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18/01/27 安部公房の「紙片(かみくず)のこと」のこと と マティスとカルリュの紙モノ(?)のこと

■先週金曜日は更新を予告なしにさぼってしまい失礼しました。風邪をひいたわけでもインフルエンザで倒れていたわけでもなく、大雪の日に転倒することもなく、お陰様で「〇△は風邪をひかない。」を地でいっております。ご心配下さった方には心よりお詫び申し上げる次第です。
そうこうするうちにもう1月も最終週。もたもたしてるとまたあっという間に12月がやって来てしまいそうです。さあ急げ !

下ごしらえと下調べを要するブツを後回しにし、かつまた、今週落札したもののなかでとりあえず珍しいものをひとつと云ったらこちらになるかと思います。戦後続々と立ち上がった芸術系の運動体のなかで、若き表現者・批評家の集まりとして注目された「世紀の会」の研究資料として7冊の発行が確認されている小冊子『世紀群』の内の1冊、『世紀群2. 紙片(かみくず)』です。
「世紀の会」創設時からのメンバー・鈴木秀太郎による小説で、やはり創設時からのメンバーである大野齊治による装丁。本文ページ内に貼り込まれている2点の多色刷木版画もまた、どうやら大野によるもののようです。

安部公房の「魔法のチョーク」や「事業」、関根弘の第一詩集「沙漠の木」などが並ぶ『世紀群』のなかで、『紙片』は地味な存在ではありますが、わら半紙に孔版刷、背もないような体裁の『世紀群』としては珍しいことに、あまりにコンディションが良いのに驚いて手にしました。してみると、中に何やら小さなペラが挟まっています。『紙片』についてはこれまでにも数度、市場で目にしたことがあるように思うのですが、挟み込みの存在に気付いたのはこれが初めてです。
そもそも『世紀群』がB6サイズほどとごく小さなサイズなのに、この挟み込みはさらにその半分という小ささ。刷色が薄くて読みにくいその表紙をよく見れば、「『紙片のこと』 安部公房」とありました。
『紙片のこと』はB5両面孔版刷の上、四つ折りにしたもので、痛んでいるのが当たり前のこの体裁とこの紙質としては、望むべくもない完璧な状態。『世紀群』にはどれも奥付がないのに対し、『紙片のこと』の文末には「(1950・10・28)」という記載があるのもミソ。『紙片』の発行も同時期と見られます。表紙と裏表紙に刷られた奇妙なカットもいい味を出しておりまして、表紙のカット下方に汚れのようなものが見えるのは、汚れではなく茶色でわざわざ彩色している部分。芸がこまかい。
「世紀の会」とその関連事項については、早稲田大学・鳥羽耕史教授の研究や山口勝弘のアーカイブ、桂川寛のインタビューなどがネット上で公開されており、かなり多くのことが分かります。
小店が初めて『世紀群』を扱ったのはまだ大岡山に店があった当時の五反田展の目録でのこと。瀬木慎一の翻訳とあともう一冊、いずれも芸術論だったように思うのですが、わら半紙に孔版刷、奥付もないこの冊子については調べるすべもなく、「夜の会」も「世紀の会」も知らないまま、それでも1冊4000~5000円と勘だけを頼りに精いっぱいの値段を付けたことを覚えています。注文を下さったのは当時から美術古書店としては随一と云われた書店のご店主。後にお葉書を下さって、自店の目録に載せたら“その筋”のお客様に売れたこと、それだけ「商品として確かなものでした」と書かれていたことを思い出しました。自分の見る目に自信を持ちなさいという励ましのメッセージだったのだと思います。それもはや18年ほど前のことになりましょうか。20年も経たないうちにかたや店主はすれっからしとなり果て、かたや情報のありかや調べ方や売り方や買い方やあらゆる場面で、古書をとりまく世界もまた大きく変わったものであります。

■傷み本とは云えマティスだし。王道美術書VERVEだし。しかもムルロー工房のリトグラフだし。買えっこないと思っていたのが、何故か落ちてきた『VERVE Nos 35-36 DERNIERES OEUVRES DE MATISSE 1950-1954』。1958年発行。
自宅に持ち帰ってみてよく見れば、綴じ糸を切った部分あり、さらに糸を抜いたところまであり、部分的に簡単に手を入れたくらいでは本としての体裁に戻すのが困難ではないかと…。
もう1冊、『VERVE No.13 De la Couleur H.M.』とマティスは2冊一緒に入荷。こちらはこちらでカヴァーに難があり。
ただいま現在までのところ、悩みの種がまた増えたような気がしております。

今週はこの他、3点目の画像にある額装済みのポスター2点 (うち1点はご存知ジャン・カルリュ!フランスのビールメーカーSPATENBRAU社の!)、お馴染みの『考現学』と『考現学採集』大正期の会計関係の台帳明治期の建築関係の和本などが来週木曜日には店に入ります。
神坂雪佳の木版刷プレート(『海路』より)と、こちもまた木版刷の大正末~昭和初期・帝劇 来日アーティストによる来日公演プログラムなどはできれば来週の更新でご紹介するべく鋭意調査中。しばしお待ちを。








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