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18/06/09 バレエ・リュス! ロラン・バルトとデュラス!! ポール・ポワレ!!! パリ週間!?

■先週、6月2日の営業時間変更のお知らせついでにアップしたウィリアム・モリスのファブリック&壁紙の見本帖が思いがけず うけが良くて (良く「うれ」てるわけではないのであれですが)、「やはり有名なモノを買わないとダメなのである。」と痛感。ならば今週も新着品はその路線で、と選ぼうとしたものの実のところそうとは選びようがないのが小店なのでした。
1点目はこれまでも散々売るのに苦労した、がしかしそれでも欲しいという思いの方が遥かにまさるディアギレフのバレエ・リュス 公式プログラム『PROGRAMME OFFICIEL DES BALLETS RUSSES』。かの「牧神の午後」の初演を見た1912年5月~6月、パリ・シャトレ劇場での公演時のものです(Septième Saison des Ballets Russes / Théâtre du Châtelet / Mai-Juin 1912)
画像上右端、レオン・バクスト描くところの「『牧神』を踊るワツラフ・ニジンスキーのための衣装デザイン」が表紙を飾るこのプログラムは、1909年から1929年まで続いたディアギレフのバレエ・リュスの公式プログラムの中でも最も有名な - つまりは最もよく引用される - プログラムのひとつですが、今回入手叶ったものには、さらにその上に薄紙のカヴァーがかっています
このカヴァー、ヴェラム革のような質感と色味のわりに上質紙程度の厚さしかなく、背や袖の折の入る部分などから断裂しやすいこともあってかカヴァーの残っているものは少ないもよう。もちろん、小店も初見でした。カヴァーばご覧の通りブルーと金の2色刷りですが、金色の部分はかなりの圧をかけての印刷と見え、立体感のある面白い仕上がりになっています。 

作品としてこのシーズンで最も注目すべきはもちろん、初演を見た「牧神の午後」と云うことになりますが、このシーズンの全プログラムによれば「牧神」上演が組まれていたのは5月29日、31日、6月1日、3日の4日間。この4日は全て、前年に初演された「薔薇の精」「火の鳥」、このシーズンで初演にこぎ着けた「青い神」との4演目での構成で、当品に挟み込まれた当日パンフレットに記載されているのがまさしくこの4演目。従って、正真正銘 牧神初演日のもだった可能性もあるわけですが、残念ながらそれ以上絞り込むことはできませんでした。
古本屋稼業も23年半となりますが、それでもまだこんなふうに見たこともなかったものが目の前に現れ、しかもそれが時代を画したものだったりするのですから、思えば古本屋というのは贅沢な仕事だなと思います。
あ! 贅沢と云えばこのプログラム、ジャンヌ・パキャンなど当時の有名メゾンのイブニングドレス、帽子専門店や香水などモード系の広告写真 (美人モデル起用 !) や自動車など贅沢品の広告も多数所収。それぞれ金色の飾り罫をあしらって、これまた何とも贅沢なことで。

古本屋は贅沢な仕事とだなんて云ってますが、一時的とはいえ、こんなものを持っていていいのか!? と少々恐縮ぎみの商品が今週の2点目。ロラン・バルトのハガキとマルグリット・デュラスの書簡。それぞれ自筆。画像検索でも確認しましたが、間違いないものと見ています。
中央公論社の文芸誌『海』創刊当時の編集長 近藤信行旧蔵の書類・書簡のうち、欧文の書類・書簡類だけをまとめて出品していたのを落札。その中から出てきたのがこれ。入札する段階ではドナルド・キーンの自筆手紙、ミシェル・ビュトールのタイプ打ち書簡などを確認したものの時間なく、ええいままよと買ったダンボール1箱からまさかこのようなものが出てくるとは…。

このダンボール箱についてはまだまだ何が出てくるか分からず、デュラス、バルトの価格等含め、商品として店頭に出すまでにはいま少しお時間をいただくことになります。悪しからずご理解の程お願いいします。
サロートか? シモンも? ベケットが? マンディアルグも? ロブ=グリエで? ル・クレジオを? さて誰がどんにふうに出てきてくれるものやら。なんて云うのを昔の人は「とらぬ狸の皮算用」と呼んでいたようで。

■この本についてはポール・ポワレの署名で買いました。『107 RECENTTES OU CURIOSITECULINAIRES』。副題に「RECUEILLIES PAR PAUL POIRET」とあり、20世紀初頭、女性をコルセットから解放したファッション界の革命児 ポール・ポワレがレストラン「マキシム」のシェフなどから集めた107の料理のレシピを書籍化したもの。背革装丁バンド入・タイトル金箔押、天金、見返しマーブル紙使用 …… 等々、堂々たる製本。他に限定100部本があるようですが、当書は普及版。発行は1928年。ポアレのファッションはすでにはっきりと下り坂にあり、翌1929年には自身のメゾンも完全閉鎖に追い込まれるので、この本はぎりぎりのところでの出版だったようです。
見返しに「Raymond Oliver」と書かれた小革片が貼られているので気になって調べてみると、どうやら第二次世界大戦終結後数年でパリのレストランを三ツ星に引っ張り上げた有名シェフらしい。ポール・ポワレのファッションの凋落とは別に、ここに集められたレシピには依然として意味が認められていたということになりましょうか。少々皮肉めいたお話しです。
ポール・ポワレからフランスの三ツ星レストランのシェフへ。パリの有名シェフから今度は誰の手に渡せるのか、ここはひとつ古本屋の腕の振るいどころのようで。それにしても美食と最も縁遠い古本屋に何故 …… ?

追記 : 『107 RECENTTES OU CURIOSITECULINAIRES』の旧蔵者 レイモン・オリビエについて情報をいただきました。
レイモン・オリビエはパリの有名老舗レストランで、パレ・ロワイヤに現存する「グラン・ヴェフール」のオーナーシェフだった人。戦後、東京会館と契約し現代フランス料理を伝え、また、日本におけるフランス料理の基礎を築きその発展に尽力した“日本のフランス料理の父”、ホテル・オークラ初代総料理長小野正吉と深いつながりをもつなど、日本のフランス料理に大きな影響を与えた人物であり、日本の料理史を語る上で欠くべからざる最重要人物のひとりだとのこと。この本が日本にあることの意味まで兼ね備えているものであることが分かりました。ご教示に多謝 !

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