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17/11/25 1929年 パリのアール・デコ / 1939年 国際報道工芸のあまり知られていない本の仕事

 ■気がつけば11月も最後の更新、来週はもう12月です。この1年の過ぎ行く速さと云ったら …… (絶句)。
明年1月の松屋さんでの「銀座 古書の市」を1回休まざるを得なくなった余波はまだ続いており、店内は一向に片付かないしメールのご返信は滞るしで、醜態をさらし続けておりますが、どうかご寛恕の上、年内引き続きよろしくお願いいたします。
かつてなく次から次へとモンダイをつき付けられたこの11か月でしたが、「残りひと月はせめて安穏に、できるだけ機嫌よく過ごしたい」 と云うのが我が店主のささやかな願いであるとのことですが。さあてねえ。どうなりますことやら。

海外のプレートもの、しかもアール・デコ関係とくればすぐに売れてくれそうなものなのに、これまですんなり売れた記憶がないのがインテリア関係のそれであります。これは落札したらしたで苦戦するだろうなあと思いながら、がしかし、小店の性格上 (どんな性格だ?) 買わざるを得まいと手を出したら案の定落札できちゃったのが今週の1点目『INTERIEURS AU SALON DES ARTISTES DECORATEURS 1929』
大判、上製のポートフォリオ入りのプレート集で、序文・目次と全48葉の揃い。48葉の内、42葉が写真で6葉は手彩色の施されたカラープレートになっています。
で。これまで随分多くのこの手の刊行物を扱ってきたけれど、もしかしたら自分はずっと見落としていたのではないか!? と慌てることになったのですが、当書のカラープレートは実は写真プレートと対になっているのを発見。モノクロ写真だけでは分からないカラーコーディネートを手彩色のプレートで伝え、手彩色のプレートでは伝わってこない家具調度の質感・奥行きなどを写真プレートで確認できるという、相互補完的な優れもの。こういうの、本当にこれまで他になかったんだろーか …… とただいま現在自分自身に対する疑念が消せずにいるわけであります。
それはさておき。画像にとった2組は、「まさかピンクの花柄とは !」 というのと「ここで黄色ですか!? 」というのと、意外性の高かったものから選んでいます。
いまは東京都庭園美術館となっている本邦アール・デコ建築の秀作・朝香宮邸のインテリアとも関係のあるフランシス・ジョルダンやピエール・シャローなど、目次に並ぶインテリア・デザイナーはアール・デコ時代の代表選手たち。
一世を風靡した様式であるだけに、彼のパリの地でも完全なかたちで残されたものは少ないとされるアール・デコ。往時を詳しく知るには絶好の1冊です。

 ■巻頭に「昭和14年9月9日 朝香宮鳩彦王殿下台臨」の写真が飾られていることから、強引に朝香宮つながりと云うことで今週の2点目。『日本人造繊維株式会社 五周年記念』と題された所謂“配り本”。ですが。この判型でこの写真とレイアウト。タダモノではありませんでした。
奥付を見ると、大きな文字で「製作 国際報道工芸株式会社」のクレジットあり。思えばこの判型からして、「日本工房=国際報道工芸」的です。
「日本人造繊維」は昭和9年、木村徳兵衛が創設。当書はこの会社の創立5周年を記念して昭和14 (1939)年に発行したもので、グラビア約30Pとテキストおよび24P他からなる布装上製本です。
奥付に戻って仔細に見ていくと、先ず、「プロデユスイングマネージメント」として小林善雄の名前が出てきます。
小林は詩人で「新領土」同人、後に東方社の職員になったことが「空席通信」というサイト(必見!)に書かれており、戦時中を対外広報誌の周辺で過ごしたことがうかがえます。
(空席通信  http://www.sakuramo.to/kuuseki/aisatu.html )
撮影」には相澤敬一。当書発行の前年に、土門拳、藤本四八、濱谷浩、林忠彦、光墨弘等とともに、「青年報道写真研究会」の創立メンバーとなっています。「青年報道写真研究会」についてwikiには“新進の報道写真系統の写真家が集まることにより、当時すでに地位を確立して有力な同系統の写真家であった木村伊兵衛、堀野正雄、名取洋之助、渡辺義雄らに対抗するという意味合いがあった”とありますが、両者は早くも1941年には「日本報道写真協会」に集約され、国策に取り込まれていくことになりました。
構成・装丁」は前年に日本工房に入社、当書製作当時まだ24歳だったはずの亀倉雄策
編集後記によれば、従業員がいかに生活を楽しんでいるか、設備と製造工程を正確に示す、単によく撮れた写真を集める、この3点を総合することを基本方針としたと云います。
その編集後記は「国際報道工芸株式会社の諸氏の数週間に亘る御努力を得たことを茲に深く感謝する次第です。」と結ばれています。若手スタッフの布陣による時間と手間とをかけた仕事。隅々まで端正な仕上がりを見せるこの本の背景には、そうした要因があったのかも知れません。
日本工房=国際報道工芸の未だよく知られていない仕事の一端であることには間違いなさそうです。

 

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