■昨日の朝日新聞朝刊一面の一角を飾った“(正岡)子規直筆「幻の書」”を神妙に拝見し、あとは「どう考えたってこの値段じゃ落札できるわけない」札を数点入れただけで、2009年小店の「明治古典会七夕古書入札会」(東京古書会館)は打ち止め・こちらは先に進まねば、というわけで再度お知らせを。本日・7月4日(土)12時より、小店隣室 - 入口は同じ207号室です - で『MODE, a la mode -アール・デコ期の香水瓶・挿絵本から21世紀ラグジュアリーブランドの印刷物まで-』がスタートいたします。会期は7月18日(土)までの間の火・木・土曜日、各日12時より20時、最終日のみ15時閉場となります。詳細については是非こちらをご参照いただきたく、また、香水瓶の本体と栓に刻まれたノンブルの理由や、その両者が同一でないものを「マリアージュ」と呼ぶのだとか、ネーミングはもとより物語を濃やかにまとった香水にまつわるエピソードは明日、ご希望の方には会場でコレクターさんにご説明いただくとして、少しは古本屋らしく挿絵本のラインナップを少しく加えておくと……マルティによる扉手彩色プレート+章頭飾入『TOI ET MOI』や手彩色5図入の『LA DUCHESSE DE LANGEAIS』、ジョルジュ・ルパッブ挿画『L’ABBESSE DE CASTRO』、ラボチェッタ挿画手彩色『LA VENUS D’ILLE』、ジョン・オースティン挿画『THE INFERNAL MARRIAGE』、ヴェルテ挿画・リトグラフ『LES JEUX DU DEMI-JOUR』、ジャン・コクトー序、アンリ・ジャドーとジョルジュ・ルパブによる挿画入り『L’ILLUSIONNISTE / DEUX COUVERTS』、ルネ・ルクレルク著、アンドレ・マッソン挿画、 石版画5葉・両名署名入『O MESANGE, O PEUT-ETRE』……といった具合。挿絵本だけは「七夕」に負けない品揃えかも。香水関係の広告は、グリュオーの手になるものが多数含まれていることが判明、雑誌『Flair』は一冊追加でオリジナルが合計5冊となり、コム・デ・ギャルソンの『six』は4冊新規追加、J.W.のDやACのG、CのM.A.P.のトート(この辺り記号化。意を汲まれたし)なども入り、かつてのモードと文字通りのア・ラ・モードがうち揃いまして、みなさまのご来店をお待ちいたしております。
表参道と「七夕」開催中の東京古書会館のある神保町とは地下鉄で一本。ここはひとつ序でに日月堂もよろしくお願いいたします!* 「MODE」展出品商品のほとんどは、会期中のみの販売となります。お見逃し、お買い逃しなく…。
■落札したまま数カ月、依然未整理・積みっ放しになっていた一角を切り崩すと、こんなものが出てきました。『NEUE FOTOKUNST KALENDER 1931』(当時のオリジナル)。ドイツで発行された1931年用カレンダーで、タイトルの通り図版全てに当時最先端の“新興写真”が使われたもの。片面刷り・1P=一週間という仕様を基本にして、49点の写真が巻末の一覧とともに収められています。飛行機、自動車、行動する女性、マネキン、大型機械、ガラスと鉄、雨にたたかれる大通り、都市の活気、都市の憂愁、新たな美を見出す視点、新たに得られたパースペクティブ、写真が可能ならしめる光の階調……と、改めていうまでもなく、同時代の日本でも盛んに議論され、提唱され、実行された“新興写真”のエッセンスが、ドイツではカレンダーなんていう日常的なものにまで充満していたんですね。試みに、ゲランの香水「夜間飛行」の誕生はいつかと調べてみると1933年。ちなみに同じくゲランが生み出した名作のひとつ「ミツコ」は1919年の誕生。ジャポニスム=アール・ヌーヴォーからモダニズムへ。香水の歴史もまた、写真と同じように、時代の変遷を映してきたもののひとつだったに違いありません。新着品に話しを戻して付言すれば、写真集でも美術書でもなく、本来使用するのが目的のカレンダーだけに、完品での出現は稀ではないかと思う次第です。来週、仕事の手が追い付けば、このカレンダーと同じ旧蔵者が戦前の欧州から持ち帰った冊子・紙モノの小型ダンボール箱一箱分を整理して店頭に出しま……いえ、出したいと。やまぁ出せるといいなと。ううう。出せるのかなあ。