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11/10/01 カッサンドルとエクスコフォンのタイポグラフィ- オリジナルの印刷物で書体デザインの仕事を見る


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■月曜日の朝。着替える段になって肘の内側に湿疹を掻き壊した跡があるのを発見。お客様宅からご蔵書を引き上げて帰宅、夜になる頃には腕全体がかゆくなる。火曜日。寝ている間中、体のあちこちを掻きむしっていたような気がして、起きてみると腰から足にかけて範囲が広がり、かゆい。水曜日、この日は神田の東京古書会館で一新会大市の下見・入札日。湿疹は背中全体から首、襟足、額の生え際まで着実に勢力を拡大、ともかくかゆい。あっちもこっちもかゆい。入札中には目玉の奥の方とか頭の中までかきむしりたくなるがしかしこれは最低入札価格1万円からというこの景況にはあんまりな大市の規定に対する身体反応であったらくし、帰路に立ち寄ることのできた皮膚科で「蕁麻疹ですなこれは」と診断されました。蕁麻疹ですか。実に35年ぶりですよ。子供の頃にはよく出してたものですが、それにしてもこんなにかゆいものだったのか、それともこれが大人のダラクというものか、もはや辛抱のシの字もなくなった私は、処方してもらった一週間分の塗り薬をたった三日で使い切り、先程あわてて近くのドラッグストアに駆け込み成分の近いものを手に入れました。内服薬と塗り薬との力をもってしても、依然、引いては寄せる波のように迫りくるかゆみのなか、さて、新着品のご案内は上手く書けるのでしょーか、かか ……………… かゆいっ!!!
一新会大市では、欲しかった7点の内、何とか4点を落札。伊勢型紙116枚をはじめ、そちらの市場からの商品入荷は明日10月1日(土)の夕方となりますので、今回の新着品は久しぶりにパリより入荷したものから、これまた久しぶりにタイポグラフィに関するものを選んで。1点目は、お馴染みカッサンドルが書体設計から冊子のデザインまで手掛けた活字鋳造会社ペニョ社の「ペニョ体」活字の見本帖『PEIGNOT』1937年、この書体が誕生した年に発行されたフランス語版です。A4を二まわりくらい大きくした針綴全36Pの冊子で、書体の特徴を丁寧に説明した序文、ページものや端物(紙モノ)、広告などの組版見本など、ペニョ体の特徴と魅力を総合的に紹介する内容となっています。ペニョ体の見本帖では、これまでにもフランス語版・タトウ入り未綴じリーフ体裁のサンプル帖や、英語版の冊子など、異なる版は扱っていますが、この冊子はこれが初めて。活字に合わせ、罫線や装飾花形までカッサンドルが手掛けていたことを、この冊子を見て初めて知りました。カッサンドルが出掛けた書体デザインのなかでも、おそらく最も完成度が高く、最も幅広く使用され、今日に至るまで大きな影響を与え続けているカッサンドルのペニョ体。書体が誕生した頃から現在まで、色褪せることのないそのデザイン・エッセンスを伝えてくれる貴重な一冊です。


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専用ポートフォリオに活字の書体別・未綴じの印刷見本リーフ17点が入っていたのは、フランスはマルセイユにあった小さな、けれど際だつ仕事でその名の知られた活字鋳造所・オリーブ社による自社製品販売用の印刷物で、1950年代後半の頃のものと思われます。オリーブ社のなかで最もよく知られたのが、同社のタイプフェース・デザイナーであり、エール・フランスのロゴデザインを手掛けたことでも有名なロジェ・エクスコフォン (Roger Excoffon)シルクスクリーンによる当品ポートフォリオのデザインも彼によるものです。リーフは書体毎に用意されており、全て両面2色刷で二つ折りの体裁。中側には在庫商品全種 - 書体によっては数字や約物を含め - を、文字種に関わらずほぼ同一のフォーマットに落としこんでおり、これは実に見事。書体別にリーフ点数が最も多いのが1952年(1954年説も)にフランシス・ガニュー ( Francis Ganeau ) によって作られた「ヴァンドーム体」の7葉、エクスコフォンによるものでは「シャンボール体」(1945年)5葉、「カリプソ体」(1958年) 2葉、さらに「バンコ体」(1951年)と「ミストラル体」(1953年)が各1葉含まれ、これまでのところまだ調べのついていない「ノール」と記された1葉、これらを合わせた全17葉となっています。もともとグラフィック・デザイナーとして活躍していたエクスコフォンが、オリーブ社に乞われて同社のデザインに関わり始めたのが1947年のこと。以来、製品に監修者のようなかたちで関わっていた可能性が高く、当品全体のディレクションもエクスコフォンによるものと考えられます。
ペニョ社のカッサンドルとオリーブ社のエクスコフォン。二人の作りだしたタイプフェイスには、どこか似通ったところがあるように感じられます。戦後が、多くの局面で、第二次世界大戦のため一旦凍結された1930年代の再スタートから始まることを考えると、エクスコフォンがカッサンドルの影響下からタイプフェイスを考え始めたのだとしても、少しも不思議ではありません。さらに、エクスコフォンがサヴィニャックと仲の良い間柄だったということからは、カッサンドルの弟子にあたるサヴィニャックを通じて、何かもう少し直接的な関係があったとしても …… いやいや確証のないまま筆を滑らせてはいけません。
オリーブ社は1978年に、ペニョ社は1989年に、いずれも他の会社に吸収されていまはありません。何とも惜しい、残念なことだと思います。けれど、どれほど優れた企業であっても、どんなに素晴らしい製品を作っていたとしても、時代とともに退場を余儀なくされることはあっても仕方のないことだと思います。自社の活動と製品に対して完璧といってよい無責任ぶりを露呈しながら、それでもまだ何の危機感もなく反省のそぶりも見せず存在し続ける企業があること。こちらの方が桁違いに不健全でグロテスクであることを - それなしには成立し得ない自分の生活まで含めて、やっぱり何かおかしいんじゃないかと - いま痛感しています。
先にも記しましたが伊勢型紙 116枚についいては明日入荷次第、店頭で販売する予定でおります。他の落札品で目ぼしいものについては、来週紹介させていただきます。それではまた来週 … は? ああ。蕁麻疹の原因ですか。それについては ……→ こちらの方で。恥ずかしながら。

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