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15/02/07 日本人が出会った1930年代東欧アヴァンギャルドの蔵書票と1985年のロシア絵本


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下段が当書に収録されている木版刷りの蔵書票。上段中央の彩色された蔵書票は小塚省治の蔵書票。上段右端が1937年にプラハから出された書類。

■ありとあらゆる紙モノの中で、古書店が扱うのに最もふさわしい紙モノとは?-例えば「栞」がそうでしょうし、新刊書店で本を買うとかけてもらえるカヴァー(ご存知かと思いますが「書皮協会」という蒐集家クラブもあります)のことなどが思い浮かんでくるわけですが、しかし、好事家度、贅沢度ともに、書物にまつわる紙モノの筆頭に挙げられるのは「蔵書票」ではないかと思います。
蔵書票、或いはエクスリブリスと呼ばれるそれは、多くが銅版画や木版画によるもので、好みの作家を指名し、さらに場合によっては好みのモチーフを指定し、発注者である自らの名前を作品の中に折り込んで作らせる蔵書票は、愛書家なら一度は作ってみたいと考えたことのあるに違いない、書籍にまつわる王道の紙モノです。
「王道もの? 扱いませんヨ。」といつもは見向きもしない小店 - 実は他のモノの隣に並べてしまうと普段扱っている紙モノがショボく見えちゃうんじゃなかろーか?という小心ゆえ扱ってないだけなんですが-にとって、先ずもって入札するケースが稀なアイテム。がしかし、こればかりは買っておかねばと思ったのが、今週の1点目。1930年代東欧の蔵書票のコレクションでした。
最初に目に入ったのが画像でご紹介した『EKSLIBRYSY  KAROLA HILLERA』。1927年にポーランドで限定250部が発行された内の48番本文頁に貼り込まれている木版刷14葉のオリジナル蔵書票を見ると、デザインがまるで構成主義、或いは未来派というアヴァンギャルドぶり。王道ものにはありがちなことですが、蔵書票のデザインは一般的に保守的で、この作品集に見られるような前衛的・抽象的表現というのはこれまでほとんど目にすることがありませんでした。同じ一口で落札したものを見てみると、イギリスやアメリカなど英語圏の蔵書票や関連書籍がやはり従来型の蔵書票なのに対し、この時代、どうやらチェコやハンガリーやポーランドといった東欧地域の蔵書票は段違いに前衛的だったようで、ドイツ表現主義やロシア構成主義、抽象主義などの影響を色濃く留めています。参考画像として左上、「営業日案内」に使っているものをご参照下さい。
調べてみるとKAROLA HILLERAというのはポーランドのグラフィック・デザイナーの名前。写真家として、また美術批評家としても活躍した人で、1920年代の構成主義運動や、1930年代の抽象主義グループを主導した人物のひとりとして東欧美術史に名を残した人で、当書には署名も添えられています。


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上段左端の切り抜き部分が作家の自筆署名と識語。

このコレクションには大切な挿話がもうひとつ。冊子や書籍の姿を保ったまま保存されていたものには、「SHOJI KOZUKA」名の蔵書票が貼り込まれています。つまり、今回落札したものが蔵書票を趣味とする方たちの世界ではよく知られている小塚省治の旧蔵品だったというわけです。小塚宛ての、1937年の押印のあるプラハからのインヴォイスも出てきました。
小塚省治は1901年生まれ。蔵書票の作家・蒐集家であり、1933年から1939年まで日本蔵書票協会を主宰した人。『EKSLIBRYSY  KAROLA HILLERA』には手書きで「No.3080」とあり、いま小店が落手することのできたものが、小塚コレクションの氷山の一角のそのまたかけら に過ぎないことを物語っています。
1942年に小塚没してから70余年。他の3,000点もまた、「うわっこれは…」とか「げげっなんだなんだ?」とか どこかで誰かを驚かせていた/いる のかと思うとちょっと楽しい。へへへへ。
*追記 小塚コレクションとして改めて全体を見てみると、バラしてしまうことで意味が失われてしまうことが出てくるのではないかという印象が強くなってきました。昨日書いた段階では、バラ売りを前提としておりましたが、これを変更させていただく可能性が出てきております。詳しくはお問い合わせをいただければ幸いに存じます。誠に申し訳ございません。前言撤回は商人にはあるまじき振る舞いという自戒の念を新たにしつつ、ご理解を賜りますよう平にお願い申し上げます。

今週の2点目。こちらは落札したまま数週間放置、最近になって子細に眺めていて「げげげ!」と驚いた物件。タチヤーナ・アレクセーエヴナ・マーヴリナが絵を担当した軽装薄冊のロシア絵本4冊のうち、『ТРОЙКА (troika)』と『Выбирай Коня Любого(Choose Any Horse)』の2冊には1985年という年号とともに書かれた自筆署名が残されていました。
で、今回初めてタチヤーナ・アレクセーエヴナ・マーヴリナという人について検索してみてさらにまたビックリ。1900年生まれ。1921年ヴフテマス(!)で絵画を勉強、1929年ロシア・アヴァンギャルドのグループ13に参加(!!)とくればこれはもう筋金入りの前衛者、もちろん最も良き時代のロシア絵本も見ていたはずで、なるほど描線から色彩感覚まで、一緒に入荷した他の作家絵本と比べ格段に上と見ました。戦後と云って簡単に片付けていてはだめだと痛感した次第であります。
それにしても。入札した段階では全く気付いていなかったこうした余禄は、本当に得した気分が味わえます。ひっひっひっ。

■小塚コレクションの蔵書票は関連書籍など含めギフトボックス1箱分ほどが入荷、これにはバラ売りできる一枚の状態のものも多数混じっています。武田忠哉『ノイエ・ザハリヒカイト』3冊、紙モノ好きの同人誌『雅楽多市』4冊など、今週は本ではない紙と薄い雑誌がひとまとまり、土曜日には店に入ります。

市場のスケジュールの関係で来週は新着品の更新については1回お休みをいただきます。
 

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