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21/01/23 戦前・戦後 個展をめぐるエフェメラ … 堀野正雄の宣言・工藤哲巳の檄

■大変申し訳ございません。ご好評をいただいております「古書目録福袋」全16冊セット組は払底いたしました。小店は控えの1セットを残すのみです。関西のご同業者の方もいらして、1店ごとに少店まで送っていただくというのも実際には難しいところがあります。
わざわざ書簡に切手を同封して送って下さり、発送を請われるケースがありますが、折角ご依頼いただいても、単に切手を送り返すということになってしまっております。
同人有志のなかには、ひょっとするとまだ数部残っているところがあるかも知れませんが、切手を送るその前に、是非、というよりも必ず、先ずは残部の有無をご確認下さいますようお願いいたします。
有難いご要望にお応えできず誠に申し訳ない次第ではございますが、何卒ご理解・ご容赦を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

今週の新着品より。『堀野正雄 第2回 個人写真展覧会 出品目録』と同じく第2回個人展の「パンフレット」の2点一組。1930(昭和5)年9月、銀座松屋の7階で開催された際の印刷物です。
「パンフレット」には「舞踊と機会美と女の顔」と副題が記載されており、「出品目録」にはその通り、「舞踊」「機械的構造物-優秀船に就いての研究」「女の顔-同一モデルによる研究」の3カテゴリー・全100点の作品名が並んでいます。
「出品目録」には1930年9月1日付の堀野の小文が添えられており、「舞台写真の専門家としての仕事から『新しきカメラへの途』へ精進すること」「機械的建造物を取り扱ふこと」こそが与えられた命題であり、「舞踊」と「女の顔」の作品群によって「私は過去の総決算をする」としています。
「機械的建造物」として展覧会に出品されたのは板垣鷹穂の著書『優秀船の芸術社会学的分析』にまとめられることになる浅間丸・秩父丸の写真23点。板垣の指導のもと、堀野が機械的建造物の撮影を始めたのが同じ年の4月。それから僅か5ヵ月の後、出品作品の四分の一を新たなテーマの作品で構成したことになります。
ここで問題。堀野の仕事をまとめた『幻のモダニスト 写真家 堀野正雄の世界』(2012年 東京都写真美術館編 国書刊行会)の年譜に記載されている「第二回 個人写真展覧会」の会期は6月2日から7日まで。いま手元にある目録・パンフレットと同じ構成・点数・会場です。年譜に基づけば板垣との試行開始から僅か2ヶ月後の展覧会ということになり、「将来への『不は束な研究』の一部分を発表することは、いささか性急の感はある」という目録掲載の堀野の言葉通りではあるものの、それにしても準備時間が短すぎるようにも思えます。開催は年譜に記載の6月だったのか、『目録』『パンフレット』に記された9月だったのか、エフェメラの上に謎がひとつ転がっていました。 

「パンフレット」の方は堀野と堀野の写真に寄せる関係者の寄稿で構成されていて、板垣はもちろん、「舞踊」の部で被写体となった石井獏、高田せい子等の名前が並びます。
目録の堀野の言葉は、次のように結ばれています。
「『新しきカメラへの途』へ! - 私は進行する。」
この年、堀野23歳。新しい人による高らかな宣言です。

■こちらも個展がらみのエフェメラ。実は、今回福袋用につくった目録に載せたかったものの、落とし所を見つけられず掲載を見送ったものです。入手は昨年のことですが、店頭に出すのは明日からが初めて。
壹番館画廊で1970年に開催された『三輪龍作の愛液展』図録。文庫本サイズの全24P。三輪龍作の作品は好みの分かれるところですが、何しろ巻頭5Pにわたり日英仏三か国語で工藤哲巳の文章が掲載されています。「我等の同志、龍作ゲリラよ! ブルジョワの寝室に侵入せよ!」といった調子で始まる工藤の文は推薦文や論考といった穏当なものではなくまさしく檄文。
1960年代半ば、活動の早い時期から主要な舞台を海外に置いていたためか、工藤の自筆文献数は非常に限られたもので、『あなたの肖像-工藤哲巳回顧展』(2013年)によれば約90点ほどで、しかも雑誌などへの寄稿がほとんど。『三輪龍作の愛液展』は数すくない独立した印刷物への寄稿例とみて差し支えなさそうです。
ブロックに組んだ文字組や色使い、写真、レイアウトなど、ただものならざる図録には、吉岡康弘(写真)、海上雅臣(編集)も関わっています。
三輪龍作は萩焼の窯元で後に12代休雪を襲名する名門の出。伝統的な焼物の世界にあって、奔放なオブジェを志向し、工藤哲巳や吉岡康弘といった前衛と交流するなど、1970年前後の美術界の動向を色濃く反映した図録です。

久しぶりに今週の斜め読みから。と思っていたのですが。そう遠くない知り合いのなかにQAnon信奉者がちらほらいるのに驚いて、さらに、いまもってバイデンの就任式は録画作成されたものだとか強弁しているのを見て愕然とするあまり他のことをすっかり忘れてしまいました……。来週こそはまともなネタが拾えますように。

 

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