#205 6-1-6 Minamiaoyama Minatoku TOKYO
info@nichigetu-do.com
TEL&FAX:03-3400-0327
sitemap mail

detail

12/02/11 薄暗がりに潜む歴史の断片 満鉄食堂車メニューと元印刷工の手紙 / プロパガンダ誌『偉大なる建設-満洲国』


Warning: getimagesize(http://nichigetu-do.deci.jp/img/info_thumb/1328896161530.jpg) [function.getimagesize]: failed to open stream: HTTP request failed! HTTP/1.1 404 Not Found in /home/users/2/deci.jp-nichigetu-do/web/navi/info/detail.php on line 146
1328896161530.jpg

「御夕食献立」に出てくる「やま芋キヤンデー」とは? 一体なに?? どんなしろもの???

■「満鉄のメニュー同封します。喜んでいただければ倖せです。大連駅の、旅客課で、僕が印刷していたものです。プリンターという職種で、この、メニューが一通り解ってきますと、『あじあ』の食堂車の、給仕長になれたわけです。お粗末な、印刷技術です。たった一人で、薄暗い駅の、3階の片隅で、活字を拾っていますと、目が充血してしまうような毎日でした。二十才でした。」
古本の市場にはこんなふうにして、歴史の断片がふっと姿を現すことがあります。それだから、市場に行けない日には市場の様子が気になって気になって仕方ありません。昭和13年(1938)年11月3日、この当時、明治節(明治天皇の誕生日)として祝われた日の「満鉄食堂車」の「本日の御昼食献立」と「本日の御夕食献立」、つまりはメニュー2点を、冒頭の文章の記された手紙・封筒などとともに落札したのは、行かないつもりだった市場へ、どうにも気になって仕方なく、即売会の会場を2時間だけ抜けだして出掛けた先週のことでした。その後即売会の戦後処理に追われて落札したまま、今日まで店にも入れず放置するに任せていた新着品です。
手紙の主であり、メニューを印刷した「プリンター」は、川村禾門という人。実際にメニューを見ると、文字間や行間のバランスの崩れ、印圧がかかり過ぎているところなど、決して上手いとはいえない出来です。「目が充血してしまう」というのですから、活字を拾い、版に組むところから、おそらくはろくに教わりもしないまま一人でやらされていたのでしょう、大陸をゆく列車の発着、行き交う人々のさざめきをよそに、物置のような駅舎の暗い片隅で青年がひとり、黙々と慣れない仕事に取り組む姿が目に浮かんできます。
大連駅の駅舎内に印刷道具一式が整えられていたこと、メニューの印刷が社内で行われていたこと、印刷工→「あじあ号」の給仕長という昇級のステップなど、冒頭の短い文章だけでも、満鉄にまつわる幾つかの事実を確認することができ、満鉄メニューというだけでも珍しいのに、僅かとはいえまさかその印刷の様子まで、実際に携わったことのある人の言葉によって示されているのには驚きました。


Warning: getimagesize(http://nichigetu-do.deci.jp/img/info_thumb/1328896181631.jpg) [function.getimagesize]: failed to open stream: HTTP request failed! HTTP/1.1 404 Not Found in /home/users/2/deci.jp-nichigetu-do/web/navi/info/detail.php on line 166

さて、川村禾門(かわむら かもん)という人については映画や新劇史に詳しい方ならご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、「無法松の一生」などに出演した俳優。この当時は独身ですが、この後結婚した女優・森下彰子は「桜隊」に加わり広島の原爆投下で亡くなります。手紙はテレビドラマの演出家に宛てて書かれたもので、引用部分から後は大連芸術座のこと、山本嘉次郎「坊っちゃん」での映画デビューのこと、新劇から渡満まで、「満鉄社歌」への思い、などが綴られています。この手紙(400字詰原稿2枚)と封筒、そして、少なくとも小店店主所有のテープデッキでは再生できなかった、従って、一体何が録音されているのか分からないカセットテープ2巻がついての一口でした。カセットテープにどんな“歴史”が潜んでいようが、この一口全部をお引き受け下さる方に - という方が現れれば、のお話ですが - お任せすることになりそうです。
2点目は同じ満洲がらみとうことで、東方社製作、昭和18年発行のプロパガンダ誌で、FRONT』の日本語版のひとつ『偉大なる建設-満洲国』。私が初めてこの雑誌を市場で見たのはまだ神田の古書会館が建て替わる前、入札会場奥の立てかけ台 - こちらも陽の届かない薄暗がりでした - に、遠目にもあれは何だと目に付く赤い表紙が1冊、出品されていたその風景をいまでもよく覚えています。手にとりページを開いて、その大迫力に息を呑みました。編集人は林達夫、企画編集委員に春山行夫、美術部主任に原弘、写真部は主任の木村伊兵衛の他、濱谷浩など、錚々たる名前が並んでいるのに深く納得したのが、もう一昔前のお話です。一昔を経て、『FRONT』に代表される危うい時代は、むしろ近づいてきているように思えてなりません。
■さて、来週ですが、金曜日に千代田区立図書館でのイベントと市会スケジュールの関係で、新着品のご紹介は一回お休みをいただきます。店の営業は変わらず、来週も火・木・土曜日の各日12時から20時となっておりますので、新着品の如何に関わらずお運びいただければ幸甚に存じます。それでは、次回ご案内まで、しばしお待ちを!

inquiry 新着品案内 / new arrival に関するお問い合わせ

お名前 *
e-mail address *
お電話番号 *
お問い合わせ 件名
お問い合わせ 内容 *
  * は必須項目です)

recent