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08/04/18 Information

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名古屋モダニズムの痕跡『機械座・第一号』(昭和2年)と『Cine(シネ)第9号6月版』(昭和5年)

■月曜大市の集荷を待ちつつ目録原稿の元データ打ち込み、火曜日営業の傍ら目録作成、帰途五反田の古書会館に寄って入札会の後始末、水曜日大市下見会、同夜自宅にて目録作成、木曜日大市入札・開札、同夜やはり目録作成、金曜日大市落札品引き取り、そしてこの更新…市場に滞在した時間は延べ13時間。ただいまヘロヘロでございます。しかし未だ目録は全然終わらず、落札品も明日には店に到着…団子状の仕事を前に呆然としつつも来週、店は火・木・土曜日各日12時~20時で営業いたします。 大市での落札12点というのは決して多くはないというのに、落札品伝票下にもれなく記載されてくる支払い金額だけは確かに多い。少し寒気もしてきたぞ。こうした場合の処方箋はただひとつ、「さっさと売る」。というわけで、今週の新着品は大市での落札品から。

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岡本潤著、岡田龍夫・矢橋丈吉装丁・挿画入『詩集 夜から朝へ』 昭和3年発行・初版

先ずは上の画像、『機械座・第一号』『Cine(シネ)第9号6月版』はいずれもペラっペラの雑誌―なのに―落札品中二番目の高額品。オソルベシ。『機械座』は、大正11年名古屋で発行された詩誌『青騎士』の同人でもあった斎藤光次郎を発行人に、おそらく古本好きの若い方には“『名古屋豆本』の人”として知られているであろう亀山巌、近藤東や犬飼稔らを同人とする名古屋モダニズム系の詩雑誌。『機械座・第一号』の発行は昭和2年、「The Theater Machin」と欧文タイトルまで添え、表紙の絵は“テオフイル・ド・カン”の“ポーランド型潜行艇”という作品だとあります。亀山巌といえばもうひとつ、稲垣足穂の出版物装丁者としての顔がありますが、『機械座』とうタイトルにしろ、第一号の装丁(弧を描いて組まれた欧文タイトルや星印など) にしろ、これまたいかにも亀山―足穂的世界。一方、『Cine』は日本におけるシュルレアリスム推進者のひとり山中散生を編集・発行人に、やはり名古屋で昭和2年に創刊・発行された前衛芸術誌です。第9号6月版の目次には、ツァラ、エデュアール、ピカピア、ガートルード・スタイン、フィリップ・スーポーの名前が並びます。日本からは北園克衛、阪本越郎、そして名古屋の亀山、折戸彫夫らが寄稿。山中とツァラやエデュアールとの直接的な交流は昭和8年頃からとされているようなので、ここに採られた翻訳原稿は間接的なものだと思われますが、戦前の極東の島国の一地方都市で、実はとんでもないことが起こっていたようです。この他にも雑誌『ウルトラ』があり、山本悍右、下郷羊雄らの前衛写真運動がある名古屋のモダニズムとは…仕入れ=入札まで出たとこ勝負の浅薄かつ軽薄な小店の場合、勉強はもれなく後からついてくるのでした。これですからねぇ。そもそも処方箋が書けない……さて次にまいりましょう。 ■『詩集 夜から朝へ』。岡本潤著、岡田龍夫・矢橋丈吉装丁・挿画入、昭和3年発行・初版。装丁と挿画7点はリノカット・オリジナル版画、収められた詩も活字を逆さに組んだり記号を使ったりした視角詩的なものが多く見られ、大正15年の斎藤秀雄『蒼ざめた童貞狂』、昭和元年の萩原恭次郎『死刑宣告』と続いた前衛的詩画集の系譜に連なる一冊だといえるでしょう。ところが、とくにここ数年の、先輩格の2冊に対する市場での注目―おそらくはこの二冊の持つ、奇矯ともとれる視覚的要素から-と比べると、『夜から』はいまのところまだそこまでいっていないような印象があります。原色を多用した装丁、どの頁も破天荒といっていい組版、勢いに任せて彫ったかのようなリノカットなどをまとった『童貞狂』『死刑』と比べ、『夜から』は全体として確かに地味に大人しく仕上げられています。ほぼ同時代とはいえ、この三冊の発行の間には時代の変化があり、それが影響を与えたものか、浅薄皮相な古本屋には確かなことは何もいえません。それでも、この大人しさを、過剰な毒気をそぎ落とした退屈と見るか、幾つかの試みを経て、荒々しさを飼いならして得た洗練と見るか-なんてことを考えさせてくれるのも古本ならではの面白さでしょう。この本の多くについては、実はお客様のご教示に負うものです。昨日までの大市の出品点数は6,000~7,000点。そこから一体どのような視点でモノを選び、価値を判断するか。二つの眼だけでは到底足りない市会であり、店を通じてのお付き合いから新たな眼をもたらして下さるお客様という存在に、改めて感謝する市場ではありました。処方箋は、いつだって他でもない店にある。 新着品はこの他、戦後の百貨店各種宣伝印刷物いずれも美品1箱A・ロビダの明治期翻訳本『世界大進歩第二十世紀』(銅版画挿絵入) 一冊もの色々から薩摩次郎八の直筆原稿、あえて伏せておくフランスものまで。今月いっぱいはどうしても目録に時間も力も割かれますが、少しずつでも店頭でご紹介いたしたく-どうしたところで来週もヘロヘロだぁ。

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