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18/09/15 モダニズムを学ぶ学校とモダニズムを志向した学校建築 そしてバウハウス

■瞬く間の一週間。先週の土曜日からこちら、なかなか面白いものの入荷が続いており、3回くらいに分けてのご紹介となりそうです。今回の更新はその第1回目。
先ずは「造形芸術雑誌」を標榜した構成社発行の雑誌『建築紀元』。偶然が重なり、発行された全5号のうち第1巻第2号と同第3号の2冊が入荷しました。ともに昭和4(1929)年の発行
第1年第2号は、この雑誌の中でも夙に知られる「バウハウス特集」で、初めからおしまいまで1冊丸ごと&徹頭徹尾バウハウスで編まれています。一度見たら忘れられない表紙のデザインは同誌の編輯委員でもある堀口捨巳。
堀口の他、板垣鷹穂、岸田日出刀、仲田定之助、坂倉準三、吉田謙吉など錚々たるモダニスト(!!!) が編輯委員に名を連ねた『建築紀元』は、日本のモダニズム=当時の新しい芸術や造形美を考える上で、欠くべからざる言説空間です。
話は「バウハウス特集」に戻ります。岸田による「バウハウス」という記事に始まる特集は、ドイツのタウト・ホフマン事務所で働くことになっていた牧野正巳のバウハウス訪問記「バウハウスを観る」、近代建築作家を訪ねてロシアから北欧を経てベルリンに入った今井兼次が実際に面会をとりつけて会うことのできた「グロピウス訪問記」など、日本人が実際に触れ得たバウハウスの記録を交えながら、建築工芸研究機関としての役割、シュレンマーやモホリ・ナジについての研究、バウハウスにまつわる理論、理念、そして教育機関としての教程、さらにはバウハウス叢書の解題や関係文献の一覧まで 流石! の充実ぶりです。
もう一冊、第1巻第3号はぐっと地味な内容ながら、「建築の出動」「エア ポート」といった記事が並びます。 

さて、当誌を主力の媒体のひとつに据えていた構成社は、1929(昭和 4 )年 9 月から1931(昭和 6 )年 6 月までの約 2 年でその活動を終えることになりました。この雑誌、うけていたらもう少しは続いていたのではないかと思います。あ! 出版当時の一般的な評価と、後世古書になってからの評価は必ずしも一致せず、というのはよくあるお話しなので。ええ。はい。ま、ええーっと、そうですねえ、そうお安くはない…

■2冊目は『横浜市復興小学校建築図集』。昭和6(1931)年に発行された写真図版中心の書籍です。
復興、と云うのはもちろん関東大震災からの復興の意味で、ご承知の通り震災で激甚災害に見舞われた横浜市が、特別議会で24学級規模・31校を鉄筋コンクリート製で再建することに決めたのだそう。
大正14(1925)年の三吉小学校を皮切りに、昭和5(1930)年の日枝小学校の竣工までの5年間で計画した31校全て完成を見たことから、「復興史の一片とせんために」発行が決まったという本がこれ。
おそらく ぼぉーっと生きてるので気付いてなかっただけなのかとは思いますが、復興建築図集は数あれど、小学校だけを取り上げたものは初見でした。もちろん31校全て学校ごとに異なる外観の写真を所収。教室や医務室、応接室、理科室、裁縫室などの校内施や運動場の写真なども。
復興建築に通底しているかに見えるモダニズムの精神は小学校建築にも生かされたのか、同潤会的な装飾を排した外観やレンガ敷風のスロープ、丸窓などはいかにも当時の「復興建築」の系譜に連なるものだと云えそうです。
所在地、坪数、建物、工事費詳細、運動場の児童あたりの坪数、平面図・配置図など資料部分も充実。とても行き届いた資料となっています。 

名取洋之助率いる日本工房からは、日本語による『NIPPON』が2種類発行されています。ひとつは対外広報誌として主に英語で発行されていた『NIPPON』の日本語(訳)版。もうひとつは あくまで「日本国内の文化機関誌として」発行した別ヴァージョン。で、画像3点目は別ヴァージョンの方の『NIPPON』で、昭和13(1938)年の第1巻第2号が入荷しました。
横に長い紙を綴じ込むことで広告スペースにあてる、縦1/3を残して2/3を切り落とすなど、『コマースジャパン』を彷彿させる実験的な部分も多く、誰の仕事かと思ってみると、河野鷹思。亀倉雄策のクレジットあり。なかでも表紙は河野鷹思が担当しています。
最もよく知られている対外広報誌『NIPPON』との一番の違いは記事部分の充実にあって、井伏鱒二、矢田津世子、三岸節子、神近市子、林謙一、佐藤惣之助、岩崎昶、飯島正などが執筆、カットではブブノワや西脇マジョリーといった名前も見られ、そのほとんどが当誌のための書下ろしと見られます。
文化機関誌を目指しながら、しかし内容的に見ると戦時色は強く、銃後婦人論、対外宣伝・宣伝政策に関する論考にテキストの多くのスペースを割いています。
“日本工房による『NIPPON』日本版”と云うと何だか冗談めいている気もしないではありませんが、現在までのところ確認できているのは僅かに2冊だというこの1冊、珍本稀本に違いなさそうです。

■今週はこの他、半革装の19世紀末~20世紀初めの洋書カーゴ約1/2台分イタリア他海外客船会社の戦前のパンフレット4点、タバコのパッケージを中心にチケット類などをきれいに貼り込んだ戦前の渡航者によるスクラップ帖などが来週木曜日に店に入ります。 

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