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10/02/06 1936年、伊藤銃次郎・欧米大外遊す。 / 『文具界』は1冊、大正11年・お正月号入荷


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1936~1937年、伊藤銀行重役・伊藤銃次郎、伊藤充子夫妻の欧米大旅行の記録『欧米の思出』。画像上段の「上巻」は門司出発から欧州旅行の記録。画像下段「下巻」はクイーン・メリー号の搭乗記録の貼り込みから始まるアメリカ編。ともに紙片貼込多数で旅程をたどることができる。

■片片たる紙に記された足跡を、旅程に沿って並べた貼込帖 - そんなものはたくさん残されているだろうと思うとこれが間違い。戦前の外遊の記録の多くは、帰国後の餞別返しの・おみやげの・そのかわりに・わざわざこしらえた・配り本に(ああややこしい。つまりは饅頭本の一種のようなもので)たくさん残されていて、中には片片たる紙まで複製して貼ったり綴じたりした本まであるのだから、その元となった記録は …… 本と同じくらいたくさんあったはずのそうした記録は一体どこで眠りを貪っているものか、市場に出てくることは意外に少ない、という印象があります。布仕立て『欧米の思出』と題箋を貼られた帙から姿を現した折丁仕立ての2冊は、配り本といった加工品の一歩手前にある1936年=昭和11年のヨーロッパ・アメリカ旅行の記録でした。この記録、但しご本人の肉声の類は一切なく、スクラップ・ブック兼サイン帖による旅の備忘録、とでもいいましょうか、ホテル・レストランのカードやレシート、各種チケットを旅程に沿って貼込むと同時に、各地で出会い交流した日本人・外国人の署名を集めたものです。旅を記録したのは伊藤銃次郎。名古屋の伊藤銀行の重役で、相良頼綱子爵の血をひく妻・充子との同行二人の旅はこの年の4月、門司からスタートします。本人の肉声なき記録から浮かび上がってくる旅は - 日本郵船・照国丸の一等客室に荷を解いて、香港、シンガポールを経てマルセイユで欧州上陸、パリで日本大使館員に迎えられ、ドーバー海峡を渡ってロンドンでは大原総一郎など日本人との社交に努め、鯛鍋なんぞもつつきながらしばし滞在。スコットランドにも足を延ばしてゴルフを楽しみ、シェークスピア劇を観劇、再びロンドンに戻ると「クイーン・メリー号」に乗船してアメリカへ。船上では副島直正よりちょっとばかり説教臭い献辞を賜り、競馬を楽しみ、ニューヨークでオーチス・エレベーターの重役と会い歓待を受け、名古屋製陶紐育支店の関係者ら「日本人倶楽部」は小宴を設け、ボストンを経てハリウッドへまで足を延ばし、嘉納正治とはスタンフォード・ゴルフコースに出て、日本郵船・龍田丸で帰路に着き、1937年6月帰国 - といった旅程と足跡が肉声なくとも刻々日を追ってたどることができるという次第。


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『文具界』が一冊入荷、大正11年1月1日・お正月号。画像右・表紙は「文具界」の文字を除き罫内は全て広告。画像中央は切り取って店頭広告に使えるというサンエスの広告。左はデザインの完成度の高い中山太陽堂・プラトン社製品広告。

本人の記述・感想ではなく徹底して署名なりメッセージなり相手に書かせるという姿勢を貫いた結果、何より、2冊に記された多くの人名と体験の向こうから、外遊というものが一種のサロンであり将来的な投資でもあっただろうことが、よりはっきりと透けて見えてくるのでした。伊藤銃次郎が外遊を終えた4年後の1941年、伊藤銀行は名古屋銀行・愛知銀行と合併、「東海銀行」を新たに設立し、銃次郎は取締役に就任しています。
表紙の記載によれば「六千部発送」、その割にはなかなかまとまったものにお目にかかれない文具・事務用品専門誌『文具界』が一冊入荷、大正11年1月1日・お正月号です。表紙・裏表紙とも赤・青・金の3色刷の賑々しさ、しかも表紙の「文具界」のタイトル僅かなスペースと罫外を除いて全て広告で埋められています。中面もごく僅かな記事を除けばほとんどが広告で、セーラー万年筆、フエキ糊(但し瓶入り)、丸善インキといったお馴染みから、何故か美津濃の運動用品、プラトンインキ土瓶入(どびん!)、水晶万年筆やガラス万年筆といった、一体どんなのだかよく分からないけれど紙面で見る限りは魅惑的な商品の数々が出てまいります。お正月らしく中面にもカラー4ページがあり、そのうち1ページはこの年、雑誌『女性』を創刊することになる中山太陽堂の「プラトン万年筆 プラトンシャープ鉛筆」でさすがに繊細かつ洗練されたデザイン。1ページは「サンエス インキ 万年筆」で「切り取つて貴店のウヰンドウにお出し下さい」とお勧めするアイデア勝負、デザインもなかなか大胆な表現派風です。デザインやネーミングによる差別化戦略が早い時期から導入された商品といえば、先ずは化粧品が頭に浮かぶのですが、購買層が男性中心の商品でこれにあたるのは文房具なのではないか - ということにたったいま気がつきました。中山太陽堂のクラブ化粧品とプラトン・ブランドの文具も、こう考えると腑に落ちるというものです。今週はこの他、『欧米の思出』にくっついて来たガイドブック・洋書約10冊、別に建築装飾に関する洋古書7点外国絵葉書が1袋長田秋濤『洋行奇談 新赤毛布』(明治35年・初版)などが新入荷、『ニューヨーク・タイムズ・ウィークリー』は全冊入替済みとなりました。また、日本語版の『ソビエトグラフ』『今日のソ連邦』『中国画報』は値付け次第店頭にお出しする予定です。

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