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15/03/21 1920~30年代 舞台芸術の前衛を見る1冊 / 戦中のグリコのおまけ 未使用完品極美


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■名実ともに、春の到来です。3月21日(土)、2015年春分の日の新着品は、古本屋のことゆえ おろしたてのピカピカとはいきませんが、どれも小店にとっては初モノとなりました。
先ずはレオン・ムーシナックの著書『TENDANCES NOUVELLES DU THEATRE』
1931年にパリで発行された当書は、舞台芸術における前衛を取り上げたもので、フランス、ドイツ、チェコやロシア、そしてアメリカなどで実際に上演された演目から、演劇だけでなくバレエやオペラにまで目配りしてピックアップ。巻頭に置かれた総論から先は作品毎に紹介していく構成で、舞台美術や衣装のデザイン画 - カラー図版は全てポショワール! - さらに舞台写真など、図版に124Pもの紙幅が割かれています。
著者であるムーシナックは、戦前、とくに前衛映画における理論と批評の分野における仕事で知られた人ですが、舞台芸術についてもどうやら筋金入りの前衛指向。コクトー作・パリの6人組(の内の5人)が音楽を担当したバレエ・スエドワの「エッフェル塔の花嫁花婿」、バレエ・リュスからはナウム・ガボとペブスナーが美術と衣裳を手掛けた「牝猫」、未来派のマリネッティとエンリコ・プランポリーニによるパントマイム「カクテル」、タイーロフの演出・エクステルの美術でカーメルヌイ劇場で上演された「サロメ」、ヴェスニンが美術を手掛けた「フェードル」、そして、演劇における構成主義の代表作メイエルホリド作・ポポーヴァ美術による「堂々たるコキュ」などなど、「何を取り上げたのか」ということそれ自体がそのままムーシナックの批評となっています。ちなみにもっとも多くページを割いているのがロシアのメイエルホリドとベルリンのマックス・ラインハルトで各6ページ、プランポリーニの3作がこれに続いてこれぞまさしく1920年代の前衛報告。映像が残っていない分余計、せめてムーシナックの言葉が読めたならと、自分の不勉強と頭の悪さとを呪いたくなる1冊でもあります。人生取り返しがつかない。

あらゆる本・印刷物のうち、状態良くかつ完全な状態で残されることが最も珍しいのが子ども向けに作られたもの。今週2点目は、ほぼ完全な状態で出てきたのに本当に驚いたグリコのおまけ全6種+1枚。
どちらも昭和14年発行の冊子①『組立飛行集』と②『組立軍艦集』は切れ込みの入った紙製模型集なのですが、細かな部品1点、綴じ込まれているグリコ宛てのハガキに至るまで未使用欠品なし、かつまたシミひとつ見当たらない極美品。さらに『組立飛行機集』には③『航空機型グライダー』の型紙が挟み込まれ、『組立軍艦集』には冊子とほぼ同サイズに折り畳まれた④『軍艦将棋盤』(=組み立てた軍艦を駒にして遊ぶことができます)までついていて、ここまでくるともう激レアと云えそうです。


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他に、先の2冊の冊子と同形の⑤『面白くて為になるグリコ文庫 軍歌集』(昭和13年・重版)、さらに専用のファイルにカードを綴った⑥『小学生 世界一周スタンプ』が1冊(絵葉書サイズのカードが5集98枚。5集100枚が完揃いなので残念ながらこれだけ2枚欠け)。こちらは裏面に所有者の好きなようにスタンプを押せるスペースが設けられていて、この部分を使用したものが混じります。こちらは昭和11年頃のもの。 さらにさらに、⑦『グリコ豆新聞』昭和15年春号が付いた一式です。
さて、これら一式、「軍艦集在中」と印刷された封筒から、京橋区木挽町にお住まいだった昇クンの旧蔵品だったものと目されるのですが、これだけ手に入れるのに、一体 いかほどの投資が必要だったのかと素朴な疑問が浮かんできます。これに答えてくれたのが『グリコ豆新聞』でした。同新聞によれば、商品についている引換券20枚で軍歌集または国旗集、35枚で組立飛行機集、組立動物集、組立軍艦集のいずれか。つまり、昇くんは冊子3冊を入手するだけでも引換券90枚、『世界一周スタンプ』まで入れると、おそらく最低120枚、もしかしたら160枚くらいは必要だったのではないかと思われます。キャラメルの値段を調べてみると、1箱10銭ほどだったと云いますから1円20銭から1円60銭、いまなら1万から2万円弱くらいでしょうか。木挽町の昇クン、どうやらいいとこのおぼっちゃまだったようです。づくうらやましい。

■グリコのおまけの中にだって、時代の空気はちゃんと刻印されていて、『軍歌集』に掲載されている「凱旋」という歌には「仇は皆 跡もなく 攻め滅ぼしぬ 心地よや 心地よや 此の勝いくさ 我国に我が君にい向ふ者は 斯くのごと討ちすてん」という歌詞が出てきます。敵を滅ぼしたことを心地好いと歌いあげる神経を一体何と呼べばよいのでしょうか。戦争とは、いつの時代も人を狂気に駆り立てるものです。「護れ満蒙の生命線」という歌には「わが皇国の権益を 犯す奴ばら打払ひ 雪の朝日を背にうけて 護れ満蒙の生命線」という歌詞があります。「五族協和」と云い、「大東亜共栄圏」と云い、美辞を連ねながらしかしその本質は、皇国=日本一国の国益のことしか考えていない身勝手な戦争であったことは明らかです。そして、「愛国行進曲」には「往け 八紘を 宇となし」という件が出てきます。「八紘一宇」というのは侵略戦争という本質を糊塗するのに使われた言葉だったなんていうことは日本人の常識だと思っていたのですが、もはやそれも通じなくなってしまったようです。
そして、何より最も驚いたのは、先の戦争でこれらの言葉を使い権力と世論に阿り、戦後、その反省から出発したはずの大新聞が、国会で国会議員が「八紘一宇」を堂々と称賛してみせても、揃いも揃って問題視している気配をほとんど見せないということでした。八紘一宇という言葉が一体どのように使われていたのか、その実例ならそれこそ自社内に腐るほどあるはずの大新聞の沈黙。もはや誰が信など置けましょうか。

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