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21/03/13 1975-1976 タデウシュ・カントルとナム・ジュン・パイクのポスター

■「75年の初演を僕は見ているんですけど、色々とショッキングな、感動というか、ほとんどの人が訳の分からないものを見たという感じだったと思います。今でこそ僕は冷静に、これはこうで、旧約聖書で、とか言っていますけれど、ほとんど分別不可能な音と、しかもこのクシシュトフォリという地下室では埃のようなものが充満していました。カントルはわざと古い、本当に着古した衣服とか古いものを使うので、息苦しいくらいのところでした。そんな状況で、何が何だかよくわからない状態で見ているんです」

-京都市立芸術大学特別授業「『私と絵画と演劇の三角関係』あるいはタデウシュ・カントル 入門」(2014年6月30日) より
講師:関口時正(翻訳家・東京外国語大学名誉教授)
司会:加須屋明子(京都市立芸術大学美術学部准教授)
https://gallery.kcua.ac.jp/uploads//2020/06/2e9843fc622029eaccfea1d7ec61892c.pdf

20世紀を代表する舞台芸術作品のひとつであり、1976年には『ニューズウィーク』が「世界で最高の演劇」と評したタデウシュ・カントル「死の教室」のポスターが入荷しました。
「THE DEAD CLASS」と英文でタイトルが記され、図版の下にフランス語風に表記された「cricot2」(=クリコ2)はカントルが1955年に結成した劇団名、さらにその下に「FIRST NIGHT: 15 NOVEMBER 1975 KRAKOW - POLAND」とあり、クラクフでの「死の教室」初演を告知するポスターであることが分かります。
ポーランドの専門サイト「演劇百科」では、この作品に関するたいへん詳しい解説を読むことができるのですが、そちらに掲示されているポスターは図版と言語(=ポーランド語)が異なる別ヴァージョン。英文ポスターはより珍しい可能性もありそうです。
当初、アイロンをかけてシワや折れを直し、ビン痕も目立たないように少し手を入れる気でいたのですが、眺めているうちに、このポスターの価値は、クラクフの街か劇場のどこかに実際に貼り出されていたことを示す痕跡にこそあるように思えてきて、あえて手を入れないことにしました。従って、ここにご紹介する状態で販売するものとお考え下さい。 

この優れた舞台作品の存在を知ったのはいまから35年ほど前、P社同期の友人の慧眼と熱弁を通してのことでした。小店店主がその重要性について気が付くことになるのはもっとずっとあと、古本屋になってだいぶ経ってからのことで、まさか日本でその作品の初演のポスターを手にする日が来るとは、何より自分が古本屋になっていようなどとは、いずれも露ほども想像していなかった頃のお話しです。
カントルの作品にはバウハウスや構成主義など、戦前のアヴァンギャルドの影響も指摘されます。作品についてはいまや簡単に動画で観ることのできる時代になりました。自宅に居ながらいつでも好きな時に鑑賞できる! 35年というのはつまり、それくらい驚天動地のことだって起こる時間なのでした。

今週はポスターが続きます。1976年から77年にかけてケルン・アート・アソシエーションで開催されたナム・ジュン・パイク(白南準)のビデオ・インスタレーションの展示を知らせるポスター
ケルン・アート・アソシエーションは、現代アートを扱うスペースとして、ヨーロッパで最も有名な会場のひとつ (なのだそうです。知らなかった…)。
いたずら書きのような吹き出しのなかには、「for 宮 san」と贈り先の方のお名前が。この「宮さん」というのがミソで、お相手はパイクのパートナー・久保田成子とともにマルセル・デュシャンとジョン・ケージによるチェス対戦をおさめた私家版『REUNION』を作った宮澤壮佳さんのこと。ナム・ジュン・パイクの署名もあり。また、ポスターが宮さんに贈られた経緯の書かれたハガキ付きです。
モノクロという手法も、時代もほぼ同じ「死の教室」とパイクのポスターを並べてみた時に感じる感覚的なこのひらきがどこから来るのか。小店店主のおつむでは、あてずっぽうのヨタ話程度しか浮かんでまいりませんので控えます。
左上の画像もナム・ジュン・パイクで同時に「宮さん」に贈られたもの。その辺りの経緯もハガキに書かれています。こちらのポスターも署名入り。バラ売りの予定です。

■あの日から10年が経ちました。
日本は結局何も変わらなかった。そればかりか、被災地をいいように利用する政治だけがはびこっている気がしてなりません。
天災と云う名の人災もまた、一向に改まらいままです。。
いまだ日常を取り戻せない方たち、癒やしようのない傷を抱えた方たちのことを思いながら、あの日のことを、あの日からのことを、まだまだ考え続けなければいけないのだと思っています。
 

 

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