■今週は先ずお知らせから。先週すでに、「おや?」と思われた方もいらしたかと存じますが、月末恒例となっております沼辺信一氏のご連載「バレエ・リュスと日本人たち」のアップは、今回、来週末とさせていただきます。過去のわずかな、けれど確かな記録と記録とを繋げて編み上げた網目が一体どこまで広がっていくのか、壮大かつスリリングなご探究はまだまだ続きます。みなさまいま少しお待ち下さいませ! また、こちらはスリリング、ではなくハラハラものの小店即売会目録「第26回 銀座 古書の市」は週明け12月7日(月)中にアップの予定です。年内最後の総決算、後にはひけない正念場……こちらもご笑覧のほど、何卒よろしくお願いいたします。
■欲しいものがない! 今週欲しいと思った一冊、たった一冊がベラボウな金額の札の前に落札できない! と先週をリピートしたかのような今週、新着品のメインは『L’Illustration』で1920~1930年代に発行された30冊、ですが巻頭・巻末の広告が切り抜かれているものが多く、しかし中にはアール・デコ博特集号やマルティ挿画入りのNoel=Xmas特別号などもあり、もったいないのでこちらは小店歳末セール向け・店頭格安販売の予定でおります。で、画像の方、古い海外製絵葉書のヤマから、国別デザイン・シリーズをご紹介。全て未使用の60枚は1910年代半ば頃までのものと思われるドイツ製、金銀をふんだんに使い、非常に鮮やかな色で刷られておりまして、ルーペなども取り出して覗いてみれば石版?もしくは平版?-いずれにしても非常に細かな部分まで特色指定・多色刷りした大変手のこんだものです。国別に王家の紋章らしきものや、その国を代表するモチーフ - なかにはラマ。とか、パイナップル。とかも出てまいります-を用いながら、どれも格調の高くまとめられております。
画像上段左端の「JAPAN」は菊の御紋に桜、菊、カキツバタ、そして富士山を配してとても品のよいデザイン。カキツバタとはいってもそこはヨーロッパ、どこかアール・ヌーヴォー調で純日本のデザインとは異なりますが、兎も角もここにゲーシャをもってこなかったところはえらい。のではないでしょうか。60枚それぞれ、お国柄を感じさせる図案はいまにも通じて、眺めているだけでも十分楽しめる一方で、歴史に翻弄され蹂躙され、或いはいまは存在を消してしまった国々のそれは、図案に用いられたモチーフやイメージとともに、もはや資料といってもよいのかも知れません。この絵葉書のヤマからは他にも「美人イラスト・但しハーケンクロイツ入」、「ドライブする美人イラスト」、「日本提灯を持つ西洋の子供イラスト」などもあり、少々風変わりなコレクションとなっております。
■もはやお馴染み、というべきでしょうか、『ガゼット・デュ・ボン・トン』1922年前後発行分から抜きだされ、マット仕立ての格好で市場に出てきたファッション・プレート。今回は27点の入荷です。残念ながら、マルティ、マルタン、バルビエなどによって風俗まで描き込まれたものではなく、ほとんどがスタイル画。しかしそこは『ガゼット』、当時の尖端モードに手彩色が施されております。こちらは全て、明日店に到着次第、キャビネットに投入する予定です。
■今年1月、移転やむなきに至って以来、波乱万丈のうちに明け暮れた2009年もはや12月に入りました。この1日からは11年ぶりに復活したイルミネーションが表参道をひときわ美しく飾っています。地下鉄の改札に向かう前にしばらく足を止め、表参道から原宿へと続くこの壮麗な夜景を眺めるのが、ここ数日の習わしとなりました。眺める度に、この街で仕事を続けられることだけでもう十分了とすべきではないかと思います。それを支えて下さるお客様おひとりおひとりに、改めて感謝を申し上げます。傲慢な人間をも謙虚にさせる師走の表参道、イルミネーション見物をかねてご来店いただければ幸いです。