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19/02/09 小店店主の懐に最強寒波をもたらす『飛行官能』!?

■世の中3連休と浮かれたくなるところに冷や水を浴びせるが如き天気予報。最強寒波到来で、都心でも明日の昼をピークに厳しい寒さと積雪の予報が出ております。
所用もあり、店には出る心づもりではありますが、開店や閉店の時間を変更する可能性もありますので、2月9日(土)ご来店をお考えの方がいらっしゃいましたら、Facebookの古書日月堂のページをご確認いただくか、同じページからメッセージでお問合せ下さい。
ご面倒をおかけいたしますが、何卒よろしくお願い申し上げます。
 
とうとう『飛行官能』が入荷しました。恩地孝四郎作、昭和9(1934)年・版画荘刊。函に多少の傷が認められますが、本体は表紙から本文全頁通じてほぼ無傷。本の背に難があるものが多い同書にあって、とくに、欠けもなければ傷もなく、小さなシミのひとつとしてない背の状態は感動的ですらあります。
1928年、初めて飛行機に乗った恩地が、その時の感動から着想を得たとされる『飛行官能』は、恩地の詩と木版画に北原鉄雄他による写真を組み合わせ、飛行機の離陸から着陸までを描きだした作品です。当時の写真表現のなかで、とくに注目されていたグラフ・モンタージュの手法がとられたものと云われます。
もともと恩地孝四郎という人は、海外での評価が高い作家ですが、この本が一時急騰した背景には、とくに海外で、写真集に位置づけられたこともその一因だったようです。
稀覯書と云ったところで複製品である限り、いくら どこにもない、市場にも出てこない、と思っていても、いずれどこかで必ず出てくるものです。 

この本も、かつては本当に目にする機会からしてごく稀で、出てくれば結構ムキになって入札するも買えたためしがなく、がしかしあきらめずに入札し続けているうちに、なんだ、そうは云ってもそれなりに出てくるものじゃないかと分かった途端に熱が冷めるという段階を経て、ほとんど憑き物も落ちきったところでの落札となりました。数か月前、落札できなかった時とほとんど同じ価格での入札で、5枚札のちょぅど真ん中での落札だったのはラッキーでした。
実は今週、1962年に来日した際のジョン・ケージ関係の紙モノや写真など6点一式というのも落札したのですが(こちらは次回ご紹介の予定)、頭の中の沸騰ぶりはこちらの方が格段に上。
ケージのような1点ものと、稀覯書と云っても複数存在するものとでは、気持ちの入りようがいまやここまで違ってきたのかと、これには少々自分でも驚きました。今年の「銀座 古書の市」で1点ものが悉く売れ残ったことを考えると、ますますこの先が思いやられるというものです。
尚、同書には、「頒布版で生じていた離陸から飛行への過程の矛盾など」を解消するため、恩地自身が一部ページを入れ替えた異本の存在が明らかになっていますが(『恩地孝四郎展』2016年 東京国立近代美術館)、当品は矛盾解消前の頒布版です。
 
■スパイラル綴じ、表紙のデザインもどこかこざっぱりした『図案資料 ポスター集』について、続きは後程改めて。珍しさ、という1点で比較すれば、こちらの方が『飛行官能』の上を行っているかも知れません。
2月9日 追記)  『図案資料 ポスター集』は昭和12(1937)年に逓信博物館が編集・発行したもの。「逓信事業が文化的使命の重要な地歩を愈昴めて」いるなか、利用促進を目的に作成した逓信省のポスターから5事業38点の図版を所収。国内の民間企業と海外の優秀ポスターとを併せ、全124点の実例を紹介しています。
ポスターには「絵画的形式・構成的形式の二形式」があるとし、とくに「構成的」作例には、国際観光局日本紹介英文ポスターや日本郵船の旅客勧誘ポスターなど、いまやミュージアム・ピースとなっている作例が多数含まれています。
逓信省のポスターでは、郵便貯金事業がデザイン化著しいのに対し、簡易保険では説明的だったりと、事業別にまとめられていることで、それぞれの戦略の違いが透けて見えてくるのも面白いところでしょうか。
 
さてさて。2月9日(土)午後5時をまわり雪は降ったり止んだりを繰り返しています。古いマンションのベランダ側に座っていると、隙間風の冷たさが時間とともに増してきたのを感じます。本日そろそろ店から撤退、来週またお目にかかります。
寒さと足元にはくれぐれもご用心下さい。

 

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