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12/06/23 マッコルランとブシェによる大人のための絵本のような本と、リシツキーによる大人のための本のような子どもの絵本


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右下が表紙 背から表紙側に向かって欠けがあるなど、外装の状態については多少問題があります。リトグラフの図版は退色もなく状態良好。

■市場に出掛けてゆけば、初めて見るような古書古紙が次から次へと目の前に現れ、最近は随分冷静になったとは云え、それこそムキになってでも落札したいものだって出てくるわけなので、すでに落手したものについては基本的に全て一刻も早く、たくさん売れてくれることこそが、古本屋にとって最高の幸せというものなのですが、それでも年に何度か、この本は手元に残ったら残ったで良しとしたいと思う本に出会うことがあります。
ピエール・マッコルランのテキストに、リュシアン・ブシェのイラストを石版刷(リトグラフ)で添えた挿画本『BOUTIQUES DE LA FOIRE』はそうした“在庫歓迎本”です。1926年、限定515部の発行。タイトルのfoireは一般に「見本市」を意味するようですが、射的や“額縁ショー” ( 彼の地では昔からあったらしい… ) などの見世物、ヌガーのお店やオルゴール、回転木馬等の遊具など、マッコルランのとりあげているboutiques = お店の内容から見て、「お祭りの出店」とか「臨時(仮設)の店」といった方がお分かりいただきやすいかも知れません。偏愛系作家の系譜に連なるらしいマッコルランのテキストは、1店毎にゆったりと活字を組んで1.5ページほどの短いもので、それぞれの店について歴史上の人名を交えるなどしてもっともらくし紹介している模様。噫。フランス語を解さないのが悔やまれます。
挿画のリュシアン・ブシェは『ル・リール』や『ファンタジオ』誌の漫画家として出発、1920年代にはシュルレアリスムから着想を得た広告でその名を知られるようになります。ちょっと奇妙な味のあるエール・フランスの広告など、画像をご覧になれば「ああこれね!」とお判りの方もいらっしゃるはずですが、『BOUTIQUES DE LA FOIRE』の挿画はシュルレアリスムからは遠く - おそらくは『ファンタジオ』で活躍していた当時の作風に近い - コミカルで洒脱なものばかり。何より特筆すべきは、描線のタッチから色使い、石版による刷りの仕上がり具合まで、革命後のソヴィエトで一気に花開いたロシア絵本にとてもよく似ている点です。ブシェのこの仕事、日本でも見識ある大人がまずその価値を見だしたのと同じように、ブシェの、またはマッコルランとブシェの、ロシア絵本への接近や共鳴によって生まれたものではないかと推察しているのですが、さて、どうでしょう。尚、フランスで、ロシア絵本の正嫡に位置づけられるカストール絵本が発行されたのは1931年のことでした。


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見開きは2点ともリプリント版より 半透明紙に英文が記載されています。左斜め上は解説冊子の表紙で『MORE ABOUT 2 ■』と。 右斜め下で天地逆になっているのはリブリント版の表紙。

古本屋なら誰でも持っていそうなものですが、私の頭の中には古本屋で居られる間に一度でいいから扱ってみたいと考えている本のリストというものがあって、そこには1冊のロシア絵本が含まれています。邦訳題を『6つの構成による2つの正方形についてのシュプレマティスムのお話』、英語表記で『A Suprematist Tale about Two Squares in 6 Construction』がそれ。ロシア・アヴァンギャルドの代表的アーティストのひとり、エル・リシツキーが1920年に制作、1922年にドイツで発行された絵本で、今週ご紹介するのは残念ですがそ複製、つまりリプリント。1991年にアメリカ・マサチューセッツ工科大学のThe MIT Pressから発行された初版は、リプリント版と解説冊子の2冊をひとつの函に収めた体裁です。絵本本体のリプリント版には、元版にはない半透明紙が複製ページそれぞれの間に挿入され、ロシア語から訳した英語がその半透明紙の上、元版のロシア語のテキストと同じ位置に印刷されているので、複製ページと半透明紙を重ねて見るとリシツキーが何をどのように伝えようとしているのか一目瞭然となるという仕掛け。“絵画の再現性を否定し、純粋な感性を絶対のものとする非対象絵画を目指した”(美術用語集より)という抽象絵画の極北・シュプレマティスムについて、大真面目に子どもたちに伝えようとした絵本です。その志とともに、類まれな美しい絵本となった - とまで云っては贔屓の引き倒しかも知れませんが、少なくともここまで子どもを大人と同じように扱い、結果何だか禅問答のようになってしまった「絵本」なんて、この絵本をおいて他にないに違いありません。解説冊子『More About Two Squares』はキュビスム、未来派など当時の前衛芸術全体から絵本の構成に関する研究まで詳細を極め、リプリント版と解説冊子の表紙を表と裏にあしらった函は瀟洒です。
元版がいま、日本の市場に出てきたとして、販売価格がどれ程になるか、欲しいといいつつ目鼻もついていませんが、シュプレマティスムや当時の芸術界について、或いはリシツキーについて、深く知りたいという方には、この複製版の方がずっとコストパフォーマンスが高かろうこと、間違いなく請け合います。
■この他、19世紀末の装飾図案プレート集唐長の木版手刷りの唐紙30枚欧文組版2点1組他活版印刷関係が少々本・出版にまつわる白っぽい本が約50冊ほど、明日には店に入荷いたします。

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