまえばとるに足らない、だからこそ存在として重要な意味を持つ紙ペラたちです。
■今週はこの他、『Cosmopolitan』他1955年前後の洋雑誌約60冊、富岡多恵子『物語の明くる日』等献呈署名本2冊、木村荘五旧蔵洋書大量一括などが入荷いたしております。
秋の気配が潜んでいるのも当然で、思えば今年ももう10月。小店はすでに、来年1月下旬の即売会に向けて、“準備に入るための下準備”に入らねばなりません。うかうかと過ごす1年の何と短いことか!アタマが痛い …… 。