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印刷解体 20世紀の印刷を支えてきたモノたち

会期:2004年9月11日(土)~9月29日(水)
会場:渋谷PARCO・ロゴスギャラリー
[解体シリーズ]





そもそも企画展「印刷解体」とはどういうものか。タイトルだけでは、誰だって何のことやら分かりません。

ある日、店にやって来たお客さんから不思議なものを見せられました。
黒いガラスの板に白抜きの文字や特殊記号が並んでいます。光に透かして見ると、並んだ文字が実に美しく見えます。「文字」だけを取り出して見ることによって、万事思いの至らない私は、普段眼にしているごく普通の明朝やゴシック体の文字の美しさに、初めて気付いたわけです。

この物体は一体何なのか。
聞けば写真植字、通称「写植」といわれる印刷に使うための「文字盤」というもので、需要が急激に減ってしまったため、ほぼ廃棄処分の運命にあるというのでした。そして、それを見せてくださったお客さんは、西に文字盤を割るという印刷所があれば行って割ってはいけない譲ってくださいといい、東に解体される街の印刷所があると聞けば行って捨ててはいけない譲ってくださいといい、まあそのようにして、個人の意思で文字盤を保存しようとしているのでした。

そんなお話しをうかがったのが昨年の春頃。
それなら、というので、以来、日月堂では文字盤を店に置いて販売するようになりました。何しろ勿体無い。その上、戦後の印刷物を支えてきたものたちが、いま、一般の人たちの眼にほとんど触れる機会さえもつことなく、この世の中から消えかけているようなのです。

さて、「写植」ですらこの状態ですから――ご承知の方も多いとは思いますが――活版印刷に至っては、もはや風前の灯火、絶滅寸前。昨年の秋、活版活字(鉛の活字と小口木版の活字)とが古書市場に出たのを落札、一つ一つを手に取り机に置いてつくづく眺めれば、これがまた何ともいえない存在感があります。 なぜ活字は「拾う」というのか、そのことも分からなくなってしまう日がやってくるに違いないと、そんなことを思ったりもするのでした。

古本屋をやっていて思うことの一つに、モノや人が消えていく、ということは、それはそのまま、その記憶や記録の消滅を意味する、ということがあります。せめてモノだけでも残ってくれれば、それにまつわる「物語」を知りたいと思い、知ろうと努力する人が現われる可能性だけは、残るのではないかと思うのです。

たくさんの人の手と経験によって支えられてきた印刷は、今後おそらく、ほとんどデジタルへと変換されていくのは間違いなさそうです。「印刷解体」というタイトルの一つの意味は、ここにあります。

この企画は、これまでの印刷を支えてきたモノたちを集めて、それを販売しようというものです。文字盤と活版活字。これが主役。ですが、小口木版の商標版下、プリント教材用のゴム製の版下といったワケのわからないものから、戦前から戦後に発行された内外の印刷年鑑やタイポグラフィー集、紙のデッドストック、紙見本帖など、印刷を構成する要素を「腑分け」して並べ、販売もいたします。これが「印刷解体」というタイトルのもう一つの意味となっています。

活版印刷は、組版の見本なども展示いたします。これがまた、本当に何ともいいようのない美しいものです。また、名刺やカードなど活版印刷のセミオーダー、文字盤はこれを使ったオブジェなどもただいま計画中です。もしかしたら、このほかにも印刷に関わる「道具類」などもお眼にかけ、さらに販売できるかも知れません。

「ムラカミさん家の昭和三代」に続いて、今度は印刷と印刷所の解体作業、のようなものに、かかわることになるようで。これってなんなんだかなぁ、と思いもいたしますが、よーく考えてみると古本屋というもの、引越しや建て壊し、故人の蔵書の処分など、大なり小なり何かの「仕舞いの風景」に立ち会う仕事ではあるようです。
これでなかなか、切ない商売ではあるのです。

6月16日、再び活版印刷所を訪ねてきました。
この日は、熟練した職人さんによる「文選」と「植字」の作業を中心に拝見し、また会場に掲示するパネルの写真を撮影してきました。また、展示や販売を行う品物についても打ち合わせができ、何とかカタチが見えてきました。
詳細はまた改めてお知らせしますが、今回は、その印刷所の様子の一端をご紹介いたします。

写真a

写真b

写真c

写真d

写真e

写真f

写真a. ビル三階の活字の並ぶ部屋。写真に写っているような木製の台ごと、会場に運び入れることになります。活字は自由に拾っていただいて、分売の予定です。

写真b. 「紙型」と呼ばれる紙製の版下。こんなものも、販売します。

写真c. 拾ってきた活字を組むための作業場所、「植字台」です。実に機能的なつくりになっています。これもまた、職人さんがすぐに作業が始められるような状態のまま、会場での展示を予定。そして、販売の可能性も大です。

写真d. 組み終わった版が、引き出しの中に収められていました。「余白」は何もないということではなくて、作られているのだということに気づきます。こうした組版自体も販売できそうです。

写真e. 校正の刷り出し用の印刷機。これはまだちょっと売れません。

写真f. トタンで出来た罫線をカットする道具など、既にほとんど使われていない色々な道具類も、会場でご覧に入れます。

この他、文字を拾い出す時に使われてきた小さな木箱、その他の特別な道具類、活字を組んで作るペーパー・ウェイト、アルファベットや五十音の活字の揃いなども会場で販売できそうです。 それより肝心なのは、この活版印刷所の雰囲気をどこまで会場でお伝えできるか。そのことをもっと考えたいと思っています。

来週は、写真植字の現場に行ってきます。
('04 06/22)

印刷解体 開催直前! 出品リスト








いよいよ開催直前となりました。
9月1日には活版印刷所で搬入に向けた作業を終え、文字盤の価格も決定、活版刷のセミオーダーのサンプルや、文字盤用のオリジナル関連商品なども次々に完成、ようやく見晴らしがきくようになってきました。
これまで分かりにくいままにきてしまいましたので、今回は、実際に販売される商品についてお知らせいたします。
文字通り、旧来の印刷を構成していたものを解体して、展示販売する格好となりました。


※下記一覧は出品されるうちの一部にとどまるものです。 
※価格はいずれも税込み、ただし予価となっております。正式な価格は会場でご確認ください。
※公費でのご購入も承ります。会場またはメール・お電話にてお問い合わせ、お申し出でください。
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□活字 販売受注等終了
初号 420円/一号 315円/二号 210円 各1点単価
一字一字、お好きな文字を拾っていただきます。漢字、平がな、カナからアルファベットや特殊記号などまで、幅広くご用意いたします。また、アルファベットや数字などはセット販売もいたします。細かい活字については量り売りを予定しています。

□字母 販売受注等終了
6ポ・12ホ揃い・明朝体 木箱入り一括 84万円
活字の生まれるもととなる、真ちゅう製の活字の鋳型

□欧文活字6ポ箱入一式 販売受注等終了
5万2千円(但し不揃い)

□活字組ペーパーウェイト 販売受注等終了
420円~  活版活字を慣用句、格言などに組んだもの

□トタン製罫線 販売受注等終了
300円~  各種飾り罫も

□スダレケース 販売受注等終了
2,500円  活字を収納する仕切りのついた木箱

□文選箱 販売受注等終了
500~800円  活字を拾う時に使う小さな木箱

□ステッキ 販売受注等終了
6,500円  活字の行組みに使う金属製の道具

□木製インテル 販売受注等終了
1,800円/一締め  余白を作るための詰め物

□組版 販売受注等終了
1,800円~  既に紙面用に組まれたもの

□紙型 販売受注等終了
300円~500円  活字の組版を紙で象ったもの

□銅製写真版版下 販売受注等終了
1,000~2,500円  時計や戦前の銀座の風景なども

□木口木版製商標版下 販売受注等終了
500円~8,000円  木の両面を使った二度刷用も

□木製活字・マーク類 販売受注等終了
200円~ 初号より大きい文字や会社のトレードマークなど

□罫線断裁機 販売受注等終了
8,500円 
トタン製の罫線の突き付けのため、厚みを45度で切り落とす道具

□罫線の角削り機 販売受注等終了
8,500円

□ウマ 販売受注等終了
1万5千円  活字を収納する箱を立て掛けておくもの

□植字台 販売受注等終了
28万円  長年、職人さんが実際に使っていたものを、一揃いで

□写植の文字盤 販売受注等終了
メインプレート 9,000円/サブプレート 1,800円
使用頻度の高い文字を集めたメインプレートは明朝体、ゴシック体などさまざまな書体を揃えます。特殊なものの多いサブプレートには、書体のバリエーションはもちろん、漫画のフキダシや囲碁などの専用記号、地図等の特殊記号を集めたものなどもお目にかけます。

□写植機械のレンズ 販売受注等終了
1,500円~2,500円 倍率の異なるものや平体・長体をか けるのに使うものなど。

□孔版印刷機 販売受注等終了
輪転式 35,000円/ローラー式 18,000円

□蝋引き紙 販売受注等終了
一箱 2,000円前後

□活版印刷セミオーダー 販売受注等終了
(1)名刺(片面印刷) 3,400円
基本料金 
(2)名刺(両面印刷) 4,500円
(3)ポストカード デザイン、文字数により2,600~3,800円

□文字盤のためのオリジナル関連商品 販売受注等終了
(1)文字盤展示用L型フレーム台 8,925円
(2)高輝度LED使用展示台 34,650円
(3)発光フィルムと高輝度LED使用
  ELバックライト展示台 29,400円
(4)アクリルモノマ 26,250円 
アクリルに文字盤を埋め込んだオブジェ

□洋紙・和紙デッドストック各種 SOLD OUT
複数枚セット 300円~

□紙見本帳 SOLD OUT 300円~

印刷解体 関連書籍他

この企画のため、以下ほとんどの商品は初見参モノ、店にもどこにも出さずにおりました。パリで買い、パリでも人様に借金し、カンダの市場で買って、買い続けて……ようやく肩の荷が下ろせる。かどうかは依然不明ではありました。

印刷

○LE TYPOGRAPHIE
6万5千円
1930年フランスで刊行、限定1000部。ポートフォリオに未綴じリーフ完揃い。当時の印刷技術、活字の設計など技術情報のテキストと、活版印刷所の作業を工程に沿って収めた写真によって構成される。写真からは活版印刷の版面の美しさ、職人さんたちの丹念な仕事ぶりなどが伝わってくる。


○グランド印刷の解説 SOLD OUT
4,500円
昭和26年刊行、初版。“グランド印刷は、簡易印刷の中の最も簡単な孔版様式のものであります”という56Pの本は、本文やカットは勿論、多色刷りの口絵、綴じ込みサンプル、装丁に至るまで、グランド印刷によるもの。
※この他、印刷史、印刷技術、用紙やインクなど印刷の構成物に関する書籍もこの機会に出品いたします。


印刷年鑑

○日本印刷需要家年鑑 昭和11年版(1936年) SOLD OUT
12万円
地味なタイトルとは裏腹に、ページを開けば優秀広告、優秀先端印刷物、セロファン印刷から、書体見本、あの竹尾さんの当時からセンスのいい紙見本(トップページの「印刷解体」帯の窓の部分)などまで、現物を多数綴じ込んだ実に豪華な一冊。杉浦非水、山名文夫等のテキストを含む。
※当レポートその1のページに書影があります。


○日本印刷大観 昭和13年(1938年)
5万8千円
需要家年鑑同様、現物綴込み多数の厚冊。東京印刷同業組合創立25周年を記念して出版されたものだけに、印刷の歴史や明治後期から発行当時までの印刷界の資料も豊富。



○PENROSES ANNUAL 一部在庫切れ
各冊1万5千~2万5千円前後
日本の写植機械のパイオニア、石井茂吉氏らがこれに触発されて写植を開発したといわれるイギリスの印刷年鑑。 やはり広告や優秀印刷の現物を多数綴じこんでおり、印刷技術、デザイン、タイポグラフィーなどの記事と併せ、 総合的な年鑑となっている。出品するのは戦前から戦後に亘る 1911-12、1920、1922、1924、1924-25、1925、1926、1930、1931、1950、1952、1956、1957、1958、1959、1960、1965、1968、1969、1970、1971各年版の21冊。



○CARACTERE NOEL1958 1960 1926 SOLD OUT 1959のみ在庫あり
各冊3万~3万5千円
フランスの印刷年鑑。こちらも現物綴込み多数。タイポグラフィー、写真印刷に関する見本、広告多数。出品はいずれも戦後の1958、1959、1960、1962年の各年版。

※現物の綴じ込み・貼り込みが多く、モダン・タイポグラフィの時代になかで表現レベルも高いものを集めた印刷年鑑として、他に
『LES ETAPES DE LA GRAVURE SUR BOIS 1933』、『BREVIAIRE DE L‘IMPRIMEUR ET DU BIBLIO PHILE 1931』、『LES LIVRES CHEZ EUX 1930』や、書籍の印刷見本を集めた『LIVRE D’OR DU BIBLIOPHILE 1928-1929』、『KLIMSCHS JAHRBUCH 1927』、『同1928』など(2万5千円~7万5千円)なども出品いたします。
いずれも圧巻。タイトルに惑わされず、是非、ページを開いてご覧ください。印刷年鑑はグラフィック・デザインの宝庫でもあります。


書体見本集

○ON TYPE FACES
4万8千円
1923年、限定750部記番。モノタイプ・ベネチアン、インキュナブラなど29書体の解説と印刷見本、詩などに文をとった組版例などで構成される。


○新式図案文字 SOLD OUT
1万2千円
昭和13年刊行。カタカナ・ひらがな96字・当用漢字2382字について、各々 15体の書体を起こしてまとめたもの。当然、手書き文字ばかり。


○TRAVAUX DES ELEVES
1930-31 1931-32 SOLD OUT
2万5千~3万5千円
書体と色彩パターンもしくは罫線のみで構成された紙モノのデザイン・テキスト。アール・デコとモダン・タイポグラフィをミックスしたものが多い。
出品するのは1928-1929年版、1929-1930、1930-1931、1931-1932、1936-1937各年版の5冊。

※書体メーカー発行の見本誌薄冊、日本の文字デザインやカット集なども会場に並べます。


広告年鑑等
二十世紀初頭より、広告の興隆は印刷技術の進歩とともにありました。
印刷技術とはすなわち複製技術であり、広告は間違いなく、複製芸術の一つです。

○Publicite 1934(仏) SOLD OUT
8万5千円
フランスの広告年鑑。現物綴込みを含むグラフィックを中心に、ディスプレイやパッケージデザインなどまで目配りして、その年の優秀・先端商業広告を紹介する。


○戦前雑誌『広告界』グラビアページ合本
3万8千円
戦前日本の代表的広告専門誌『広告界』の広告図案および写真グラビアページのみを1冊に仕立て直したもの。但し表紙はなし。1930年代のおよそ1年分か。


○商業美術ポスター集成
3万5千円
昭和10年刊行、商業美術連盟(大阪)会員作品と一般公募優秀作品を所収。


○GEBRAUCHS GRAPHIK SOLD OUT

4,500~8,500円

=International Advertiising Art ドイツの広告専門雑誌。広告関係の世界の先端事情を伝える月刊誌。デザインはもとよりイラストレーターの特集や印刷、紙まで視点は幅広く、号によっては印刷見本や広告見本の現物綴込みも。1928~1932頃発行の4冊を分売。

※広告・宣伝に関する戦前~戦後の国内の書籍も併せて出品いたします。


印刷専門雑誌

○BRITISH PRINTER

残部は2005年2月池袋西武目録で受注予定
各冊 5,500~7,500円

イギリス、隔月刊 1925年1・2月号~1933年1・2月号の内、47冊を出品。印刷技術、機械、用紙、デザインなど、印刷に関する総合誌。印刷見本や紙見本の現物綴じ込み多数、しかも号によっては仕掛け広告なども含む。
インキメーカーの広告に「バクストの青」といった流行色に関するものがあったり、レコード付きポストカード、ウッド・タイプ、ジャパニーズ・パーチメントの広告など、記事以外にも見るべきもの多数有り。


○The Inland Printer

残部は2005年2月池袋西武目録で受注予定
各冊 4,000~5,500円
印刷専門月刊誌。1927年3月号~1931年12月号の内、32冊。技術情報のほか、 毎号、レイアウトのページ、新聞の印刷などの記事有り。特集としてチェコのレイアウトとタイポグラフィー、 リノタイプなど。紙見本の現物綴じ込みなども。


○Printed Salesmanship

残部は2005年2月池袋西武目録で受注予定
各冊 4,500~7,500円
月刊誌。1930~1931年の内、15冊。印刷業界の商業的専門誌。 「サイドライン利用でキャンディーバー・ビジネスを」といった記事が散見される。



○THE AMERICAN PRESSMAN

残部は2005年2月池袋西武目録で受注予定 45冊一括 6万5千円
アメリカで発行されていた印刷専門月刊誌。1929年内10冊、30年12冊揃、31年・32年各11冊、1933年1月号。オフセット印刷に関する技術情報からインキの話、エンボス印刷など。印刷見本、紙見本などを含む。
写真31、32

※この他『BOOK BINDING MAGAZIN』1930~32年内13冊、『PAPER TRADE MAGAZIN』、チェコの1920年代印刷専門誌なども出品予定です。

※『THE NATIONAL LITHGRAPHER』1923~30年代前半発行分の一山は、落丁等のチェックが初日までに間に合いそうにありません。こうした品物や、途中で入荷したものなど、会期中随時、追加いたします。


すでに準備済みの紙モノ(木版や石版の広告等)など、ここではご紹介しきれないものがたくさんあります。また、会期中、活版印刷所から、文字盤の倉庫から、古本屋から、何が会場に運び入れられることになるか……そのあたりにつきましては、どうかときどき会場で、ご確認いただければ幸甚に存じます。ご来場を、心よりお待ちいたしております。