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14/08/09 夏休みのお知らせ 新着品のご案内は8/11に → 8/12追加! 戦後東京風景より


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■みなさまお元気で、ご無事でいらっしゃいますでしょうか?
と、真面目におうかがいしたくなる猛暑だったり豪雨だったり。遅ればせながら改めてお見舞い申し上げます。
すでに「残暑」の時期を迎えながら、まだまだ続きそうな猛り狂う夏に音を上げまして、小店、夏休みを頂戴いたします
来週12日(火)は通常営業いたしますが、翌13日(水)より20日(水)まで、店舗並びにインターネットによる通信販売ともお休みさせていただきます。毎週金曜深夜~土曜未明このページの更新も1回休み(但し、11日には必ず加筆・追加いたしますのでお見落としなく! )、21日(木)より通常営業に戻ります。
一週間くらい古本のことはすっかり忘れて、なぁ~んて是非にもそういきたいところですが、溜まりに溜まった作業や処理や勉強や調べものや考え事やその他もろもろ抱え込んで、まことにもって暑苦しい引きこもりの日々となりそうな小店店主の夏休み。ツケは必ずまわってくる。

■今週出掛けた全ての市場の中で、これは買わなければいけないな。と思い込んだ商品がこれ。何だかどうしても欲しいゾ。 買えなかったらあとあと後悔することになるんだろーな。と、いまとなっては思いこみだけでが先行した結果、ぶっちぎりの札(だったらしい…)で落札した写真アルバム3冊。敗戦から十余年を経た1952~1953(昭和27~28)年にかけ、写真を趣味とする無名氏が、自身の地元と見られる豪徳寺・山下界隈(世田谷区)から銀座、新宿を中心とする都心の繁華街に取材、撮影した約340点にのぼる写真紙焼きが貼り込まれているものです。
古本屋になった当初から、写真に残されている例えばファッションや髪形、街の風景や生活の断片といったものが面白くて、戦前から戦後まで、個人が撮影した写真アルバムというのを色々と扱ってきましたが、私の知る範囲では、戦後の東京のいかにも戦後らしい都市風景を素人が撮影した写真は、戦中に戦地で撮影された写真より数・量とも少なく、以下に例を挙げていきますが、今回のように撮影者の身辺を離れ、被写体をあくまで街の中の求めた写真アルバムというのは非常に珍しいと思います。また、写真1点ごとに撮影した年月日と場所、使用したカメラやフィルムまで、きちんとメモ書きがあるのも、このアルバムの大きな手柄といえるでしょう。一部、説明が端折られているものもありますが、よくよくつき合せて見て行くと、他の写真の被写体を別の角度から撮ったものだったりするので、ほとんどの写真についてその背景が把握できる格好となっています。今週は、画像2点とも、この3冊のアルバムからとりました。
アルバムを見て強く印象づけられるのは、戦争の結果もたらされた当時の日本の圧倒的な貧しさです。そこに生きる人たちの - 大人ばかりか子どもたちまでもが見せる - 厳しい表情です。


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三軒茶屋あたり。電柱に「明るい都市の建設は 先ず衛生の一歩」からと標語の掲げられた電柱脇、しゃがんで煙草を吹かすワイシャツとズボン姿の男性の足元は地下足袋です。山下の住宅街。道はまるで泥沼のよう、盛大にぬかるんでいます。豪徳寺。道路工事の現場では、モンペ姿の初老の女たちが石を篩にかけています。ぼろ市では無造作に山積みしたゴム靴の横で青年が真顔で口上を聞かせています。
新宿の繁華街。ショーウィンドー脇に小さな机を出し、空気を送り込むと跳ねて見せるゴム製のカエルのおもちゃを売る女性の後ろには、幼い男の子ふたりの姿がありました。同じ新宿の大通りでは、スイカの荷降ろしの光景が収められています。トラックの上からスイカを投げているのは父親でしょうか、受け取る側の青年の足元を見ればはだしです。石造りの立派な柱の横にぽっかり穴を穿ったかに見える暗がりがあり、そこに身を寄せ、お客が来れば地に這いつくばって靴を磨く女性はまだ若く、隣で道行く人を眺める犬は何だか憮然とした表情に見えます。両目をガーゼで覆った白衣の男。私が子どもの頃には、路上で物乞いをする傷痍軍人の姿が繁華街ではつきものだったのを思い出します。リンゴ箱の上で雑貨を商う親子づれは、自分たちが食べているピーナッツを手のひらにのせ、白人かハーフのように見える小さな女の子に差しだします。
銀座の雑踏。松屋の入口に吸い込まれていく洋装の女性たちや、三越の店内で熱心にショーケースを覗いている女性は、よほど恵まれた人たちであったに違いありません。松屋の屋上から撮影した写真には、路面電車と銀座の柳、そして、地なりのビルの屋上で新聞を読む人の姿が写っています。路面電車の扉には、「車外ニ乗車御断リ」と書かれています。路上に小さな机を出して新聞雑誌を売る女性は、小さな男の子に何か飲ませながら店番です。露天で品物を売る女性たちは、ある人は幼子を背に負い、ある人は編み物をしながらと、本当によく働いています。
品川の引き揚げてきた人たちの施設では、待ち人を探して立ち尽くす女性の姿があります。
いまの街中から消えてしまったサンドイッチマンと靴磨きがいかに路上に多かったか。新聞や雑誌、宝くじを売り、風車をかざりたて、敷物の上に瀬戸物を並べてと、路上の物売りの多様なことも、貧しさを強く印象づける所以かも知れませんが、しかしそれにしても、路上に生活の糧を求める人、あるいは生活の場そのものとしている人たちの、皆一様に厳しく生真面目な表情には、胸に迫ってくるものがあります。
このアルバム、校名を記した学園祭の写真があったり-江口隆哉の写真2点含む -その周辺地域の写真があることなどから、いまも世田谷にある日本学園の写真部に所属していた高校生が撮影していたものと見られます。アルバム中にはDEP屋のご店主を写したものもあり、いまは名前の分からない、このアルバムの作者である高校生が、自分専用の写真機をもって自由に写真を撮ることのできる状況にあったことは明らか。無名氏、そうとう恵まれた家庭の子弟だったのでしょう。1952~1953年当時16~17歳のひとりのティーンエイジャーが敗戦日本の首都を歩くなかで撮った写真は、一切の演出なしに、懸命に生きる人たちの営みと表情とを伝えて実に見事です。絶対に捨ててはいけない、貴重な記録。いま、こうしたものたちが「断捨離」とかいう合言葉とともに捨てられようとしているとすれば、私たちはそのまま、大切な歴史の断片を失うことになりかねません。身近にあって捨ててしまおうかどうしようかと迷う場合は、是非小店までお問い合わせ下さい。

7月17日のことになりますが、三宿の古書店「古書いとう」のご店主で、『チリ交列伝』(ちくま文庫)の著書のある伊藤昭久さんが急逝されました。
三宿に移転される前、学芸大学にお店があった当時、古本屋になる前の私は伊藤さんのところにお邪魔しては長居をきめこみ-思えば性質の悪い客でした-古書店という場所で交わされるお客さんと店主とのどこか浮世離れしたようなやりとりを、とても面白く横目で眺めていたものです。そんなふうにして、「古書いとう」で過ごした時間がもしなかったとしたら、私は古本屋になっていなかったのではないかと思います。
伊藤さんは、私が古本屋になれないものかと考えていた時に、最も親身になって考えて下さった恩人であり、私が組合に加入する際には保証人にもなって下さいました。
伊藤さんは高校野球の大ファンで、出身高校の夏の高校野球大会の応援に早朝から出掛けて行った野球場で倒れ、搬送先の病院で死亡が確認されと聞いています。
その2日前、組合の支部報で入院されていたのを知り、私は電話をかけました。思いがけずご本人が電話をとられ、内視鏡手術のため入院したがいまは全く元気だからと聞いたのが、そして、「心配して電話をくれて有難う」と云っていただいたのが、最後となりました。
伊藤さんが応援に行った母校というのが、実は日本学園。このアルバムを残した方が在席していたと思われる同じ学校です。計算してみると、アルバム制作者より伊藤さんの方が5年ほど後輩になるようですが、こんな時に市場に出てきたのも何か因縁めいていて、やはり私が買わなければいけなかったのだろうと思われてきます。
主を失った「古書いとう」は、今月20日頃まで閉店セールを行い、後はネット通販などからも撤退、廃業されると伺っています。私と違って生真面目な伊藤さんは、きちんと評価してしかるべき文学書や人文系の堅実な本を熱心に集めておいででした。20日までと日数が限られていますが、この機会にひとりでも多くの方にお訪ねいただければと思います。
「五反田遊古会」「東急大古本市」など即売会などでも、いつも威勢よく活躍していた伊藤さんには、にぎやかなお別れの方がよろこんでもらえるだろうと思うのです。

■今週はこの他、19世紀~20世紀初頭の古い洋書約30冊明治~大正の英語を中心とした教科書・副読本類約80冊1950~60年代の海外旅行パンフレット類(バラ売り)70点前後などが入荷、値段をつけたものから店頭にお出しいたします。

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