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08/07/19 Information

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左)『恋愛株式会社』昭和6年発行の初版は東郷青児訳・装丁で瀟洒な挿画も多数。右)大竹伸朗作品集『SO』(1991年刊)に添えられた冊子

■昨日の市場で大量の委託出品も一段落。これでしばらく店の仕事に専念しようと(とりあえず予定)。なのでもちろん、来週は火・木・土曜、各日12時~20時で営業いたします。やっぱり週に三日ですけど。 歩いているだけで干乾びそうな暑さ、加えて今年はオリンピック・イヤー。こんななかで古本なんぞ売れるワケないと充分学習してきたはずなのに。ああそれなのにどーして?なぜ?五反田と神田と併せて落札38点って。手間がかかるのは後にして、新着品は手っ取り早いところからいきます。上の画像左は「モオリス・デコブラ」著の長篇推理小説、東郷青児訳・装丁挿画の『恋愛株式会社』の表紙と函。昭和6年発行の初版で函・本とも状態は良好です。子供の頃、百貨店の地下食品売り場のお菓子屋さんのパッケージで散々見ていた東郷は、お陰で私のなかではすっかり「陳腐」のレッテルが貼られることになったのですが、戦前の東郷の仕事を見る度に、先入観を持つことに警鐘を鳴らされている気がします。ここではご紹介しませんが、線画の挿絵多数、そのいずれも実に瀟洒な出来栄えです。その右、コラージュ作品は同時期のエルンストの…といいたいところですが実はこれが大竹伸朗の作品集・1991年刊行の『SO』に添えられた冊子。『恋愛~』と『SO』とで丁度60年の時を隔てながら、並べた時の据わりが奇妙にいいので画像にしてみました。市場から帰ってきた途端にこんな遊びにうつつを抜かしてしまったのも、38点落札の重圧からの逃亡??? -まぁね。そういうことです。

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郡山弘史詩集『歪める月』。昭和2年仙台「L・S・M社」発行、京城「亜細亜詩脈協会」発売、石川善助跋。村山知義を思わせる装丁と挿絵は著者による

■「本に惚れちゃぁいけねーぜ。」-古本屋になりたての頃、古書いとうのご主人に言われました。「本好きとしてではなく、商人としてモノを見よ」という古本屋を続けていくには有難いお言葉だというのに、これまた数多の学習機会を経ながら未だに身につく気配もなく、次は今週の市場で一目惚れしてしまった一冊、『歪める月』。昭和2年、仙台の「L・S・M社」発行、発売所を京城の「亜細亜詩脈協会」とする詩集で、著者は当時京城に居た郡山弘史。石川善助という人が跋文を“仙台にて”寄せ、ちょっと村山知義を思わせる装丁と挿絵は著者の手によるもので、裏表紙のデザインにはハングル語も組み込まれています。と、ここまでで、戦前の詩歌・文壇に詳しい方ならすでにヒントはあちこちに散りばめられているというのに、私ときたら郡山、石川ともその名を知らず、それでも本そのものの佇まいに惹かれ、著者の「例言」を斜め読みすれば、朝鮮に二年在住しながら「これしきの贈り物きり出来ない」と自分の怠惰を責め、故郷に残した病床の兄の快癒を祈り、独力では叶わなかった詩集上梓に力を与えた友らに関する謝辞を並べ、そして石川の跋にはおそらくはある屈託を抱えて半島に渡った友たる著者の心情を汲み、上梓された詩集を寿ぎ…と読まされて気持ちは本に傾くばかり。されどしかし表に裏に引っくり返してページを繰って、それでも全然分からない。いくら見てたって分からない。ええぃ。というわけでいまここにあるという次第。郡山という人、ケンサクしてみたら2006年9月28日の「朝鮮新報」で記事になっているし、石川という人は仙台から中央を目指した詩人で作品集も発行されている立派な詩人。わけもわからず落札した私を、というかこんな私に落札されちゃった『歪める月』をはさんで交わされたS書林さんとK書店さんの会話の内容がようやく少し分かってきたのは帰宅してから。知らないということは実に恥ずかしいことで、あちこちケンサクしながら先輩お二人の会話を思い返しているうちに、汗はみるみる冷や汗に変わっていきました。 新着品はこの他、安東次男献呈署名本2冊、江原順のシュルレアリスム関係翻訳書献呈署名入5冊、『書物と活字』他印刷関係数冊、戦前の『資生堂ギャラリー清規』、恩地孝四郎によるロシア・アヴァンギャルド風装丁の『新露西亜画観』、久保貞次郎『芸術家としての子どもたち』他美術関係薄冊6冊、ヴォーグのメンズ・ファッションの優れた写真ページを集めた『L’UOMO VOGUE』、戦前のタイポグラフィ・グラフィックデザイン関係約10冊、「高村智恵子紙絵展目録」他展覧会目録一袋、お菓子のパッケージを中心とした商標貼り込み帖3冊、ダダ他戦前アヴァンギャルド美術関係洋書約30冊…いやはやまだまだありますがこのへんで。哲学・思想関係、展覧会図録など約70点は随時、「雑書目録」にデータをアップいたします。画像入り在庫目録も更新を始めました。休む間もなく土曜日から、落札38点を前に、さらに冷たい汗を流すことに。なるんでしょうねぇ。

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