■残暑お見舞い申し上げます
夏休みが明けてからこちら、一時の猛暑から少しずつ解放されるようになってきました。その分、疲れが出てきたような気もしますが、小店店主の場合は単なる気の緩みもしくは精神の弛緩というやつでね。休み明けと当時にギアをトップにチェンジしてお仕事に励んでおられるみなさまには、どうぞくれぐれもご自愛くださいますように!
■夏休み明け早々何ですが、来週はお客様の大量のご蔵書をお引き受けする関係で木曜日は臨時休業。来週の店の営業は27日(火)と31日(土)の2日のみとなります。ご不便をおかけいたしますが、ご理解・ご留意いただければ幸いです。
■休みが明けると同時に市場も通常化、新着品も着々入荷しております。まとめて入ってくるのは本日土曜日の夕刻でありまして、今週は珍しく1950年代の婦人雑誌・ファッション雑誌、ベトナム戦争に関する日本国内反戦活動関係の孔版印刷物=ビラの類が2口なども入ってくる他、戦前の映画専門雑誌30冊ほどが店に届きます。
今週の新着品、画像1点目は、その映画専門雑誌約30冊の内、マイナー系で尚且つ "表紙がロシア構成主義的だったりモダンだったりするものを厳選してみた図" です。いずれもサイレントからトーキーへと切り替わる前後の時期のもので、態は心をあらわすの謂いよろしく、ソヴエト・ロシア映画の特集号を多数含んでいます。
『映画随筆』『東京映画小劇場』あたりには著名な寄稿者の名前が散見されますが、『映画是非』『映画万歳』になると、ほとんどの執筆者がお名前からして初見。東京麻布・映画是非社発行の『映画是非』昭和5年1月「1930年展望」号と、2月「トーキー特輯号」では松井翠聲、高木俊朗(「モンタアジュ解剖」!「機械主義と資本主義」!?)、小畑敏一らが、名古屋で発行されていた『映画万歳』では徳川夢声の名舞うが僅かに僅かに認められる、といったところ。但し「支那の映画事業」「資本家の陰謀を示した映画」など、気になる見出しが多数あります。
『映画随筆』は衣笠貞之助の「伯林映画通信」の他、清水光の「モホリ・ナギイの絶対形成論」等、ソビエトとドイツを中心とした海外文献の紹介が中心となり、かなり尖がった印象。
これらの中でもひとつ格上と見られる『東京映画小劇場』(昭和54年発行の3冊)ともなると、板垣鷹穂、飯島正、高田博厚などに加えて堀野正雄「小型映画の根本問題」なども出てくる堂々たるもの。表紙がタイポグラフィで構成されているのは、山内光(後の東方社・岡田桑三!)所蔵の"独逸の「フイルム・ウント・フォト」プログラム"によるものとか。もはやモダニズム系の雑誌と云った方が素性がはっきりしそうなラインナップです。
久方ぶりの 初見! 発見!!!の続く雑誌群の入荷。旧蔵者を同じくするものと見られる他の雑誌の内容が大いに気になってきました。
■こちらは2007年9月1日にご紹介して以来12年ぶりの入荷となりました。1963年、アメリカで発行された250部限定本『VOLIERE』はアンドレ・ブルトンとイヴ・タンギーの共著。ブルトンの詩を手稿通りに複製したプレートと、イヴ・タンギーによるリトグラフ&コラージュ、手彩画など未綴じのプレートをポートフォリに収めたもので、スリップケースと函のついた完本です。
この本最大の特徴は、視覚詩的なブルトンの詩を忠実に再現することに始まり、リトグラフで刷って切り抜いて貼り付けて…と、徹頭徹尾凝りに凝った造本の面白さにあるかと思いますが、それがどれほどのものだったかのか、ということについて2007年に続いて2度同じことを書く労を惜しんで、前回の記事のアドレスを貼っておきますので、どうかそちらをご参照下さいますよう伏してお願い申し上げます。
http://www.nichigetu-do.com/navi/info/detail.php?id=147
これがまあねちねちとくどいほど掻いてりまして。2007年当時、思えば小店店主まだ40代半ば。当時のような熱量や集中力は一体どこに行ってしまったのやら、いまとなってはかけらも残っておりません。やれやれ。
■高校時代、大学受験準備で通った代々木ゼミナールの日本史の講座には白井明と云う名物講師が居て、私はこの講座で日本の近現代史を教わりました。細かな記憶は残っていませんが、講義が毎度毎度とても面白かったことと、あとひとつ、いまでも忘れられない白井先生の言葉があります。
「あの大戦で何があったのか、何を考えていたのか、昭和天皇には話す義務がある。」
古本屋になってからというもの、さまざまな記録に接する度に、どこからかこの言葉が聞こえてくる気がします。
第二次世界大戦の敗戦日と前後して、今年もNHKが渾身のドキュメンタリー番組を見せてくれました。なかでも「昭和天皇 「拝謁記」」は、とても印象深いものでした。戦後、第2代宮内府長官、初代宮内庁長官を歴任し、昭和天皇とのやりとりを詳細に記録した田島道治。半世紀以上の長きにわたりその記録を保管し、公開を決めたご遺族。白井先生にとってはまだ充分な回答とは云えないのかも知れませんが、いまこの時に、この番組をつくり放送したことはとても意義あることだったと思います。
NHK「拝謁記」については下記のアドレスに。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/emperor-showa/?tab=1&diary=1
「基本的人権」に関係する諸機関から警告とか勧告とか次々受けるようになってしまった我らがニッポンですが、今週はこんなのも届いてるそうです。
https://www.amnesty.or.jp/news/2019/0821_8271.html?utm_source=BenchmarkEmail&utm_campaign=MM_20190822&utm_medium=email&fbclid=IwAR2b4yXPD4zeX4LC-kn8ReVMMX9E6BxiokIs3DdkWOmThv9SNjqKlb2aCXY
次に届く報せといったら、この度のガイコウでいくらバラまかれてしまったのかという金額あたりでしょうか。増税したところで焼け石に水。いや、水は水であれもこれも問題発生中で……。