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13/03/23 ワイマール共和国の紙幣はハイパーインフレの遺産 / 活版印刷好きには細部が見逃せない大正14年の『花形見本帖』


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ドイツ=ワイマール共和国、1921年ハイパーインフレ当時、各州で造幣されていたペニヒやマルク紙幣。つらい歴史を背負った美しい紙モノ。

■サイズも紙質も印刷手法もデザインも統一感なく、ばらばらでつかみどころのないこの紙たちは一体何か? 随分古い話になりますが、これとよく似た印象の、けれどもっとペラペラの紙モノと、セメント色をして軽くてザラザラした小さな円形の物体がそれぞれ数種類、ワイマール共和国と呼ばれていた時代のドイツから帰朝した人の旧蔵品のなかから出てきたことがあります。何だか分からないまま、市場で落札したその旧蔵品をまるごとお客様にお見せしたところ、「ああ、これはレンテンマルクになる前の紙幣と貨幣。」と謎はたちまちのうちに氷解。しかしそれにしたって紙幣とか貨幣とかいうものがこんなにチープでいいものなのかと尋ねれば、これまたたちまちにして「ワイマール共和国のハイパーインフレで、とにかく造っても造っても追いつかなかったからね。」とお答えをいただきました。当時、貨幣も紙幣も州ごとに造幣されており、しかも単位もどんどん変わっていったらしく、その度にデザインも変更されたらしい…といったことを教えていただいたのもその折のことでした。本日落手したのはワイマール共和国当時のペニヒとマルクの紙幣ばかり約70点。デザインの重複も少なく、コンディションも上々です。
発行年のあるものはほとんど1921年と記載、また、中にはまだ辛うじてエンボス空押しやナンバリングの入っているものもありますが、ベルマークかと見紛うばかりのチープなものなども。それでもまだ特色印刷や、なかには石版刷のものなどもあって、4色分解のカラー印刷技術がまださほど普及していなかった当時の印刷技術が幸いして、印刷物としての魅力は他の1920年代の多くの紙モノに比べても、決して引けを取っていません。さらに。ハイパーインフレというドサクサ紛れてのことか、万策尽きて何でもありだったのか、階段から転げ落ちる聖職者(と思われる人)だとか、蛇のような生き物を囲んで何やら談議をしているらしい7人のおじさんだとか、野の草を食む口の反対側から同時にフンをしている馬のシルエットだとか、人面猿としか見えない生き物だとか、およそ紙幣にはふさわしからぬデザインがあるのも不思議。


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画像で細部がお伝えできていないのがとても残念。ご興味をお持ちの方は店頭で現物をご覧下さい。

余白を埋めるテキストも長文が多いので、ドイツ語が読めればますます面白いに違いなく、それが残念。
2013年の日本でアベノミクスの目指す目的とは全く異なる原因によって引き起こされたインフレの遺産ともいうべきものですが、一枚一枚眺めながら、がしかし「インフレ」という点では同根なんだなと、そんなことを考えさせられる紙モノたちです。

こちらは活版印刷で使われた装飾用アイテムのカタログともいえる『花形見本帖』。表紙には「大正14(1925)年改正」とあります。見本帖の版元、つまり商品の製造販売元は東京は小石川区にあった「博文館印刷所販売課」。明治時代に出版社として創業すると総合雑誌『太陽』の創刊で成功、後にトーハンとなる取次を発足、広告会社として内外通信社を設立するなど興隆を極めた「博文館」が開設したのが「博文館印刷所」であり、後にこれが「共同印刷」の前身となります。
『花形見本帖』を手にする度に関心するのはその多彩なアイディアです。とくに飾り罫にも使える花形は同じ柄4本で大きな飾りになるし、3本あれば罫線の角=コーナー部分の柄がつながるように出来ているなど、実によく考えられている上に、デザインとしても素晴らしい!
あらゆる意匠がいま、データ上で簡単に入手できるように思い込みがちですが、いやいやそれでもまだ、活字(文字)から花形(装飾)のひとつひとつまで、細部にわたって緻密に構想され、繊細にデザインされていた活版印刷所の装備には到底及ばないゾと断言しておきたいと思います。断言できちゃう理由については『花形見本帖』を手に、是非実感されたし!

■今週はこの他、昨日の市場に出品された丸谷才一旧蔵書から『マン・レイ』他ベル・エポックのパリを中心とした和書18冊(ページの角を折ったもの多数)、戦前日本の化粧品関係の空き箱15点パール・バック署名入り書簡2通(タイプ打ち)などが明日、店に入ります。
東京では早くもこの週末、桜が見頃を迎えるようです。季節ばかりが矢のように飛んでいきます。花にうかれる前にもっと働けという声と、お願いだから少しは休ませてくれという声とが頭の中でせめぎ合う、小店店主にとってはむしろ木の芽時とでも呼ぶべき季節なのかも知れません。あ。大丈夫。暴れません。いやほんと。

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