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08/11/22 Information

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1937~38年・日本郵船の客船で配られた印刷物全37点より。木版多色刷りのメニューや映画の上映案内状。

■地下鉄を降りて地上に上がる度、「ここが表参道?」と疑問すら湧く人の気配の絶えようにまで“冷え込み”を感じさせられた今週。それでも片隅の小店へと、わざわざお運び下さるお客様の有難さが一層身にしみました。来週も店は火・木・土曜日の各日12時~20時で営業いたします。折角のご来店にはせめて少しでも面白い商品を仕入れてお応えすべきが古本屋の本領…… ……と、心も新たに今週の新着品です。上の画像は戦前の日本郵船が乗船客に配った印刷物で、木版刷りの食事メニューを中心に一括落札した全37点より。左と右は映画上映会の案内状、中央は金色で印刷された「SAYONARA DINNER」のメニューで、いずれも表紙の側は木版多色刷と船旅に相応しい贅沢なものです。船内で使われる印刷物は、表紙の側を刷って積み込み、文字情報は船内で印刷されていた(=活字を拾い版を組み印刷する)と聞きます。メニューも映画上映案内も、全て欧文で組まれており、実は欧文組版のお手本といえるものだとか。また、表紙の側が日本を発つ往路は木版刷りがほとんどなのに対し、西欧を発つ復路の方がオフセット印刷になるのは、出発地の印刷事情によるものではないかと考えます。さて、今回まとめて入手したメニューに記載されている日付によって、これらは1937年5~6月に「はこざき(筥埼?)丸」に乗船して渡米、翌1938年1月にロサンジェルスから「秩父丸」に乗って2月に帰国した人の旧蔵品と思われます。残念ながら旧蔵者を特定できるようなものはありませんでしたが、一緒に出てきた復路・秩父丸の「御乗船記念芳名録」によれば、鳩山一郎、鳩山道夫(当時理化学研究所員)の他、「満鉄同寿医院長」氏や「紀元2600年記念日本万博技師」氏、音楽家の高橋忠雄、「エンゼル美容院」の女史などといった方々と長い船旅をご一緒された模様。1937年から1938年にかけて約半年の旅の期間の内、往復併せて実に約1ヶ月半が船上で費やされており、当品の旧蔵者はもちろんエリート階級にあったのでしょうが、幕末から戦前、極東のそのまた端の国から西を目指し、遥かに遠い距離を超えた人たちには、どんな馬のホネであろーがどこか尊敬の念を覚えてしまうのでした。

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1953年・限定300部発行、建築家・吉阪隆正著『パリ1950-1952』は「滝川太郎様」宛て献呈署名入り。

■戦後40年を経た1980年代半ば、私が初めてパリへ旅した時の飛行機は南回りで、香港、バーレーン、ロンドンで給油もしくは乗り継ぎ、到着までにかかった時間はおよそ24時間という結構な旅でした。再び遡ること35年、1950年に戦後第一回フランス政府給付費留学生となったこの人は、どれだけの時間を費やしパリに到着したものでしょう。建築家の吉阪隆正による『パリ1950-1952』。1953年・限定300部発行、サイズも文庫本ほどの小さな本です。著者自身によるパリ各所のスケッチ画11点に、各々短く、こちらもまた心象スケッチといった文章を添え、片面刷り・袋綴じで仕立てた15P。目次によれば、本来、「アヴニュ・ド・オペラ」のスケッチをあしらったカバーがついていたようですが、残念ながらこれは既に失われています。一方、巻末に小さく「第一巻 おわり」とあるのですが、『吉阪隆正集』の目次で確認する限り続巻は出なかったようです。フランス語で組まれた扉には、この本が富久子夫人と両親、そして在仏中、そのアトリエに勤務したル・コルビュジエへ捧げられる旨が記されている他、直筆の献呈署名が添えられているのですが……これが贋作家、ではなくまだ鑑定家として活躍していた当時の「滝川太郎様」宛てというのも面白いところです。船旅からパリへと続いた今週の新着品。勢い来年2月のパリ行きへの意志を固めたいところなのですが、いまはたったの・たぁーったの12時間に縮まったパリへの距離が、現実的諸条件から実際小店にとって近いのか遠いのか依然判然とせず、事の次第は年末の追い込みにありまして。今週はこの他、これから調べが必要な戦前日仏文化交流関係資料や詩集、洋書など20点余りを、調べがつき次第店に出し、また、戦前日本人の残した渡航記録関係書籍およそ50冊については、できることなら画像付きでこのHPにアップしていきたいと……忙しいのはパリのため? いえ。それもこれも!全てはお客様のために!!

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