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16/03/26 染と織のコレクション、再び。

 ■この調子で市場に出続けるのだとすると、一体どこまで付き合おうかと躊躇するほど、ある同じ筋の品物が毎週毎週入札の場に姿を現すことがあります。ここ最近では一週間の間に4口計5冊にプラス、バラ1点を落札した古布・染織関係の品物がそれにあたります。
民芸ブームもいよいよ終焉か?とか、ひょっとするとひとりでババ引いてるんじゃないか?とか、つい弱気になったりもするのですが、今回落札したような品物はいずれも世界に1点きり。世界に誰かひとり、買いたいと思う人が居てくれて、いつか小店にたどりついてくれさえすれば何とかなるものです。 ネット上で1円刻みの値下げ競争にさらされるような商材からの撤退を考えると、こうしたものが出続けてくれる限り付き合うのが筋と云うもの。そう、“皿まで食らう覚悟”の落札品から、今週は先ず3口=3冊とバラ1点のご紹介です。

1点目の画像はこの内のバラ1点、日本の・藍染めの・織物の・そのまた端切れ。市場では至って雑でぞんざいな扱いを受けているかに見えたのを落札し、これはちょっとしまったかなと思いながら抱えて帰宅。びしっとアイロンかけてきれいにたたんで揃えて重ねると、いやはや市場で見ていたのとは全然別物、 我ながらほれぼれするような美しい姿になりました。ほっ。
要は野良着やドテラや寝具など、日本人の日常生活のなかに根をおろしていた布たちであり、布によっては継をあてた箇所あり、接いで使われた生地があるかと思えば、ほどいた痕を残すものがあって……といった具合。ひとつひとつの布に人と暮らしをともにしてきたさまざまな痕跡が刻まれています。
大きなものなら60cm程、少なくとも明治くらいの時代はありそうな古布の端切れ、販売は布きれごとにバラ売りとなります。

 ■木版刷りの和本としては実に目にする機会の多い明治時代の刊本『故実叢書』の内、『服飾図解』2冊と一緒に市場に出品されていたのが図版2点目。和本仕立てのスクラップ帖とでも云うべきものですが、痕跡はあれども題箋がなく、仮に『古布収集帖』と呼ぶことにします。
A4をひとまわり大きくしたくらいの和本 - 仏教関係の手写本らしく、題箋がないのは写本当時のタイトルを剥がし取ったためと思われます- の写したページの側を糊で貼り付けることで、布を貼り付けてももつように、本文紙に張をもたせた22P。そのことごとくが画像にある通り、比較的おおぶりな古裂を中心として、ほんど余白なく古布を貼り込んでいるところが最大の特徴です。
集められた古布は約70種。時代を特定する手がかりが乏しく、はっきりとしたことは云えませんが布自体は明治期のものが中心で、収集帖としての成立は明治末期から遅くとも大正半ば頃までのものではないかと思われます。
縞帖と異なり、織だけでなく染めの布、縞だけでなく柄ものまで集めているところや、例えば7mm四方の藍染の布を貼って余白部分を塞いでいるところなどから見るに、染めや織の仕事に従事していた人の手控えと云うより、意匠や色彩に関係する仕事に携わっていた人によって作られたもの、あるいは蒐集そのものを楽しんでいた人でしょうか、そうした人の手と目を通してつくられたものではないかと見ています。
この1冊に関しては、つくった人のセンスが肝。買うか買わないか、評価するかしないかの分かれ目は、たぶん、そのあたりにありそうです。

 画像には入れていませんが、臙脂色の布を貼ってこのために誂えられた夫婦箱に大切に収められていたのが本日の画像3点目の2冊。こちらは主にステンシルの手法によって忠実に図案=意匠と色彩とをかたどりした、云ってみればテキスタイル・デザイン集(図案は全て別の紙に写したものを切り抜いて糊貼り)。明治初期頃までには成立していたものと見られます。
画像向かって左が『更紗小紋帳』。巻末に「富田八丁目 こんや 政吉」との筆文字も見られます。更紗図案139点(1点欠有)ほか「是方べに更紗染」11図、小紋中形20図等、合計202図を所収。過半を占める更紗の図案はいず れも12×15cmとサイズが比較的大きいこともあって、色別の型の数や重なり具合など細部まで読み取れます。更紗では常のことながら、欧州からアジアま で共通するようなデザインが多く見られます。
もう1冊、『唐更紗手本』は全170図内、更紗の図案は94図で、先の1冊に比べると、より細かく、かつまたさらに世界的に共通するような柄が多いのが特徴。
たかが布きれの図案ひとつ。されどそこには、途方もない東西交流の歴史が宿っているのだと思います。
今週ご紹介できなかった2冊は来週ご紹介の予定。しばしお待ち下さい。
が。それにしても、どうしてこう立て続けに出てきてるんだろ?…ふ、ふ、ふあんだ。

■今週はこの他、値段をつけ終えた海外旅行のパンフレット類や地図など(画像左上)を明日より店頭に出す他、1950年代のイタリアの芸能雑誌『芸術閑考』他いくばくかの板垣鷹穂著書戦前の夏休みの宿題帳・明治の幼稚園の工作ノート等ひとしばり などが明日には店に入ります。

今週のななめ読みふたつ。卒業のシーズンにあたって。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48225
http://www.huffingtonpost.jp/joseph-e-stiglitz/young-voters-us-europe_b_9513468.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001
良識の内に踏みとどまっていた報道番組が次々に終わっていく この春のなんとやるせないことよ。

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