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15/09/05 謎のひとくちより 徳川宗敬・幹子夫妻による私家版オリジナル写真集『ヨーロッパの旅の思ひ出』、『USSR』、『JAPAN PHOTO ALMANAC 1939』

■……と云うわけで今週は先週の続き、『ヨーロッパの思ひ出として』と『USSR』2冊等のひとくちのご紹介です。
先ずは徳川宗敬・幹子夫妻の渡航の思い出を私家版の写真集にした『Erinnerungen an unsere Europareise』-「ヨーロッパの旅の思ひ出」と題された布貼上製ポートフォリオ入、写真紙焼オリジナル全30葉による写真集です。写真は欧州滞在中、同伴者として常にカメラを携えていたという徳川さんの撮り下ろし。
写真は20×15cm前後の比較的大きなものを中心に、極端に縦に長いなど変形版を含みます。台紙は薄茶色の比較的薄い紙と厚紙の二段構えで、いずれも上辺一辺のみ糊でとめられています。厚紙にはそれぞれ異なる欧文キャプションが空押しされるという実に贅沢なつくりです。さすがは徳川さん。
添付の小冊子『ヨーロッパの思ひ出として』は、写真毎のタイトルと簡単な解説をまとめたもので、記載されている発行時期は昭和4(1929)年5月。徳川宗敬のドイツ・ベルリン留学は大正15(1926)~昭和3(1928)年であり、帰国後時間を経ての発行となったのは、写真の選定から製作まで、得心のゆくまで手をかけたからではないかと、見る人にそんな印象を与える、とても端整な写真集です。
作風は一見して福原信三の写真との類似を思わせますが、改めて眺めれば、福原の写真よりも男性的で、ユーモアとヒューマニズムの視点が多分に含まれているように思われます。因みに、宗敬は長く緑化運動に尽力、幹子夫人に至っては戦後水戸市郊外に入植、麦わら帽子をかぶって自ら山林の開墾に取り組んだといいますから、写真は写す人の心を写す、のかどうかはさておいて、ここまで手の込んだ刊行物となると、一体どの程度の数作られたのか、いずれにしても一般の目に留まるマーケットに出て来るのは稀であり、小店にとっても一期一会になるに違いない1冊です。

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ソビエト・ロシアのプロパガンダ誌。世界的にその名を馳せる『USSR』も…


この写真集と一緒に市場に出品されていた20点ほどの写真紙焼きのなかに、高松宮と三笠宮とが並んで着席した集合写真1枚があり、また、別の、大型客船のデッキで撮影された集合写真には梨本宮らしき人が写っていることが今週になって分かったりで、実は最大の謎であり、かつまた、先週画像をアップしたマコフスキーの板絵の真贋にも関わる鍵となるのが「この一口の旧蔵者が如何なる人物なのか。つまり、誰が持っていたものなのか」、ということなのですが、今日までのところ特定には至っておりません。かなりの苦戦を強いられています。
ただ、本日画像にアップした1930年代初めのソ連のプロパガンダ雑誌
『USSR in construction』 - いまもってプロパガンダ誌の代名詞であり、日本でもかつて『FRONT』制作にあたり佐野、ではなく原弘、など東方社の面々が参照、さかんにパクったことで知られます - が2冊、そして本日アップしたこの下の画像・日本の同盟通信社発行の『JAPAN PHOTO ALMANAC 1939(昭和14年版)』などが含まれていることから見て、外交関係に関わる華族か皇族、有力な武官クラスの人物であることは間違いなさそう。ああそれなのに。実に巧妙に肝心のそこのところにつながる何かがことごとく抜かれている気がしてなりません。この一口、本当に怪しい。
ちなみに、先週ご紹介した件のマコフスキーの絵画。これを贈ったとされるドブガレフスキーソ連大使の日本着任は1927年4月14日。同年翌5月には、東京朝日新聞社による「新露西亜美術展」が開催され、名誉会長として後藤新平と駐日ソ連大使ドブガレフスキーが名前を連ねているといいます。ドブカレフスキーはの転任は着任からわずか7ヶ月半、1927年11月7日のこと。何となく、ではありますが、何かの拍子で展覧会の作品と一緒に到来した移動派の小品が名誉会長の元に残され、転任に際して手放した、という推測も完全に無理とは云い切れないのではないか…というのは商人の欲目というもの?なんでしょうか。そうですね。はい。

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例えば日本のこんな対外広報写真年鑑も… 威勢がよくて情緒的でしかも格好の良いものは簡単に信用するんじゃあありませんよと歴史は教えてくれています。

というわけで、このひとくち、店頭では明日から少しずつご紹介できればと思っておりますが、どのように切り分けて販売するか等、あと数日、お時間をいただくことになりそうです。なかなか決着がつかず力不足を痛感している古本屋、もっと勉強と調べ物に努めないといけないなと、猿でもできる「反省中」。

■「トーキョー2020」なんて呼称は、この度の騒動で初めて知りました。某デザイナー氏のお陰です。昨日来、フェイスブックのタイムラインに“世界的建築家・安藤忠雄氏による経営者向け講演会「仕事をつくる」”の告知が度々アップされるのを見るにつけ、何だか物悲しいような気分を味わっております。ま、確かにこの方、2020の関係者のみなさんのために、たっぷりと仕事をつくってくれましたけど。
8月末日、あの圧倒的な市民の意思を、たったの3万人と一言で片付けちゃったかと思うと、実際、大新聞は一面で伝えようとしないし、統合幕僚長は去年の12月に勝手にアメリカと約束は交わすわ、こともあろうかソーリが国会さぼって大阪まで出掛けていってお仲間うちの民放ワイドショーに出演するわぁ、いやはや全くもうこの国のアタマの方は完全に壊れてます。ほーかい。時の政府の恣意的な運用が許される憲法なんて、もはや憲法とは呼べようはずもなく、一体そんな国のどこが先進国であり法治国家であり自由な民主主義国家なんでしょ。
今週、唯一救われたのがこちらの「70年宣言文」。ここではアタマが、精神が言葉が、まだまだしっかり生きてます。→ http://site231363-4631-285.strikingly.com/





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