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18/03/24 浦野理一 私家版10部本ほか

■桜が三分咲きとなったかと思えば雪が降り、雪が止んだかと思えば前日より10度も気温が上昇、来週には半袖で過ごせる日もあるとの予報。誠にもって春初めの空は気まぐれです。
3月も残すところあと一週間ほど。花より眠気の小店店主ではありますが、懐具合を考えれば ウトウトどころか精一杯ジタバタしていなければいけない月末、ゲツマツであります。と、云うわけで新着品のご案内。在庫目録には手を入れず、連動する「日本の古本屋」への出品も控えているただいま現在、ここだけが命綱。で、文字通り綱渡りのはじまりであります。

この人について、どうもまだwikipediaが書かれていないというのに驚いた染織研究家にして染織作家であった浦野理一。「秋日和」など小津安二郎の映画で衣裳を担当、雑誌『ミセス』で連載をもつなど、その昔、半世紀ほど前のマダム憧れのキモノ作家と云えば必ず名前が挙がっていた人です。或いはヤフオクなどで名前を知った人もいらっしゃるかも。
で、この浦野さんですが、著作が結構多く、ご興味をお持ちのむきには検索サイト「日本の古本屋」で著者名検索していただければと思いますが、その浦野さんがらみの「(一応)本」としては、おそらく最も珍しく、かつまた最も楽しいのではないかと思われるのが『趣味の手織裂地抄』です。
昭和30年=1955年(小津「秋日和」公開の5年前)に私家版としてたった10部発行されたもので、奥付には、鎌倉の「浦野繊維染織研究所編輯」「発行所 浦野繊維工業株式会社」とあり、「発行人」として浦野理一の名前がクレジットされています。

当該品は浦野作と思われる縞の布張帙を外装とし、和紙1枚に1点~数点の手織裂の現物を貼り込んだリーフ(未綴)50葉と扉1葉の計51葉を収めたもの。説明が一切ないので、ここからは推測になりますが、手織裂に浦野理一が得意としたと云う「経節紬(節のある手紬の太糸を経糸に使用した織物)」が多数収められていること、何より奥付から見ても、浦野理一並びに浦野率いる工房の作品集と見られます。
帙の厚みとリーフ51葉を重ねた時の高さはぴったり合っている感はあるものの、問題がもう一つ、果たして50枚+扉の51葉で揃いと云えるかどうか、です。何しろ序文も目次もノンブルも何もない。どこかに残っているとして限定部数はたったの10部。一体どこにあるんだ? ………
……… やや。あるではありませんか。やっとひとつ。それらしいのが。海を渡ってはるばるオーストラリア国立図書館に。欧文表記で「National Library of Australia」(データのアドレスはこの項末尾のアドレス参照)。こちらは同名タイトルで私家版10部の内第5号。しめしめ、これは同じものに違いあるまい。しめしめ。
と、ところがです。
同名タイトルでありながらニチゲツドウのは25×21.7cm → オーストラリアのは34x25cm。おやおや? もしかして保護箱のサイズですか??
また、ニチゲツドウのは51枚 → オーストラリアのは42sheets。あれあれ??
ニチゲツドウのは浦野研究所か浦野工業の作品集。たぶん。 → オーストラリアのは「文化文政期に織られた紬のサンプル(18cmx15cm)41種が1枚ずつ和紙(33cmx23cm)に貼られ、帙に収められています」ですと!
……… と云うわけで。一体何が完本であるのかどころかは同じ本であるのかどうかさえ覚束なくなってきました。触らぬ神に祟りなし。ちょっと違う気もしますが深入りするのはええ。はい。ここまでといたしまして。現状での評価で販売いたしますのでノークレーム・ノーリターンでお願いいたします。なんてね。
いずれにしても珍しい。しゃれてる。良き仕事である。これだけは保証付きであります。
*参考 https://catalogue.nla.gov.au/Record/6486730

明治初期のものと思われる手芸関係の下絵・試作品等の一括から、『服紗縫入画』をひと綴りひっぱり出しました。
服紗=袱紗、帛紗とも表記される儀礼用・方形の絹布で、絹・縮緬 (ちりめん) などで一重または二重に作り、無地やめでたい柄・刺繍 (ししゅう) を施すのだそうで、その刺繍、つまり装飾部分の下絵にあたるものがこれ。表題は服紗、刺繍と限定しているかのようですが、一緒に出てきた半完成品(画像中右下の表紙の上に置いた色付き布製品)や紙製の試作品等と併せて見ると、服紗に限らず小物入れだとか筥迫だとかにも使っていたようですし、技法としても刺繍に限らず押絵や木目込み細工などにも応用されていたのではないかと思います。
持ち主は「河合節子」という方。一体どういった立場で仕事をしていたのか不明ですが、少なくともこのひと綴りはかなり出来が良かったものと見え、借り出し希望者も多かったのか、水茎の跡も鮮やかに「御覧の後速く御返しの程御願候」とあります。
同じ「河合節子」さんによる『縫入形』(明治20年11月綴り)や紙製試作品などとの一括販売。
こちらもノークレ ……… 我ながらくどい性格でして <(_ _)>。

今週の落札品の配達は来週木曜日の予定。1930~1960年代アメリカの映画専門誌が高さにして約60cm分、“けったい”なと評したくなる図版豊富な『国際画報』『日本木版東西画報』などグラフ誌が約20冊、『茶家酔古集』5冊揃 などがこの日に店に届きます。
画像3点目は『日本木版東西画報』から1冊。大正15(1926)年の表紙は何と! バルビエが描いたニジンスキーの作品集から「牧神の午後」の完全コピー。『鹿島茂コレクション2 バルビエ×ラブルール』掲載のバルビエのイラストレーションと比較すると飾り罫ばかりかバルビエの署名まで --- バルビエの作品がポショワールなのに対して『東西画報』の方は木版であるという1点を除けば --- 完全完璧な引き写しであるというご愛敬で、今週の打ち止めとさせていただきます。寝るぞぉ~




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