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15/08/08 夏木版刷りの図案集2種 まりや書房が選んだ古典意匠『草紙文様集』と芸艸堂が発行した西洋図案『最新フランス図案選集』

■ぎりぎりになってのお知らせで申し訳ございません。来週12日(水)より19日(水)まで、夏季休業させていただきます。この間は、店舗営業、インターネットによる通信販売ともに休み、お問い合わせ、ご注文等につきましては、20日(木)の営業再開とともに順次ご返答いたします。ご不便をおかけいたしまして誠に恐縮に存じますが、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
日本列島じゅう、赫々と燃えさかるような猛暑続き。みなさまどうかくれぐれもご自愛下さいますように。そして良き休日をお過ごし下さい。

お休み前の更新は再びの木版図案系商品2点です。
最初は『草紙文様集』。大正末期に京都で創業、同じく京都の図案集の版元として知られた芸艸堂と同様、織や染、器の絵付けや各種工芸品に応用可能な図案集や美術書の出版を手掛けた まりや書房の発行です。
入荷したのは布装・経本仕立て(両面使い)の2冊。1Pに1枚・1冊に52枚の木版画が糊付けされており、奥付は見当たりませんが、『草紙文様集 ま里や書房』と刷り込まれた版画が何点か出てきてタイトルと版元が分かります。
調べてみるとこの部分、つまりタイトルと版元名が刷られている部分は、実は包み紙の表側にあたり、これに文様=図案のペラ-こちらも木版-を包んで定期発行・頒布していた様子がうかがえます。また、ほぼ同デザインの経本が他にも残されていることから考えると、まりや書房が定期購読者などのために経本も用意していたか、或いは在庫分を経本に仕立て直して販売していたのではないかと推測します。
刊行年は不詳ですが、おそらくは まりや書房創業当時の大正末か昭和初期。江戸時代の大衆文学書である草紙の袋や扉に実際に使われていた図案を木版画で復刻して販売したものですが、先行する芸艸堂に比べ、図案も色使いも新感覚・アヴァンギャルドな傾向が強いまりや書房の図案集のなかにあって、『草紙文様集』は異色と云えるかもしれません。とはいえ、盤面を白黒の碁石と木地だけで表現していたり、華やかな裂の袋の一部分だけを大胆に配置していたりと、あまたある草紙本の文様から何をどう選のぶか、その着眼点のユニークさはこの頃から健在。“まりや書房発・江戸期日本のモダニズム”とでも云うべき図案集です。


■「芸艸堂」と書いて「うんそうどう」。明治24(1891)年に京都で創業した木版摺技法による美術書の出版を専門的に手掛けてきた出版社です。若冲や酒井抱一、或いは神坂雪佳など高名な、もしくは新進気鋭の文人、画家、図案家の作品集から有職故実、能装束や半被といったアイテムに注目した図案集まで、かなり広範に「図案」というものに目配りしていた芸艸堂ですが、こんなものを出していたとは全く知りませんでした。和もの専門と思っていた芸艸堂によるまさかの洋もの、『最新フランス図案選集』がそれ。もちろん目にするのも入荷したのも初めてです。
『最新フランス図案集』は木版刷の図案40葉(未綴じ)を上製ポートフォリオに収める体裁で、昭和5(1930)年に発行されました。ポートフォリオ - 残念ですが、背の痛みが甚だしくいまにも真っ二つになってしまいそうな状態 - の表紙の内側に貼り付けられた、永井白ビ(=サンズイに眉)の名による短い挨拶文が当品に関する唯一の手掛かり。
挨拶文で永井が云うには、最近入手したフランスの図案は、これまでと違って高雅な落ち着きと明るさがあり、色調もよく、今後の傾向を示しているように感じられる。そこで、入手したフランスの図案中「優秀なるものを選抜複製して、同好の士の参考に供」するために出版することにしたとの由。この永井という人、昭和の初めに「十日町小唄」という十日町織物のCMソングの作詞で手名前が残っている他、詳細は不明。繊維業界周辺に居た文化人といったところでしょうか。
その永井さんご本人の言にある通りだとすれば、フランスで出版された図案集のパクリですね。ですが、この当時のフランスの図案集はほとんどがリトグラフかポショワールか、そのいずれかだろうと思われるので、芸艸堂ならではの高度な木版技術が生かされている点が、日本版を元版とは異なるユニークなものにしているのではないかと思います。同一図案の元版を未見のため、断言は避けなければなりませんが、エッジが柔らかく、色の濃淡の出方などに木目の具合が反映される木版のプレートは、全体に落ち着いた色調で統一されていることもあってか、少なくともこれまで見てきたフランスの図案集の印象とはかなり異なって見えます。また、40葉のほとんどが色面構成による抽象表現となっており、昭和初期とはいえ、日本で出版された図案集としては珍しい例ではないかと思います。
芸艸堂ものコレクターにとっては、入手困難な方に数えられる(はず!)の1冊です。

「戦争放棄なんて、奇跡的なことなんだ。笑っちゃうくらい。よくそんなことが書かれたなと思うわけ。だからこそなくなったら二度とつくれない。だって非現実的だから。だからこそ、絵空事でもなんでもいいけど、その文面は残しておかないといけない。」https://twitter.com/ruri_land
日本は、特別な国のままであってほしいと思います。
酷暑が続いております。みなさまどうかくれぐれもご自愛の上、良き休日をお過ごし下さい。

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