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17/03/18 再びの。一週遅れて詳細追加! 木版16度摺りの「乱菊 順序摺り」32枚/ベトナム戦争におけるプロパガンダの一断面

 ■大切なお知らせがひとつ。来週土曜日=3月18日は所用のため、開店時間が15時となります。
火曜・木曜はいつも通り12時より20時で営業。3月18日(土)にご来店の際にはお忘れなく、よろしくお願いいたします。

営業日程は上記の通りですが、3月18日(土)にご来店の際には、念のため、お出掛け前にお電話で在席をご確認いただければ万全です。お手数を おかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。

■さて。要は事実上 - 事実上なんて相当大げさですが - 1回お休みとなった新着品のご案内、今日こそは更新します。
1点目は「乱菊」と題された木版画32枚。江戸中期の浮世絵師・勝川春草の作品を、浮世絵の「アダチ版画」が復刻し、いまも販売されているもので、同社の サイトには「北斎の師・勝川春章が特注で描いたと考えられる菊の花。全体を淡い色調でまとめ、白い菊は空摺の技法で花びらの柔らか な質感を表現するなど、手をかけた作品」とあります。確かにこの解説通り、瀟洒でかつとても凝った作品です。
但し、小店に入荷したのはアダチ木版でいまは扱いのない「順序摺り」と呼ばれるもので、完成品1点ではなく、完成品を構成する全版木を使用して版木1枚毎に摺り出した16版=16枚と、16版を1版ずつ実際に摺り重ね、1色ずつ完成品に近づいていく16段階 (最後の1点が完成品)の摺り出し16枚、合計32点からなるものです。
つまり、この1枚を完成させるには、図版を彫り込んだ版木16枚を要すると云うこと。市場でざっと目を通した段階では、完成までに必要な版数を 6~8版くらいと見ていたので、16版あるのには少し驚きました。
段階順に見ていくと、同じ色を二度重ねて濃淡を表現したり、「空摺」を加えることで陰影をもたせたり、16版を要するのも必然であることがよく分かります。
1枚の木版画に込められた手仕事の量と技と。かくも細かに積み上げられているとは。改めてその凄さに脱帽の「乱菊 順序擦り32枚」です。

 ■さてさて。少々手こずっていたのがこちら。米国赤十字の広報用写真と見られるファイルで、枚数を数えるのが面倒な量のベタ焼きが2冊分と、ベタ焼きから選抜してA4大ほどの紙焼きにした分を綴じた1冊、合わせてファイル3冊分の写真です。ベトナム戦争における「最大の転機」とも云われるテト攻勢のあった1968年の前後にあたる、1967年から1969年頃、ほとんどが日本にあった米軍キャンプ内の病院や付属施設で写されたもので、ベタ焼きの裏には撮影した年と月、そして撮影場所が明記されています。
戦地ベトナムでは米軍の空爆など大規模な戦闘行為が繰り広げられていた当時の写真ですが、ファイル3冊に残されているのはどこを見ても戦闘を想起させるような場面はただの1点もなく、どこまでも明るく、どこをとっても清潔で、むしろ楽しそうにさえ見える病院を中心とした傷病兵の日々。いかにもアメリカ風の明るく楽しいトーンは、これに先立つドイツ第三帝国や大日本帝国の戦時広報に一貫した一種の悲壮さとは異なるものの、不都合なところを徹底的に排除し、肯定できそうな部分を目いっぱい拡大して見せるプロパガンダの性質に変わるところはありません。
ボールペンで書き付けられている撮影地は「ZAMA」(座間在日米国陸軍病院)、「Tachi」(アメリカ空軍立川病院)、「OJI」(王子野戦病院)、 「YOKOTA」(横田野戦病院)、「Camp Dreke」(米陸軍第249総合病院 朝霞)、「KISHINE」(在日米陸軍野戦病院 横浜・岸根)に「YOKOSUKA」「OKINAWA」など、グァム、クラーク空軍基地(フィリピン)、台湾を僅かに含むものの、ベトナム戦争時、日本が 後方基地としていかに重要な役割を果たしていたのか、実は小店店主もこのファイルを見てほとんど初めてと云っていい程、痛感しました。
あらゆる戦争に与しない国。第二次世界大戦の敗戦により得られたはずの世界史上稀な理念は、わずか20年ほどで完全な骨抜きにされていたわけです。

■米国赤十字のプロパガンダを見ていて、どうしても頭に浮かんでくるのは沖縄の基地問題です。それがいかに複雑な問題であり、単純な二項対立に還元して語ることの不可能性について、今週、その実態と考察に触れて自省する一文を目にしました。時系列で遡れば、ベトナム戦争もまた、少なからぬ影を落としているはずです。
→ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51162?page=5
それにしても。現政権最大の危機もまた金がらみとは。お金にばかり汲々とする人間が増えたところで古本屋に商機なし。やれやれ。

 

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